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2023/05/26

緊急声明:DV・虐待被害者を危険にさらす共同親権案に反対します。「子どもの居所指定権」を含めないでください

  


法制審議会での共同親権導入の検討が佳境を迎えています。

4月18日の家族法制部会で、「協議離婚で、父母双方が親権を持つことについて真摯な合意がある場合」について、共同親権を導入するかどうか検討を始める、とされました。その後5月16日の部会で、法務省が検討のたたき台として提出した資料を見て、私たちは驚きました。(https://www.moj.go.jp/content/001396023.pdf

離婚後の親権のあり方は婚姻時とは違うものであるべきでしょう。検討案が離婚後の親権行使のあり方を婚姻時と同様に考えて、規律を決めようとすることにまず強い違和感を持ちました。

「親権は、父母が共同して行う」ことを原則とし、「意見が対立するために親権を行うことができない事項があるときは、家庭裁判所が当該事項について親権を行うものを定めることができる」としています。

◼️『子どもの居所指定権』など子と同居親を危険にさらす共同親権に反対します!

この規律に基づき、子の居所の指定・変更についても、「父母の離婚の前後を問わず、父母双方が共同で行うべきことが原則」と記載。「父母の意見が対立するときは家庭裁判所の調整が図られる」とし、父母のどちらか一方が単独で決めることは「一方が行方不明の場合」や「緊急の場合」など例外的なケースとしています。

緊急性については個別具体的な事情に基づいて判断されるとのことですが、緊急性を誰がいつ、どのように判断するのかについて定まっていません。緊急案件と認定されるまでの間は子どもの居所指定権が有効であり続けることになり、DVや子どもへの虐待があった場合、子どもを連れて逃げると同時に監護者指定の申立を即時に、家庭裁判所に申立するといったことを被害者に要求しています。これでは切迫したケースの被害者は救われなくなります。

まず、離婚の背景にDVがあるケースは決して少なくありません。
2021年の司法統計によると、同年に家庭裁判所に離婚の申立てがあった6万4885件を動機別(3つまで複数回答可)に見ると、「(相手が)暴力をふるう」は夫の9%、妻の19%、「精神的に虐待する」は夫の21%、妻の26%、「生活費を渡さない」は夫の5%、妻の31%にのぼります。DVは主要な離婚理由の一つです。内閣府男女共同参画室の調査ではコロナ禍でDVの相談件数はそれ以前の1.5倍になり、なお高止まりしています。

こうした状況下で居所指定権を含む共同親権の検討が進んでいることは、DV被害者にとっては恐怖でしかありません。

現在、DVや虐待から被害者を守るために、加害者とその弁護士が被害者の住民票閲覧をすることに制限をかけることができますが、その運用が実質無効になってしまいます。子の居所を指定することができれば、同居する親の住所もわかってしまうからです。

子どもと同居親の生命を危険に晒すことになる「子どもの居所指定権」を、共同親権に含めるのはやめてください

◼️監護者を決めないと子どもの生存を脅かし貧困を助長します

親権は子どもの身の回りの世話をする「身上監護権」と子どもの財産を管理し、契約を代行する「財産管理権」からなります。

法務省の資料では、共同親権を導入した場合、身の回りの世話をする「監護者」を、どちらか一方に定めないことも検討されています。

監護者を決めないまま離婚が成立すれば、子どもの身の回りの世話を押し付け合ったり、取り合ったりすることになりかねません。特に授乳やおむつ替えなどの具体的な世話をしてもらわなければ生きていけない乳幼児にとっては、生存を脅かされる事態です。また、こどもの養育上の知識を持たない者が、例えば、アレルギー食品を子に与えてしまうことなども起こりかねません。

更に、子どもの監護をしている人に支払われてきた養育費や児童扶養手当、税控除なども、双方が監護者と見なされればもらえなくなる恐れがあり、10年かけて解消を目指してきた「子どもの貧困」を、かえって助長する結果になりかねません。

◼️親権停止では「子どもの利益」を守れません

法務省の検討案では、共同親権下で父母の意見の不一致により親権の行使がされず、かえって子どもの利益に反する場合は、親権者の一方が、他の親権者の親権停止を家庭裁判所に申し立てることができる、としています。また居所指定権についての記述でも、児童虐待等からの避難が必要な場合は、家庭裁判所に他の親権者の親権停止の審判を求めればよいという注書きがあります。

しかし、司法統計によると、親権停止は年間250件前後にとどまり、虐待が疑われるケースでも極めて慎重に判断されているのが実情です。共同親権になったからといって「親権停止」の判断が容易になるとはおよそ考えられません。

また一方の親が子育てについて、自分の意思を通すために、相手方の「親権停止」を申し立てることも想定されます。今でも多くが被害を受けているリーガルハラスメント(法律手続きを悪用したいやがらせ)の温床となります。

仕事と子育てでいっぱいいっぱいのひとり親にとって、裁判の手続きや費用の負担は重く、申立への対応は難しいでしょう。親権停止の判断をしている間に、子どもの入園、進学、医療など喫緊の課題で時機を逸してしまうことも起こり得ます。

親権停止は「子どもの利益」の救済策にはなり得ません。

以上のような観点から、私たちは現在検討されている共同親権案に反対します。

法制審議会の委員や幹事の皆様には、ひとり親とその子どもの厳しい生活実態をご理解いただき、「両親双方が子どもの養育に責任を持つことが子どもにとって幸せ」などの理想論や、法律の立て付けなどの形式論ではなく、当事者の実情に即した議論を強く求めます。




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