「ヘルパーに来てもらえる時間が短すぎる」
明石市で、医療的ケアのあるこどもを育てるお母さんたちが、そう声を上げている——。10月、そんな記事1を読みました。
こんにちは、フローレンスで副代表理事をしている黒木です。
ご自宅に看護師が訪問しケアや発達支援を行う「医療的ケアシッター ナンシー」を立ち上げ、医療的ケア児のご家庭とずっと関わってきました。だからこそ、この記事はひとごとに思えませんでした。
明石市の居宅介護(ヘルパーが自宅に来て介助する支援)は1回2時間が標準。支給決定は月平均28.8時間だそうです。一方、隣の神戸市では夜から朝まで11時間使えた例もあるといいます。
たんの吸引は、夜も待ってくれません。
同時に、「これは居宅介護だけの話じゃないな」とも思いました。
住む町によって、使える制度も、親が休める時間も違うことを、わたしは何度も見てきたからです。
年0時間の町と、年288時間の町
「在宅レスパイト」という事業があります。ヘルパーが訪問する「居宅介護」とは別の、看護師が自宅に訪問し、医療的ケアを家族に代わって担う事業です。その間に、親は眠ったり、自分の通院に行ったり、自由に時間を使うことができる——暮らしを支える大切な事業の1つだと思います。
ただ、これは自治体ごとの事業なので、対象も時間も、住む町で大きく違います。
例えば、東京都台東区は年288時間まで使えます2が、制度そのものがない地域もあります。
必要としている家族は、たくさんいる
フローレンスは2021年から、仙台でも医療的ケアのあるこどもと家族を支える活動をしています。
宮城県には、国の難病対策の事業をもとにした「在宅レスパイト」の事業があります。ただ、対象は指定難病などが主な原因で常時人工呼吸器を使っている方に限られます3。経管栄養やたんの吸引が必要でも、多くの医療的ケア児は対象外。医療的ケア児を対象にした在宅レスパイトは、県内ではまだ整っていません。
昨年、フローレンスは県内の医療的ケアや障害のあるこどもを育てるご家族にアンケートをお願いしました。
ほとんどのご家庭が対象外で利用したことがない一方で、約9割のご家族が「制度が改善されれば利用したい」と答えてくれました。約8割が選んだ使いたい場面は、「保護者自身の通院・療養・休養」です。

自分の体のことは、後回し。そんな親御さんの姿が、数字の向こうに見える気がしました。
今年3月には、宮城県議会でもこのテーマが取り上げられました。必要としている家族がいることは、少しずつ共有されはじめています。
一緒に、家族が休める時間を増やしていく
ここまで、住む町による違いを取り上げてきました。でも、自治体を責めたいわけではないんです。
背景には、ケアに対応できる支援の担い手が限られている、という事情もあるのではないでしょうか。制度をつくっても、時間を広げても、来てくれる人がいなければ、家族は休めない。
特に地方では、ご家庭どうしの距離が離れていて、1軒を訪ねるだけでも移動に時間がかかる、という声も聞きます。
制度をつくる自治体と、ケアを届ける事業者。どちらか一方だけでは、家族が休める時間は増やせません。
医療的ケア児支援法は第3条で、こどもと家族が「その居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられるようにする」ことを定めています4。住む町ではなく、必要な度合いに応じて支えてもらえる。そんな社会にしたい。
わたしたちも担い手を育て、ケアを届ける側として、一緒に取り組んでいきます。
1 神戸新聞(2026年10月17日)「医療的ケア児の在宅支援『短すぎる』 明石の母親たちから悲痛の声 自治体で差、厚労省『柔軟対応を』」(最終閲覧:2026年11月4日)
2 台東区「台東区重症心身障害児(者)等在宅レスパイト・就労等支援事業」(最終閲覧:2026年11月4日)
3 宮城県「在宅レスパイト事業」(最終閲覧:2026年11月4日)
4 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 第3条(衆議院)(最終閲覧:2026年11月4日)
書いた人 黒木 健太

ヘルスケア企業の営業・マーケターを経て2018年フローレンス入職。「医療的ケアシッター ナンシー」を立ち上げる。2023年ディレクター(執行役員)就任。医療的ケア児に関する政策提言にも関わり、2021年の医療的ケア児支援法成立に尽力。
健康のために始めたランニングにハマりすぎて、不健康になってないか心配している今日このごろ。


