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【事例紹介】こどもたちが企画から運営まで担う!?あかさかルンビニー園の保育園こども食堂「Kid’s Space ルンビニー(Kid’s kitchen)」

【事例紹介】こどもたちが企画から運営まで担う!?あかさかルンビニー園の保育園こども食堂「Kid’s Space ルンビニー(Kid’s kitchen)」

#保育園こども食堂

地域に支援の手を広げる「保育園こども食堂」

突然ですが、「保育園こども食堂」って知っていますか?
「こども食堂」は聞いたことがあるけど、「保育園こども食堂」は初めて聞いた!という方も多いのではないでしょうか。

「こども食堂」と聞くと、こどもたちが無料または低額で「食事する場所」をイメージされるかもしれませんが、「保育園こども食堂」は単なる食事提供の場ではありません

保育園を起点として開催する「保育園こども食堂」には保育士や栄養士などの専門スタッフがおり、子育て相談に乗ることで家庭の悩みに寄り添います。保育園の在園児家庭だけではなく、地域のこどもや子育て家庭も利用することができます。
「保育園こども食堂」は地域住民にとって身近にある「保育園」が、地域に支援の手を広げ、地域の親子を見守るという、新しい保育園の役割を果たしているのです。

フローレンスでは、2019年に仙台市青葉区内の「おうち保育園かしわぎ」にて、仙台エリア初となる「保育園こども食堂」を開始しました。きっかけは、近くに頼れる知り合いがおらず孤独に育児をしているご家庭の存在でした。地域の子育て家庭にも支援を届けたい!という園長の熱い思いから始まり、その後、仙台の他園、東京都内のフローレンスの保育園でも活動を開始しました。

フローレンスの「保育園こども食堂」では、食支援と合わせて「子育てサロン」や「子育て相談会」などを開催することで、これまで接点を持てていなかった地域の子育て家庭とつながり、「食」を通じた見守りや必要なサポートを届けています。

今、全国各地のさまざまな保育園で、素敵な「保育園こども食堂」の取り組みが広がっています。
今回は、フローレンスがイチオシする「保育園こども食堂」の事例をご紹介したいと思います。

こどもたちが主役の「保育園こども食堂」

佐賀県にある認定こども園「あかさかルンビニー園」が運営する保育園こども食堂「Kid’s Space ルンビニー(Kid’s kitchen)」の特徴は、一言でいうと「こどもたちによる、こどもたちのための食堂」です。メニュー決めやチラシ作成、地域の家庭への案内などの事前準備から、当日の調理補助、利用者の誘導、配膳、そして片付けまで、一連の運営を地域の小学生が主体的に取り組んでいます。

利用者を迎える前に円陣を組んで気合いをいれるこどもたち

食堂の一日:公民館で広がる笑顔の輪

Kid’s Space ルンビニー(Kid’s kitchen)は、より多くの利用者を収容できるように、こども園の近くの公民館で開催されています。

こどもたちが作った看板が会場を彩ります

こどもたちのあたたかいおもてなし

会場に入ると、各テーブルには小学生が製作したお花のオブジェや席番号のポスターが配置され、鮮やかで温かい雰囲気に包まれています。

各テーブルには折り紙で作ったお花のオブジェや可愛らしいサンタクロースのポスターが!

食堂の開始時間になると、続々と利用者が来館。受付係の小学生が「いらっしゃいませ」と笑顔で元気に声をかけ、受付票に記名をお願いしたり、案内係が空いている席まで優しく誘導したりと、こどもたちがあたたかなおもてなしで迎えます。お客さんの様子を見ながら、自分たちで呼び込みに行く姿も。「こども食堂やってます!」の声に「また来たよ」と手をふるお年寄りの笑顔が印象的でした。

「こども食堂やってます!」と呼び込みをするこどもたち

配膳係のこどもたちは、できたての料理や飲み物をテーブルへ運びながら、「熱いので気をつけてくださいね」「たくさん食べてね」と優しく声をかけます。利用者が食事を終えると、片付け係のこどもたちが素早く食器を回収し、テーブルを拭いて次のお客様を迎え入れられるよう準備を整えます。こうした一連の作業をこどもたちが主体的にこなしている光景は、とても微笑ましく、同時に頼もしくもあります。

多世代交流の場として

このこども食堂を訪れるのは、在園児の家庭だけではありません。地域の高齢者や近隣のこどもたちが利用することも多く、世代や背景を超えて食事を楽しむ居場所になっています。

地域の高齢者

こどもたちが手作りのチラシを家まで届けてくれたのがきっかけで、この食堂に来るようになりました。いつも楽しみにしています

近隣の小学生たち

あそこのエプロンの子は同じクラスの友達。誘ってもらって嬉しかったから来るようになった。お母さんは仕事で家にいないから、いつもお姉ちゃんや友達と食べに来ているの。

保育園に通う親子

こどもがあかさかルンビニー園に通っています。実はわたしもあかさかルンビニー園の卒園なんです。自分が生まれ育って、生活する地域にこういった場所があるのは、とても嬉しいですね。

多世代の人々が一堂に集まって食事を楽しむ空間は、どこか懐かしさを感じさせ、安心感に包まれていました。それぞれが自然に会話し、笑顔を交わし合う姿は、このこども食堂が単なる「食事の場」にとどまらず、地域のコミュニティを育む「交流の場」にもなっている証だと感じます。

「こども主体」を支える王寺先生の想い

食堂の中心で、こどもたちや利用者に声をかけながら、美味しそうなおにぎりを手際よく握っているのは、園長の王寺直子先生です。王寺先生は全国認定こども園協会の代表理事も務められており、これまで数多くの保育・教育現場に携わってきました。

会場の真ん中でおにぎりを握っている王寺先生と配膳係のこどもたち

あかさかルンビニー園で、こども主体のこども食堂が生まれた背景には、王寺先生の「こどもたちが自分の力で考え、判断し、行動する機会を大切にしたい」という強い想いがあります。大人がすべてを先回りして準備するのではなく、こどもたちが運営の主役として活躍できる場をつくることで、失敗や成功を含めた多様な学びのチャンスが生まれます。こうした体験が、こどもたちの自立心や協調性、責任感を育てているのです。

運営に参加している小学生の保護者の方は、「このこども食堂では、こどもたちは自分たちのやりたいことに挑戦しています。メニューを決めるのもこどもたちです。こどもがきらきらしている姿を見ることができて嬉しい」と話していました。

実際にお皿洗いや調理補助を担うこどもの姿を見て「うちのこどもは、こんなことができるようになっていたんだ」と気づく機会にもなっているそうです。

参加のこどもたちからも「料理が好き。家でもお母さんにつくってあげる。」「ぼくはお皿洗いが得意だから。」と、自分の役割を楽しみ、自信をもって活動に取り組んでいる様子が伺えました。

お皿洗いをするこどもたちの背中は頼もしいです

さらに、こども食堂の運営を通じて、地域の方々や保護者とこどもたちが一緒に過ごす時間が増え、「顔と顔のわかる関係づくり」がより深まったといいます。こどもたちにとっても、日常では触れ合う機会の少ない高齢者や異なる学校に通う仲間との交流が、新鮮で刺激的な学びの場になっているようです。

こどもたちの主体性を育てるサポーターズ

もちろん、すべての活動を小学生だけでできるわけではありません。こどもたちの年齢や特徴を理解したうえで、こどもたちがチャレンジできるような環境を整えたり、適切なアドバイスや支援をしてくれる先生たちの存在は欠かせません。あかさかルンビニー園の保育者や職員の皆さんは、普段の園運営でも「こどもたちの主体性」を大事に保育をされており、その理念は保育園こども食堂にも活かされています。

また、近隣の高校に通う学生ボランティアも活躍しています。親元を離れ、高校の近くで下宿をしている女子高校生は、「王寺先生に声をかけてもらい、ボランティアを始めました。料理を作るお手伝いをしています。楽しいので、ついつい来ちゃうんです。今日は後輩も誘ってきました!」と笑顔で語ってくれました。

小学生のこどもたちに年齢が近いお姉さんたちの存在は、先生や親たちとも違った距離感で、こどもたちを見守り支えています。

大人は、こどもたちのために良かれと思って、何かしてあげたいという気持ちから、ついこどもたちのやることを無意識に奪ってしまいがちです。ここでは、大人とこどもが協力しながら取り組むことで、安心・安全に配慮しながらも、こどもたちがリーダーシップを発揮できる環境が整えられた素敵な事例です。

一緒に「保育園こども食堂」を広げませんか?

「Kid’s Space ルンビニー(Kid’s kitchen)」での、こどもたちの主体的な関わりが生み出すあたたかな空気は、単なる食事提供という枠を超え、人と人がつながる居場所として地域に根づいています。今回ご紹介した、あかさかルンビニー園の「こどもたちによる、こどもたちのための保育園こども食堂」は、素晴らしい事例の一つです。

フローレンスでは、引き続き保育園こども食堂の普及に向けた取り組みを推進していきます。保育園こども食堂の輪がさらに広がることで、地域のこどもや保護者が気軽に集い、見守り合う「地域でこどもを育む社会」が実現できると考えています。

「保育園こども食堂を始めてみたい」「地域支援に積極的に取り組みたい」という思いをお持ちの保育事業者の方、ぜひわたしたちと一緒に始めてみませんか? 


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