「NPOで働く」ことが普通の時代になってきました。そんな時代の中で、20代のファーストキャリア、セカンドキャリアで、NPOを選ぶ若者たちがいます。
私たちフローレンスも、2015年から毎年新卒採用を行っています。しかし、NPO業界、まだまだ人材育成の制度が充実していなかったり、若手社員の繋がりが薄かったりします。
そのような課題がある中で行われているプログラムがあります。
その名も「NPO若手スタッフ合同研修」。
NPO若手スタッフ合同研修に参加したスタッフの座談会を通して、彼らがこのプログラムに参加して、何を感じ、どのように変化していったかを見ていきたいと思います。
NPOなどで働く20代の若者を中心とした研修プログラム。今回が3期目となりました。
今年は11団体から19名のスタッフが集まり、3ヶ月の間、4回の集合研修とグループワークをベースに、それぞれが関心のある社会課題に対する提言を行いました。
<研修概要>
第1回:ファシリテーション研修
第2回:問題発見・解決研修
第3回:プレゼン研修
第4回:最終発表・振り返り
受講者インタビュー
佐藤:NPO法人フローレンス所属(1年目)(写真左から1番目)
テーマ:「発達障害の子どもを持つ家族への支援」
久保:日本ファンドレイジング協会所属(1年目)(写真中央左)
テーマ:「同上」
重松:NPO法人フローレンス所属(2年目)(写真中央右)
テーマ:「産婦人科医の労働環境問題」
三浦:㈱シェイク所属(4年目)営業担当(※電話インタビューのため上記写真には不在)
テーマ:「小学校教員の超多忙解消」
インタビューワー:岩井 (写真右から1番目)
社会問題について語り合う場を求めて
――みんなが研修に参加した目的は?
久保:私は、入社前から研修を知っていて「いいなー!」と思っていました。入社面接で「参加できますか?」と上司に聞いていたぐらいです。
中間支援業務をしているので、いろんな団体の人達と課題に対して議論を深めていく経験をしたいと思っていました。
あと、ファンドレイジング(資金調達)に特化している団体なので、お金が集まった後の社会の姿(幸せ)を想像したいと思って参加しました。
(本研修はチームごとに社会課題を設定し、それに対し解決策を発表するグループワークを実施しています)
佐藤:恥ずかしいんですが、明確な目標はありませんでした。上司とも目的を何回か話し合った結果、「違う団体、違う個性の人たちがチームになって1つの目標に向かっていくときにお互いの潤滑油になること」が目標でした。そのため、相乗効果を高める役割を意識して参加していました。
――他のメンバーが突っ走るタイプだったので実際にも潤滑油として活躍していたよね!
重松:私は、同世代の人達と社会問題について深く議論することを目的にしていました。
入社当時「親子に関わる社会問題を解決したい」という気持ちで入社しました。
だけど、日々の業務をこなすことにいっぱいになり自分の仕事が社会問題とどう繋がっているか実感が持てない時もあり、社会問題について語り合いたいという気持ちがあったからです。
――自分一人でやっていることは社会問題解決への一部分だから、日々の業務で直接実感できる機会を持つことが難しい時もあるよね。研修では、疑似とはいえ社会問題を解決することを体験できるいい機会だったよね。
三浦:参加目的は2つで、一つ目は学校教育向けに何をしたいのか?を明確にしたい。二つ目は社員教育 自分のスキル向上・視野を広げるです。
この研修はソーシャルセクター(NPOや社会課題に取り組む企業など)の人達が中心となっているので「どういう雰囲気なんだろう?」と思っていました。実際、独特でしたし(笑)
――どんなところが独特だった?
三浦:変な意味でなくて!それぞれが個人の原体験や想いをベースにして仕事をしているのを肌で感じました。
同じ団体でもそれぞれ想いは違っていて刺激的でした。
また、メンバーは自己開示がうまかった!1回目の研修でかなり自己開示ができ安心して次に進めました。メンバーに刺激を受けて、自分が入社した時の想いを思い出しました。
さまざまな環境・想いの人達と協働する
――研修を受講する中で大変だったこと・難しかったことは?
久保:相手をリスペクトするけれど、自分たちが想定していた課題や解決策の方向性とギャップがあるときに悩みました。
自分たちのテーマが「発達障害の子をもつ親の支援」でした。僕自身も発達障害があり、客観的に考えるのが難しく、当事者の自分と課題解決する側として自分の切り替えが大変でした。
――当事者である中で、進める難しさがあって本当にチャレンジだったよね。
佐藤:通常業務も重なってフィードバックをもらう事やヒアリングが遅くなった事、MTGの時間が不足して大変でした。忙しくてもお互いの状況を理解するためチェックイン/チェックアウトは必ずやっていたのは良かったです。
もう一度やるなら、タイムスケジュールや進め方を設計してやり直したい。
今後の仕事にも生かそうと思いました。
重松:私が難しかったのは、全員で決定したことも時間が経つと「私は違うと思ってた」と言われて……。
確認もしたのに「なんで、180度意見を変えるの?!」と驚きでした。
相手の想いを理解しないまま進めると消化できなかった意見が再燃してしまうので、1つの事を決める難しさを肌で感じました。
その状況に対して数字やデータを提示することで認識が擦り合って進められました。
――ほんと大変だったね。他のチームはそのあたりはどうだった?
久保:重松さんのチームは資料が多くて脅威だった!自分のチームはヒアリングは多かったけど、解決策のロジックが手薄だったなと反省があります。
お互い取り組みたいテーマは違ったけれど「障害があってもなくても幸せに暮らせる環境をつくる」という社会像のゴールが一緒だったので議論を進める上で大きな課題はありませんでした。
三浦:僕のチームは、大阪在住メンバーがいたので全てオンライン上でのやり取りだったのでチーム作りでは苦労しました。意見が擦り合わなかったり、議論が繰り返してしまう時期がありうまくいきませんでした。その様子を見ていたメンター(※)からのアドバイスもあり、全員でモヤモヤした気持ちを発散する会を実施してお互いの気持ちを吐き出しました。
そこから、取り組むスピードが格段に上がりました。行動派のメンバーが集まったのでまずは行動して!という感じになりました。
僕は期限内で形にするという意識が強かったのですが、議論のモヤモヤを最後まで出してくれたメンバーもいました。、前に進まないもどかしさはありましたが、そこから新たな視点が加わった時もありきちんと意見を伝えてくれてありがたかったです。
※メンター制度とは
各チームに先輩社員が1名担当しチームづくりのサポート、必要な助言を行っていきました。
自分がメンバーにとって、どうあるか考えた
――研修中に気持ちや目標の変化はあった?
久保:最初は課題に対してそれぞれの専門性を活かして解決策をだしてなんぼ!というイメージだったんですが、初日に自分の価値観やバックグラウンド(過去・現在・未来)などを自己開示してから課題設定をしたので、お互いが大事にしていること・その先に見ている社会像やイメージを知れたのが良かったです。
専門性を持ち寄る以外にも、理想を共有することがないと協働・コレクティブインパクトは起こせないと感じましたね。
――他団体・企業と一緒に業務をやる場合、基本的には課題にたいして専門性を持ち寄り解決することが多いよね。自己開示することに抵抗はなかった?
久保:特に抵抗はありませんでした。メンバーの話を聞きながら受け入れてもらえるという雰囲気があった。自分が開けば開くほど得をすると思えました。
――確かに、久保君は自己開示をかなりしていたと思う。お互いの自己開示があったから短い期間でも率直に意見が言い合える関係性になれたね。
佐藤:当初は仕事を覚えたいという気持ちが強く、1年目のタイミングで参加するのはどうなのか?とモヤモヤしていました。
私は自己開示は得意でなく警戒していて。。
久保君がオープンに話してくれたので研修を重ねる中で信頼でき相談・安心できる場になっていきました。
メンバーを観察していると、全員が違うタイプで良いところがあり学ぶことができました。メンバーのいいところを1つ1つ取り入れて研修に取り組みました。
重松:最初はお互い話を聞いてくれるタイプでやりやすいチームだなと思ってました。
だけど、回を重ねフィードバックや議論を進める中でしんどくなって……。
上司や周囲の理解もあり業務調整をしてもらっていました。そのため、研修に多く時間が取れたので「自分がやらなきゃ!どうしたら他のメンバーがやりやすいか」という気持ちが強くなり自分だけでやりすぎてしまって。最後の振り返りで「やらせちゃってごめんね。」というコメントをもらいました。
関係性は悪くないけど、モチベーションが下がってきた時に課題を進めるという締める役割がうまくできなかったことが心残りで課題になっています。
――そこに危機感があったのは重松さんだけだったの?
重松:それぞれ「なんとかしなきゃ」と思っていたようです。メンターにもアドバイスをもらってメンバーにも相談しましたが、2対2で意見が割れるかもと恐れもあり、2人から広げるのは難しかったです。
――関係性が悪くはならないようにというのと、もう一歩突っ込んで意見を言えるかどうかというのは難しい部分だね。
三浦:僕は大きな変化はなかったです。
最初から気持ちはワクワクしていて、研修が進むに連れてモチベーションが高まった感じです。
それぞれの職場に戻ってからの変化
――研修が終わり、みんなの中で研修が活かされていることはありますか?
久保:なんでそれをやりたいのか?という話をするようになりました。
その問題を解決することで達成したい社会像を共有・共感することをチームを作る上で意識しています。
ソーシャルセクターの更なる発展に貢献できる人材になるために、この研修のメンバーはいい仲間だけど負けられないという気持ちです。
その刺激もあり大学院でMBAを学ぶことにしました。そして無事に、合格通知が届きました!!
佐藤:知らなかった。すごーい!!
佐藤:研修最後に実施した、メンバー同士でのフィードバックが生きているなぁと思います。さすが3ヶ月間、一緒だったので自分をよくわかっているなと!
研修中は、自分から前に出ることに苦手意識があったけど、最終発表のプレゼンターをやろうと思い立候補しました。研修後は、フィードバックで意見をもらった自分の苦手な部分をやろうというスタンスになり気持ちの変化が大きいです。
重松:周囲には熱い想いを持って働いている人たちがいることを一番感じました。違う課題、違う想いだけれど頑張っているので自分の選択は間違っていないし、フローレンスに入社した理由を再確認できました。
私は、保育士を目指していた時期もありました。保育士さんは「人のために働きたい」という気持ちが強いと感じてます。が、働く環境はまだまだ整っていないので今後より良く働くためにサポートしたい!と強く思えました。
――業務の中で初心を思い出せる/聞ける場所があることは貴重だよね。
三浦:公教育向けに「何かしたい!」という気持ちを持って参加していて、僕たちのテーマが学校教育だったので問題意識が高くなり、どの部分に課題を感じるのか明確になりました。誰のどんな問題を解決したいのか自分の中で答えができたので行動に移せそうです。
研修で学んだことは営業場面で生かされていると思っています。
例えば、お客さんは何を感じていて、何に不満があるのかという事から起きている組織構造について考えたり……。
また、メンターから最後にもらったフィードバックが心に残っています。
研修を通して自分の事を理解し課題を教えてくれてありがたかったです!
――フィードバックの内容をスラスラ言っていた様子を見て、本当に響いているんだぁと聞いているこちらも感じるほどでした。
社会問題の解決に挑戦する20代が増えていくように
インタビューの最後には、
「いい仲間に出会えて、初心に戻ることができた」
「業務が実際にどう繋がるのかイメージがクリアになり、当事者やそれに関わる人達をよりリスペクトできるようになった」
という意見がありました。
その他、「しんどい時期もあるので、覚悟を決めて参加したほうがいい」という声も!
誰もが何かしらの想いを持って飛び込んできたはず。日々の業務の中で、その思いが見えなくなることもある。それでも、こうやって、自分や人や課題と向き合うことで、共に歩むことで、見えてくるものが沢山あると思います。
このプログラムをきっかけに、多くの若者が参画する業界になれば、社会はもっと速く、もっと多くの社会問題を解決していくことができると信じています。
今後も本研修の開催をと考えております。
多様なメンバーと頭に汗を書きながら、一緒に学びの場を作って頂ける方をお待ちしています!!
最後に、本研修にご協力頂きました講師・関係者のみなさま、そして、研修に全力で取り組んだ参加者の皆さんありがとうございました。
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