7月28日に発生した「令和8年熊本地震」。最大震度6弱〜6強の激しい揺れに見舞われた熊本県八代市では、住宅や施設、交通インフラなどに大きな被害が生じました。
発災から約3ヶ月が経過した現在も、400以上のご家庭が市内の避難所で避難生活を続けています(※)。
※八代市ホームページ 2026年10月14日 避難所開設状況一覧より

フローレンスは10月、八代市内のひとり親家庭を対象に、食品や日用品をお届けする「八代市おやこエール便」を実施しました。お届けしたご家庭は、八代市ひとり親家庭福祉協議会を通じて応募があった全149世帯。
この記事では、協議会の方から伺った被災地の現状や、取り組みの様子、物資を受け取ったご家庭からの声をお伝えします。なお、本企画の実施にあたっては、一般社団法人こども宅食応援団とも連携しています。
おやこエール便とは
フローレンスが取り組む「おやこエール便」は、夏休みや年末年始など、ひとり親家庭への負担が集中しやすい時期や節目に行う、継続的な取り組みです。単に物品を届ける生活困窮支援にとどまらず、社会からの「エール」を形にして届けることを目的としています。一人で家計と育児を担う親御さんの孤独感や不安を和らげ、社会とのつながりを感じてもらうことを目指しています。今回の熊本県八代市での取り組みも、この「おやこエール便」の一環として実施いたしました。
現地の声から見えてきた、被災地のひとり親家庭が直面する3つの現状
発災直後の緊急期を過ぎると、ニュースなどで報道される機会は徐々に減っていきます。しかし、現地で暮らす親子の生活再建は今も続いています。
今回の支援にあたり、現地の八代市ひとり親家庭福祉協議会の会長である早田さんに、発災から現在までの生活についてお話を伺いました。
①インフラ復旧の陰で続く「水が出ない」暮らし

八代市ひとり親家庭福祉協議会会長 早田さん
交通面では、9月中旬に新幹線が動き出し、10月10日には在来線も再開しました。それまでは高校生のお子さんの通学のため、親御さんが早朝5時・6時から車で30分以上かけて送迎する日々が続いていました。

早田さん
特に生活の根幹である「水」の問題が今も深刻です。八代市では地下水や井戸水を使う地域が多く、復旧も進んでいますが、家庭によっては今も水が使えない状態が続いています。住宅自体に大きな損壊がなくても「水が出ないため自宅で暮らせない」と避難所生活をされているご家庭もいます。避難所以外で仮住まいを探そうにも物件が不足しており、厳しい状況が続いています。

②就労環境の悪化と収入の減少

早田さん
一人で家計を支えているひとり親家庭にとって、地震による仕事への影響は死活問題です。大型ショッピングセンターが被災するなど、勤務先の店舗が休業や縮小へと追い込まれた方も多いです。完全にお仕事が無くなった方、時短勤務になり収入が減った方、遠い店舗への異動を求められた方もおられます。
③学校環境の変化と、こどもの心のケア

早田さん
過去の豪雨災害と今回の地震が重なり、別の小学校へ統合・間借りとなった地域もあります。給食センターが開かない期間は、レトルト給食での対応が続きました。また、保育園や幼稚園の休園が続いた時期は、仕事を休まざるを得ない親御さんも多くいらっしゃいました。また中には、地震の恐怖から学校に通えなくなってしまったお子さんもいます。付き添いが必要となり親御さんが仕事に行けず、生活困窮へつながってしまうという悪循環も起きています。
早田さんのお話からは、住まいや仕事、お子さんのケアにいたるまで、被災による影響が親御さんに重くのしかかっている現状が見えてきます。特に仕事に大きな影響があった方は、今後の生活に大きな不安を抱いていることと思います。
こうした負担を一人で抱え込みがちなひとり親家庭だからこそ、困りごとに寄り添い、社会全体で支えていく視点が求められています。
「今、フローレンスに何ができるか?」有志スタッフが集まり議論
「現地の親子のために少しでもできることはないだろうか」
発災後、そんな問いかけからすぐに団体内で議論が始まり、八代市への物資の配送が正式に決定。急遽発足した支援プロジェクトには、部署の垣根を超えて「熊本のために」と想いを持った有志スタッフも集まり、緊急支援に向けた準備がスタートしました。物資とともに「ひとりじゃないよ」というエールを届けるべく、現地の親子の状況を想像しながら、一つ一つのプロセスを丁寧に重ねていきました。
被災地の親子の視点に立ち、真剣に選んだお届け品
「どんな品物があれば、少しでも気持ちが楽になるだろうか」
スタッフでアイデアを出し合い、被災地で暮らす親子の視点に立って丁寧にお届け品を選定しました。今回届けた品々には、それぞれの生活環境に寄り添う意図が込められています。

- 日用品(ラップ、ウェットティッシュなど)
断水が続く地域や避難生活でも重宝する実用的な品を選びました。
- 食品(レシピ付きの政府備蓄米、ツナ缶、牛丼、防災備蓄食のレトルトカレー)
毎日の主食となるお米や使いやすいおかずを中心に取り揃えました。防災備蓄食のレトルトカレーはスパイスファクトリーグループ、Ginger Lab株式会社からご寄付いただいたものです。温めずお皿なしでも食べられる仕様のため災害時の非常食としても役立ちます。
- お菓子・嗜好品(グミ、スナック菓子、スティックドリンク)
不安や我慢が続くこどもたちが箱を開けた瞬間に笑顔になれるよう、また親御さんが一息つけるよう詰め合わせました。
こうした物資だけでご家庭の困りごとをすべて解消できるわけではありませんが、今まさに直面している生活上の負担をほんの少しでも軽くすること、そして「応援している人がいる」という温もりを感じていただくことを目指し、一つ一つの梱包にも心を込めて作業を行いました。

「届いたのは人の優しさ」―受け取ったご家庭・こどもたちの声
10月中旬、応募のあった全149世帯のご家庭へ無事にお届けを完了いたしました。物資を受け取ったご家庭からは、たくさんの温かいメッセージや感謝の言葉が届いています。
熊本地震の発災から約2ヶ月。部屋の片付けがもう少しというところまで来たが、家具や家電の購入などで金銭的にとても痛かった。こどもの人数分のお菓子も入っていて助かった。
一つ一つ丁寧に梱包されていて優しさが伝わってくるエール便だったので、中身にも満足ですが、それ以上に人の優しさに満足です。
お米、ラップを今必要としていました。他にも手軽に食べれるレトルト、一息つけるスティックコーヒーが嬉しかったです。

お子さんの様子について
こどもが「わあ!これ好きなやつだ!」と手に取っていました。
開けた瞬間からお菓子に飛びつきニコニコと分け合っていました。


被災地の親子に「ひとりじゃないよ」のエールを届けていくために
災害などの緊急事態において、しわ寄せがいきやすいのは社会的に立場の弱いご家庭やこどもたちです。ただでさえ近年の物価高騰で多くの家庭が厳しいやりくりを余儀なくされている中、今回の震災が生活へ与えた影響は計り知れません。発災から時間が経った今も、現地で暮らす親子の生活再建、そしてそれに伴う不安は続いています。
そうした厳しい現実に対し、今回のような支援物資のお届けだけで、深刻な雇用やインフラの問題を根本から解決できるわけではありません。それでも、過酷な環境において一人で負担を抱え込みがちなひとり親家庭に対し、公的支援の隙間を埋め、「社会全体で見守っている」という安心感を届けていく。それが生活再建に向けた一歩を支える力になると、わたしたちは信じています。
フローレンスはこれまでにも、東日本大震災や能登半島地震の復興支援をはじめ、さまざまな緊急支援活動を行っています。このような迅速かつ全国的な支援ができるのは、日頃から活動を継続的に支えてくださっている皆さんのご支援があるからです。
不安を抱える親子へこれからも温かいエールを届け、「ひとりじゃない」と誰もが安心できる社会をともにつくっていくために。引き続きフローレンスの活動にご支援をよろしくお願いいたします。
▼こちらも合わせてご覧ください:2024年能登半島地震の被災地支援





