2022年が始まり、1ヶ月が過ぎようとしています。
ふたたび猛威を振るいはじめた新型コロナウイルス感染症の感染者数の爆発的な増加にともない、21日には新たに東京など1都12県に「蔓延防止等重点措置」が適用されました。非正規雇用者の多いひとり親家庭などへの影響が懸念されています。
実のところ、長引くコロナ禍は、フローレンスの保育・福祉の現場にも少なからぬ影響をもたらしました。2021年は病児保育や障害児保育、保育園の現場での感染予防やワクチン対応などに追われ、事業を続けるだけでも精一杯な状況でした。
それでも、困窮を極めたひとり親家庭や、経済的に大きな打撃を受けた家庭から届けられる悲痛な声に応えるべく、 #withコロナの親子を支えようを合言葉に、様々な支援策を打ち出してきました。
一方、フローレンスがかねてから精力的に取り組んできたソーシャルアクションにおいては、問題提起の手を緩めずに活動を続け、2021年に大きな成果を出すともに、コロナ禍であらたに浮かび上がった親子をとりまく社会課題に対しても様々な提言を行いました。
今回のフローレンスニュースでは、2021年に取り組んだ支援活動と、大きな社会変革の波を起こしたソーシャルアクションについて、厳選してご報告します。
親子に笑顔をー2020年4月~2021年3月に実施した「こども宅食ひだまり便」。21年12月には「クリスマス便」も
企業・個人の皆さんからの寄付を原資に物資の調達や配送を行い、フローレンスの病児保育を利用するひとり親家庭に向けて、2021年3月まで定期的に食品・日用品をお届けしてきました。さらに、長期化するコロナ禍の状況を受け、2021年12月にはクリスマス便を発送しました。
医療的ケア児とその家族への支援拡充の第一歩!長年の訴えが実った瞬間
フローレンスが日本で最初に障害児のための長時間保育施設を立ち上げたのは、2014年のことでした。翌2015年、医療的ケア児に関心の高い議員が視察に来たことから、超党派の勉強会「永田町こども未来会議」が発足。代表の駒崎やスタッフも会議に参加し、医療的ケア児とその家族への支援拡充を訴え続けてきました。
そして2021年9月、苦節6年にわたる政策提言が実り「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行されました。今後は、医療的ケアの必要な子どもとその家族への支援が着実に拡充するよう働きかけていきます。
一人のスタッフのあげた声が、社会を変えた-都内のバス「二人乗りベビーカーでの乗車」OKに
「二人乗りベビーカーでは公共交通機関であるバスに乗れない」ことを知ったフローレンスのスタッフが中心となり、2019年に全国アンケートを実施。全国から寄せられた悲痛な声を、関係機関に届け、訴え続けて2年。
ついに2021年6月17日より、都営バスで、二人乗りベビーカーの乗車が解禁され、さらに2022年3月末までに民間バス全線でも乗車が可能になることが決定しました。今後、東京都内だけでなく日本全国に広まるよう、引き続き社会に提言していきます。
「#保育教育現場の性犯罪をゼロに」こども政策の推進に係る有識者会議メンバーとして、日本版DBS創設に尽力
保育・教育現場での性被害をなくすために、「日本版DBS(子どもたちを性犯罪から守るため、保育・教育現場に性犯罪者を立ち入らせないようにする仕組み)の創設を目指して活動を続けてきたフローレンスの提言が、ついに2021年4月に内閣総理大臣の元に届きました。
9月にはフローレンススタッフが「こども政策の推進に係る有識者会議」のメンバーに選ばれ、こども庁の基本政策の議論を重ねています。
2022年1月14日、フローレンスは、こども家庭庁創設に向けた基本方針に関する声明を発表しました。
2022年1月17日に岸田首相がおこなった施政方針演説ではフローレンスが提言した「日本版DBS 創設」や「こどもデータ連携」を、こども家庭庁が主導し、進めていくことを表明しています。
少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも、喫緊の課題です。不妊治療の範囲を拡大し、4月から保険適用を始めます。こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、「こども家庭庁」を創設します。
こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、こどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。
2021年、フローレンスは新たな取り組みもスタートさせています。
デジタルソーシャルワーク「おやこよりそいチャット」をスタート
「おやこよりそいチャット」は、生活が厳しい状況にあるにも関わらず支援につながっていない子育て世帯に、LINEを活用した情報提供・相談支援等により必要な支援を届ける新しい仕組みです。アウトリーチ型の福祉支援モデルは被支援者の心理的物理的ハードルを下げるデジタルとの相性が非常に良いことが検証されつつあります。
神戸市を中心に取り組みをスタートし、全国に展開していく予定です。
一度離職した医療的ケア児保護者の「もう一度はたらく」を実現。障害児かぞく「はたらく」プロジェクト
障害児・医療的ケア児の親御さんは、出産を機にそれまでの仕事を続けることが難しくなり、離職するケースが多くあります。さらに、その後再就職を希望しても、「家にいて子どものケアに専念すべき」といった社会の価値観や精神的な不安、度重なる入院や24時間絶え間なく続くケアの負担など、様々なハードルに阻まれて、仕事復帰に大きな困難を抱えるご家庭が多く存在します。
もう一度働きたいけれど、さまざまなハードルにより一歩を踏み出すことが難しい親御さんに寄りそいたいという想いから、医療的ケア児保護者の「もう一度はたらく」の実現を目指し、「障害児かぞく『はたらく』プロジェクト」をスタートしました。
再就職をサポートする「ワークアゲイン・プログラム」の提供と、プログラム参加中にお子さんへ看護師による保育を行う「重度医ケア児訪問保育エレノア」の両輪で、再就職への第一歩をサポートします。
母子のためのシェルター事業
2021年8月、フローレンスは貧困や疾患、 DVなど複数の課題を抱え困難な環境にある子育て家庭の支援として、母子のためのシェルター運営のトライアルを開始しました。専門の保育スタッフ等がシェルターで暮らす子どもたちに保育を提供したり、勉強を教えたりしています。また親御さんに伴走し生活の立て直しのサポートも行なっています。
コロナ禍において、私たちフローレンスが改めて強く決意したことがあります。
それは、#すべての親子を置き去りにしないということです。
長引くコロナ禍で、様々な社会課題が可視化されました。解決に向けて大きく前進した課題もあれば、より深刻な状況に陥り、多くの支援を必要としている課題もあります。
虐待対応件数は過去最高の20万件を超えました。
生活環境の変化によるDV被害が増加しています。
コロナ禍以前に7人に1人だった子どもの相対的貧困状態が、今は5人に1人ともいわれています。
フローレンスがこのような課題に直面する親子の支援に全力で取り組むことができたのは、皆さんの応援とご支援があったからです。
2022年も、フローレンスは親子の笑顔のために全力で突き進んでまいります。引き続き・応援・ご支援をよろしくお願いします。