開催概要
「保育園落ちた日本死ね」が話題になってから10年が経とうとしています。待機児童問題は解消に向かっているものの、いまだに安心してこどもを育てられる世の中になっていないのか、少子化の勢いは止まらず、児童虐待や赤ちゃんの死亡のニュースが連日伝わってきます。すべての親子が安心できる世の中になるために、「保育」(※)や、妊娠期から出産後まで一貫した子育ての伴走支援がすべての親子に権利として保障されている他の国と比べると、どうして日本の政策は遅れをとってしまっているのでしょうか。
※この集会で「保育」とは、幼児教育とケアを統合したECEC、”Early Childhood Education and Care”のことを指します。以下、本記事内の「保育」も同様です。 |
「すべての親子と妊産婦を守るユニバーサルな支援の実現」に向けて改めて訴えるべく、子どもと家族のための政策提言プロジェクト、みらい子育て全国ネットワーク(miraco)、公益財団法人あすのば、認定NPO法人フローレンスの4団体は、すべての親子に「子育てケアマネ」と「保育」の保障を求める緊急集会を、4月15日、東京都内で開きました。
当日は長時間の開催にもかかわらず、一般参加者、報道関係者、国会議員の方々、100名近い方々にお越しいただき、オンラインでも多くの方にご視聴いただきました。
また、「こどもまんなか社会の実現」をミッションとしてかかげ、発足から3年目を迎えたこども家庭庁から、三原じゅん子こども政策担当大臣に激励のビデオメッセージをいただきました。今年度は加速化プランの本格実施の年として、すべてのこども・子育て世帯の支援に力を注ぎ、支援が必要なこどもや若者を支える施策の質の強化にも取り組むとお話されました。
すべてのこどもに保育を受ける権利を
フローレンスからは、代表理事の赤坂が登壇し、来年度全国で始まる「こども誰でも通園制度」を、真にすべてのこどもに開かれたものにするための提言をお話しました。

日本で保育所を利用するには保護者の就労などの要件を満たす必要があり、「保育」を受けることが「こどもの権利」として保障されているとは言いがたい状況です。
令和5年12月に制定されたこども大綱では「全てのこども・若者が、(中略)置かれている環境等にかかわらず、ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会」が謳われており、それを実行するための「こどもまんなか実行計画2024」にて「親の就業状況にかかわらない支援の充実」として「全ての乳幼児に対して、家庭と異なる環境に触れ、家族以外の多様な人と関わる機会等を提供するとともに、保護者・養育者の孤立感・不安感の解消や育児負担の軽減、親としての成長等を各家庭の状況等に応じて切れ目なく図るため、(中略)就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付を創設する」とされたのが「こども誰でも通園制度」です。 |
そのような中で始まる「こども誰でも通園制度」は、令和8年度から全ての自治体で、就労家庭以外のこどもも保育園が利用できるようになることで大きな意義があります。既に一部の地域では試行的事業が始まり、こども、親、園それぞれに良い影響があることがわかってきました。しかし、すべてのこどもに必要な支援を届けるためには課題もあるのが現状です。改善していただきたい内容を「利用時間の拡充を」「障害児や医療的ケア児も含めたすべてのこどもへ」「現場の負担軽減を」の3点にまとめ、提言しました。

妊娠期からの継続した親子への伴走支援を
今回、院内集会で「保育」とならんで提言された「子育てケアマネ」については、主催団体の一つ、みらい子育て全国ネットワークmiracoの記事をご紹介します。
「子育てケアマネなんて要らない!」の声に説明したい。私が子育てケアマネを推す理由|みらい子育て全国ネットワーク -miraco-
各分野から登壇者が提言
各登壇者のテーマは以下のとおりです。
【第一部】 「保育(幼児教育&ケア)」の保障」を全ての子どもへ!
「こども誰でも通園制度」を本当の意味で全ての子どもの権利に! (認定NPO法人フローレンス・赤坂緑)
全ての子どもへの「保育の保障」と「インクルーシブ保育」の実現 (学校法人まゆみ学園・古渡一秀)
なぜ世界では「全ての子への保育の保障」に取り組むのか (東京大学名誉教授・汐見稔幸)
ビデオメッセージ(こども政策担当大臣・三原じゅん子)
【第二部】 妊娠から伴走する「子育てケアマネ」を全家庭に!
妊娠・出産・育児をリアル経験して気づいた課題 (特定非営利活動法人manma・新居日南恵)
対処療法では減らない児童虐待に「川上対策」を今こそ (特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク・高祖常子)
東京都の伴走型支援「アーリーパートナーシップ制度」の効果と意義 (公益財団法人東京都医学総合研究所・西田淳志)
第一部・第二部総括のビデオメッセージ(元・淑徳大学教授・柏女霊峰)
与野党の政策担当者が討議
第三部では、公明党 竹谷とし子参議院議員・党代表代行にご挨拶をいただいたあと、お集まりいただいた与野党のこども政策担当者の方々で討議をおこないました。
自由民主党 長島昭久衆議院議員・首相補佐官、立憲民主党 奥村政佳参議院議員・党子ども政策部門事務局次長、日本維新の会 金村龍那衆議院議員・党幹事長代理、社会民主党 福島みずほ参議院議員・党首、れいわ新選組 櫛渕万里衆議院議員・党共同代表、日本共産党 本村伸子衆議院議員・衆院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成特別委員会委員、国民民主党 浅野哲衆議院議員・党青年局長(発言順)にご発言をいただきました。

当日の動画も配信しております。登壇者の資料や発言について詳しくはこちら。
フローレンスのとりくみ
フローレンスでは、こどもの虐待防止や親子の支援の問題に対し幅広く取り組んでおります。こうしたイベント開催の他にも、政策提言や、子育て支援領域での事業をおこなうことで、社会に解を生み出すべく活動しています。政策提言では、すべてのこどもに保育をうける権利を目指す「こども誰でも通園制度」や、こどもへの性暴力を0にするための「日本版DBS」制度の導入を実現してきました。


また、困難を抱えた妊婦さんに寄り添う「にんしん相談」「無料産院」事業をおこないながら、現場の声を政策提言に活かし、「出産等の経済的負担の軽減」なども提言し、社会全体で命を守る体制の構築を目指しています。
こうした政策提言や、社会への呼びかけといったソーシャルアクションは、皆さんからご支援いただく寄付を原資におこなうことができます。応援してくださっている寄付者の皆さん、フローレンスの活動に参加・協働してくださっている皆さん、いつもありがとうございます。
日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも全力で取り組んでまいります。引き続きの応援、あたたかいご支援をよろしくお願いします。