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【事例紹介】キッチンカーで保育園こども食堂を開催!アウトリーチ型で支援を届ける「おれんじハウス反町園」

【事例紹介】キッチンカーで保育園こども食堂を開催!アウトリーチ型で支援を届ける「おれんじハウス反町園」

保育園へ来ることが難しいご家庭にも支援を届けたい

全国でじわじわと広がりをみせる「保育園こども食堂」。
食事の提供にとどまらず、保育士栄養士などの専門スタッフが、子育て相談に乗ることで悩みに寄り添います。地域のこどもや子育て家庭も利用することができます。地域住民にとって身近な「保育園」が、地域に支援の手を広げ、地域の親子を見守るという、新しい保育園のかたちです。

今回は、「認定NPO法人おれんじハウス(以下、「おれんじハウス」)」が病院へキッチンカーで赴く「アウトリーチ型」の保育園こども食堂をレポートします。来所が難しいご家庭にはこちらから支援を届けにいきたい!という先生たちの熱意から生まれたユニークな取り組みです。

▼アウトリーチとは
「外へ(out)」「手を伸ばす(reach)」という意味で、支援を求める人を待つのではなく、自ら届ける取り組みを指します。従来の施設型支援から取りこぼされることが多い人にも支援を届けられる手法として用いられています。

医療的ケア児を地域で支える「おれんじハウス」の取り組み

おれんじハウスは、医療的ケア児を積極的に受け入れる保育園を運営しています。また訪問看護や児童発達支援の事業も展開し、地域の関係機関と連携しながら障害児・医療的ケア児、その家族を支援しています。

医療的ケア児を受け入れる保育園はまだ少なく、在宅でケアを担う家族が孤立しやすいという社会課題があります。おれんじハウスでは、障害の有無に関わらず保育や子育て支援を受けられるのがあたりまえになること理念に活動をされています。

地域に開いた保育園を目指し、積極的に「保育園こども食堂」を開催してきたおれんじハウスですが、医療的ケア児の居場所作りという観点で、食堂の開催場所が保育園だけでは、利用者が限られてしまうという課題を感じていました。そこで、少しでも支援を広げたい、支援を必要としている人に届いてほしい。「園で待つだけでなく、出向いて支援を届けよう!」という思いから、キッチンカーを使っての出張型こども食堂を企画したそうです。

▼医療的ケア児とは
人工呼吸器や胃ろうなどの医療機器を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要なこどものことを指します。全国に約2万人いるといわれており、医学の進歩を背景に年々増加傾向にあります。

長期入院も多い「こども医療センター」へのアウトリーチ

今回の取り組み先は、神奈川県立こども医療センター。ここは県内唯一の小児専門総合病院で、先天的な疾患や難病のための高度医療を提供しています。他県から手術で訪れたり、長期入院するこどもも多く、親の宿泊施設や学校が併設されています。

土曜日は休診日ですが、長期入院のこどもや付き添いの家族にとっては日常の時間です。一方、病院の食堂は土日が定休日で、周囲に飲食店も少ない立地のため、面会にきた家族の食事は院内のコンビニに頼るケースがほとんど。そうした背景から、温かい食事を手に取る機会は限られているといえます。

他園の先生たちも一緒に試行錯誤

この日のメニューは、ドライカレー&有機野菜のポトフ。園で下ごしらえして、キッチンカー内で仕上げます。

食欲をそそる香りに、駐車場から病棟へ向かうご家族が足を止める姿が見られました。

配膳する先生たち

法人内の他園からも有志の保育士や看護師などが駆けつけ、スタッフは総勢10名以上。おれんじハウスのロゴにもあるオレンジの被り物を身につけるなど、明るく楽しい雰囲気で盛り上げます。チラシを配りながら通行中の方にも声をかけるなど、園の先生方の熱気が伝わってきます。

おれんじハウスのオレンジ色で装飾

看板の「こども食堂」という文字は、園のこどもたちが書いたそうです。当日は参加できなかった保育園のこどもたちの想いも背負っての活動です。

食支援とあわせて子育ての悩みにも寄り添う

食事のあとに立ち寄れる相談ブースも開設。この日のために、病院がパーテーションや机や椅子を用意してくださったそうです。医療的ケア児のご家族はもちろん、そうでない方の子育て相談にも応じ、保育士や看護師が来訪者の話に耳を傾けていました。

「出産してからすぐ入院生活が始まった」「医療的ケアを複数必要とするこどもを、どんなふうに受け入れてくれる施設があるのか知りたい」などの相談が多かったとのこと。

お住まいの生活エリアに近いおれんじハウス園を紹介したり、医療的ケアが必要なお子さんがどのように保育園で過ごしているか、実際に動画を見てもらうなど、地域での生活のイメージを持ってもらいやすいように心がけたそうです。

通路に設けられた相談ブース

病気・障害のあるこどもたちをまんなかに、地域で支える

病院の医師やスタッフの声

「保育園の先生たちが来たことで、病院がいつもとは違う空間となり、親子で楽しそうに食事をしている利用者のみなさんたちの姿を見ることができました。」

 「この病院や、病気・障害の子どもたちの事をもっと地域の方に知っていただきたいですし、この活動がこどもやご家族にも大きな支えになると思っています」

「継続して回数を重ねていくことで、もっと気軽に足を運んでもらい、気軽に相談ができるようになっていったら沢山のご家族の支えになりそう、と感じました」

利用者の声

「チラシを見て来ました。予想以上に美味しかったです。園の他のイベントにも行ってみたいと思いました」


「うちの子は時々ここに入院します。保育園には通っていますが、入院中は食事も相談先も限られてしまうので、こんなふうに温かいごはんを配ってもらいながら話を聞いてもらえたら、とてもうれしいと思います」

なかには「在園時にお世話になったおれんじハウスさんのとりくみなら」と顔を出してくださった卒園児のご家族もおり、園と地域のつながりを深める役割も果たしていました。

【おれんじハウス反町園 園長 荒井先生】

当日、利用者さんから「この場所だったから来れた。温かい食事が頂けて嬉しい」「病院だから来れた」という声もあり、病院で開催できて良かったなと改めて思いました。

初めてのことながら、ご理解とご賛同をいただき、沢山のご協力をくださった病院関係者様、ボランティアの方々に感謝し、今後もより良い活動として継続していけるように努めていきたいです

感染リスクなどの懸念を乗り越えて

「病院でのこども食堂」というアイデアは、最初からすんなり実現したわけではありません。病院という特殊な環境では、外部からの人やものの出入りが感染リスクとなるため、こうしたイベントの開催は慎重にならざるを得ません。それでも荒井園長が支援を届けたいという想いを強く持ち続け、病院との対話を丁寧に重ねることで、病院と協力する形で実施にこぎつけました。

屋外のキッチンカーとは別に、入院しているこどものご家族が病棟内で食事を受け取れるスペースを設けるなど、感染対策と利用者の利便性を両立する工夫をおこないました。

開催当日には、話をきいた医師や病院スタッフが何人も見に来て、応援の言葉をかけてくださるなど、病院側も新しい取り組みを好意的に受け止め、応援してくださいました。

今回の事例は、保育園と病院が手を取り合い実現しました。このように保育園が単独で実施するのではなく、地域の施設と連携して仲間を増やすことで、支援の輪はどんどん広がっていきます。

【おれんじハウス反町園 園長 荒井先生】

初めての取り組みでもあり、また、慣れないキッチンカーでの食事作りや、相談支援を行なえる職員の配置など、園単独ではできないことも多く、法人全体で協力して作り上げることができました。様々な活動を、横のつながりで支えてきているおれんじハウスの、チームワークの良さが発揮されてできたことだったなと感じています

「保育園こども食堂」を始めてみませんか

病院という場とこども食堂との組み合わせは、医療的ケア児や長期入院中のこどもたち、そしてその家族にとって画期的なアプローチとなりました。

困りごとを抱えるこどもやご家族へ、効果的に支援を届けたいとお考えの保育事業者の皆様には、出店場所との調整という手間はかかりますが、園を飛び出し、自ら出向くアウトリーチ支援もご検討されてみてはいかがでしょうか。

ぜひ、こうした地域の施設との連携にもチャレンジしてみてください。

わたしたちフローレンスでは、保育園こども食堂を広げるためのノウハウや助成・伴走支援を続けています。興味を持たれた保育事業者の方、地域のこどもと保護者を支える新しい取り組みを始めてみたい方は、ぜひお問い合わせください。

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