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「保育園こども食堂」事例共有会を開催―食をフックに地域の親子を見守り支援につなぐ実践事例―

「保育園こども食堂」事例共有会を開催―食をフックに地域の親子を見守り支援につなぐ実践事例―

在園児家庭だけではなく、地域の親子へも支援を広げる「保育園こども食堂」

「保育園こども食堂※」とは、食をきっかけにした保育園の地域の子育て支援の新たな形として全国に広がる取り組みです。保育園が「食」をきっかけとして地域の親子とつながり、育児の悩みや困りごとの相談に応じながら見守り、必要に応じて行政や地域の支援サービスなどへつなげることを目指しています。

※保育園こども食堂について詳しくはこちら

このような「保育園こども食堂」を広めるため、わたしたちフローレンスは、令和5年度からこども家庭庁の「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」を中間支援法人として受託し、全国各地の保育園を起点とした食支援活動を行う団体をサポートしてきました。

その中で特に、地域の支援が必要な家庭とつながる工夫や、見守りを通じて気になる家庭を地域資源につなげる連携を積極的に行っている2園を招き、保育園こども食堂の事例共有会を開催しました。
また当日は、こども家庭庁より「ひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業」についての説明があり、昨年度弊会が助成事業で支援をした保育園こども食堂の事業者やその利用者向けに実施したアンケート調査の結果も共有しました。本記事では、その事例共有会についてご紹介します。

▼事例共有会の動画はこちら

▼事例共有会の資料はこちら

事例1:社協と連携して地域の親子とつながる取り組み ~社会福祉法人あけぼの会 あけぼの保育園(埼玉県戸田市)~

あけぼの保育園では、在園児家庭だけでなく地域の親子のためにもできることを考え、フードパントリーと宅食を始めました。

活動の中で「本当に必要な家庭に支援が届いているのか?」という疑問を感じるようになった園長の上出大和さんは、市の社会福祉協議会に飛び込み、自園の活動を紹介しました。これをきっかけに、社会福祉協議会や児童家庭支援センターとの連携が生まれ、心配なご家庭が利用するようになり、その家庭のお子さんが園に入園するという事例にもつながりました。

こちらの団体では、利用家庭に合わせてオーダーメイドで食品等を選んでお渡ししており、支援物品と合わせて、園が運営する子育て支援センターの案内も同封し、利用を促しています。またハロウィンやクリスマスなどの季節には手紙や飾りを同封するなど、「気持ちが伝わる支援」を大切にしています。

▼あけぼの保育園の事例について詳しくはこちら

事例2:専門職と一緒に親子を地域支援につなげる取り組み~株式会社スプラウト 赤坂すずかけ保育園 こども食堂CIRCLE(福岡県福岡市)~

赤坂すずかけ保育園のこども食堂(田代あや代表)は、児童家庭支援センターから派遣されたソーシャルワーカーと心理士2名と一緒に地域の親子を見守っています。

この児童家庭支援センターのスタッフは、こども食堂の中で相談窓口を設けるわけではなく、こどもや保護者と「今日何が楽しかった?」「学校でどんなことがあった?」といった日常的な会話を交わしながら、自然なかたちで困りごとを拾い上げていきます。

「なんとなく困っているけれど、どこに相談すればよいかわからない」「相談や困ったことがなくてもいつでも話を聞いてくれる人がいる」などの思いを持ったご家庭が、食をフックに訪れて気軽に話を始められる場所として、新たな可能性を感じる事例です。

▼赤坂すずかけ保育園の事例について詳しくはこちら

※他の保育園こども食堂の事例については、こちらもご参照ください

こども家庭庁家庭福祉課「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」~

事例共有会では、こども家庭庁支援局家庭福祉課(こどもの貧困対策担当)の川上涼様より「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」について説明がありました。
単なる食事の提供だけではなく、こども食堂や宅食、フードパントリーなどの活動を通じて、支援が必要なこどもを行政の適切な機関へつなげていく「見守り機能」が重要であることが、本事業の趣旨であるとご説明がありました。

ひとり親家庭に限らずすべてのこどもを対象とすることが可能であり、誰もが利用しやすい環境を整えることで参加のハードルを下げ、地域で困っている家庭とつながり、行政や地域の支援機関へ連携することが期待されています。

全国6ブロックごとに選定された中間支援法人を通じて、地域のこども食堂や宅食、フードパントリーなどを助成し、伴走する仕組みです。

詳細については、こちらをご参照ください。

保育園こども食堂が活用できるモデル事業について解説~こども家庭庁保育政策課「過疎地域における保育機能確保・強化のためのモデル事業」~

こども家庭庁の別の課(保育政策課)の予算でも、保育園こども食堂で活用できるものがあり、フローレンスから紹介しました。

令和6年度の補正予算で新規に創設された当モデル事業は、当初、「過疎地域」に限定されましたが、今年5月に「過疎地域に準ずる地域」も追加されました。具体的には「就学前人口減少が今後加速度的に進んでいくと見込まれるなど今後早急に保育所の多機能化を進める必要があると市町村において判断される地域を有する市町村」が新たに対象となり、事業の適用範囲が大きく広がっています。

アンケート調査結果報告:「保育園こども食堂」は低年齢児の育児支援に強み 食をきっかけに、地域の孤立した親子に早期にアプローチできる可能性も

フローレンスでは、「保育園こども食堂等を起点とした食支援事業への助成事業」を活用して2024年度に活動した事業者を対象にアンケート調査を実施しました。また事業者を通じて利用者アンケート調査も行いました。事例共有会では、この調査報告および結果から得られる考察について説明しました。

事業者アンケート(調査期間:2025年3月25日~2025年4月5日、回答数:101件)
https://florence.or.jp/files/data/2025_business-survey-report.pdf
利用者アンケート(調査期間:2024年12月25日~2025年2月9日、回答数:899件)
https://florence.or.jp/files/data/2025_user-survey-report.pdf

1、「保育園こども食堂」を利用したこどもの6割は未就学児。一般的な食堂は小学生の利用が多いが、保育園ならではの低年齢利用率の高さ

「保育園こども食堂」を利用したこどものうち、未就園児は63.5%で、一般的なこども食堂では最も多い小学生の割合を大きく上回りました。

利用者アンケートでも、保育園こども食堂を利用したきっかけとして、「こどもに栄養のある食事の提供」、「こどもにとって安全な環境」、「普段からこどもと関わる保育士の存在」「子育て相談」などが挙げられており、保育園だからこそ低年齢児の親子に選ばれたことがうかがえます。

2、「保育園こども食堂」事業者の8割が、事業実施により相談者が増加

「食支援事業によって相談者が増加した」と回答した事業者は、79.8%でした。食支援の利用が「困ったことを話すきっかけ」となっており、新たな相談支援の入口として食支援が有効であることがわかります。

相談の内容は、育児やひとり親家庭に関すること、親子の孤立など多岐にわたっています。

3、「保育園こども食堂」事業者の4割が、支援が必要な家庭を行政や専門機関など地域の支援へ連携

事業者の38.6%が、利用者を他の専門支援機関や地域団体等へつないだと回答しました。食支援事業によって出会うことができた心配なご家庭を、地域の中で見守り、必要な支援につなげています。

また、子育てや行政の支援など活用できる地域資源について、利用者に情報提供を行った事業者は77.2%でした。

4、「保育園こども食堂」事業者の9割が、行政との連携強化に意欲。利用者の情報共有など行政と団体間のコミュニケーションに課題感あり

9割以上の事業者が「今後も行政との連携を深めたい」と考えており、地域連携について前向きな姿勢がうかがえました。

一方で、課題として「行政や機関とのコミュニケーション不足」や「利用者の個人情報の共有の難しさ」なども挙げられており、これらの解決が行政連携強化につながると考えられます。

5、保護者支援に強みのある「保育園」が食支援をすることで、孤独や孤立に陥りやすい低年齢児の親子を地域で見守る体制へ

利用者からのコメントでは、「食事だけでなく声をかけてもらえてうれしかった」「忙しい中でも一言が心の支えになった」といった、保護者への何気ない心づかいが喜ばれていることがうかがえます。

育児や家事に追われ余裕のない保護者にとって、地域の身近な保育園が気にかけてくれているという安心感が支えとなっていることが伝わります。

「インスタントコーヒーをいただき、寝かしつけ後のひとときに飲みました。嬉しくて涙が出ました。自分で買えるものではあるのですが、いつの間にか自分のためのことは後回しになっていました。こうして誰かに支えてもらえていると思うと心強いです。もらってばかりではなく、わたしも誰かの力になりたいと思いました。」

「保育園こども食堂」の取り組みが広がるよう、自治体や企業等にも本アンケートを提供していきます。

保育園を起点とした食支援活動 事業者アンケート調査報告書
https://florence.or.jp/files/data/2025_business-survey-report.pdf
保育園を起点とした食支援活動 利用者アンケート調査報告書
https://florence.or.jp/files/data/2025_user-survey-report.pdf

※ご使用の際には、下記2点をお願いしております。 

・引用元として「認定NPO法人フローレンス」と出典の明記をお願いいたします。 

・弊会の「取材申込フォーム」に使用用途を記載の上お知らせください。

令和7年度「ひとり親家庭等のこどもの食事等支援事業」(関東甲信越ブロック)の中間支援法人として採択されました

フローレンスは、今年度、関東甲信越ブロック(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、 東京都、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県)の中間支援法人として採択されました。こども食堂やこども宅食、フードパントリーなどの活動を通じて、支援が必要なこどもを行政の適切な機関へつなげていく「見守り」を行う事業者に対して、資金助成と事業伴走を実施します。

詳細は、助成事業専用サイトをご確認ください。


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