
神戸に拠点を構えて1周年!神戸市で実施する新しい支援の形とは?
フローレンスで実施している「ハイブリッドソーシャルワーク」の「ハイブリッド」とは、デジタルと対面、両方のメリットを活かした相談支援のことです。さまざまな理由で暮らしに困りごとを抱えている方々からの相談窓口として、2021年6月に神戸市からスタートしました。2023年11月に神戸市より正式な受託を受け、現在は「ここならチャットKOBE」という名称で、フローレンスの相談員たちが日々相談支援を行っています。

相談の入口はLINEを利用したチャットです。チャット上で相談員から情報提供をしたり、雑談をしたり、あるときは生活の相談にのったり、継続的な会話と見守りを行います。その見守りの中で相談内容やご家庭の状況に応じて対面支援に切り替える、または地域や行政の専門機関の支援につなぐなどの対応を続けています。
ご家庭内の困りごとは経済的困窮、病気、障害、こどもの教育問題など、長期化していること、いくつかの要素が入り混じって複雑化していること、実にさまざまです。それゆえ、相談員たちは日々の見守りを通して少しずつ、相談者の心を解きほぐしながら寄り添っています。
神戸市で展開しているソーシャルワーク ①ここならチャットKOBE (提供元:神戸市/運営:フローレンス) LINEでのチャットのやりとりを通して、専門の相談員が相談者に寄り添います。継続的な寄り添い、見守りを続けながら状況に応じて対面支援や行政支援などにつなぎます。2025年4月現在で登録者数は約4,000人に上ります。 ② 神戸こども宅食(運営:BE KOBEミライProject、必要に応じてフローレンス) 神戸で子育てを頑張っているご家庭を応援するために、市民や企業から食品等の寄付を募り、集めた食品等を年4回、各回250世帯に無償でお届けしています。基本は宅急便を利用したお届けですが、場合によって一部、フローレンスの相談員がお届けしている世帯もあります。 |
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対面支援を支える相談員の専門性と地域の連携
「ここならチャットKOBE」の月間やり取り件数は約650件。保健師や看護師、社会福祉士など、専門の資格を持つフローレンスのソーシャルワーカーが、それぞれの専門性を持ち寄り、チームでご相談に対応しています。さらにご相談の内容によっては、地域の支援機関や行政機関、病院、NPO、社会福祉協議会などと連携して解決にあたる場合もあります。
相談支援は、声なき声を拾うための日々の継続した活動も大切ですが、そうした「線」の支援と、ご相談に対して多角的にアプローチし、支援の幅を広げる「面」の支援活動もまた、不可欠なのです。
そのような背景から、神戸市でソーシャルワークを発展させるための拠点として、フローレンスでは2024年6月に認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸さんが運営する「地域共生拠点・あすパーク」の中に、神戸市内での拠点となるサテライトオフィスをオープンさせました。オフィスのオープンから1周年。神戸の地で、さまざまなつながりが構築されました。

サービス利用者にポジティブな心情変化も
「ここならチャットKOBE」のサービス開始から1年が経過した2024年12月~25年1月にかけて、フローレンスでは利用者アンケートを実施しました。
・アンケート名:ここならチャットKOBE 利用者満足度アンケート ・実施期間:2024年12月25日~2025年1月7日 ・対象者:ここならチャットKOBE 利用者 ・回答数:163名 |
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「ここならチャットKOBE」の利用をきっかけに、回答者の約48%の人が行政や地域の支援サービスの利用につながるなど、多くの家庭にとって、「支援の入口」として機能していることが明らかになりました。

そして相談の結果、「社会とのつながりが感じられるようになった」、「悩みを気軽に相談できるようになった」、「孤独感が解消できた」といったポジティブな心情変化があったとの回答が67%に上り、孤独孤立の解消に一定の成果を出せたこともわかりました。
「対面」によって支援の手を広く、遠く広げることができる
LINEでの相談は、利用者の心理的ハードルを下げる意味で非常に有効ですが、支援者としてもっとも大切にしていることは、利用者との対面でのつながりです。神戸に拠点を設けて1年、利用者を招待したイベントや一部ご家庭への食品のお届けを通して、顔の見える関係の構築にも努めてきました。
①スシローまんぷくチケットの提供(2024年8~9月)
フローレンスで運営する事業「こども冒険バンク」(さまざまな事情により体験が不足しがちな家庭が、企業などが無料で提供した体験コンテンツを自由に選び申し込みできるプラットフォーム)でもご協力をいただいている(株)FOOD & LIFE COMPANIESさん。夏休みにかかる8~9月に全国のスシローで利用できるクーポンのプレゼントを実施しました。
「神戸こども宅食」登録家庭のうち、抽選制の食支援を一度も受けられていない約4,000世帯を対象に、申し込み抽選制で「スシローまんぷくチケット」をプレゼント。「物価が上がって1年以上外食をしていない」、「お米の高騰で満足に食べれていないので(こどもに)好物のお寿司を食べさせてあげたい」……。そんな切実な声が多く届きました。当選者からは「こどもとの外食は数年ぶりなので楽しみです!ありがとうございます」「好きなものを好きなだけ食べられて幸せだったと言っています!」など、喜びの声がたくさん届きました。
②「えほんと楽しむクラシックライブ」(2024年10月)
メットライフ生命さんにご協力いただき、年間100万人の人々と感動を共有することを目的に行われている「100万人のクラシックライブ」に、「神戸こども宅食」利用中の13世帯のご家族をご招待しました。
③「がん検診クーポン」配布(2024年12月)
公益財団法人「日本対がん協会」のご協力で、無料でがん検診を受けることができるデジタルクーポンを提供いただき、「ここならチャットKOBE」利用者のLINEでクーポンを周知しました。利用者の皆さんを「医療機関」という対面機関につなぐことも、「ここならチャットKOBE」の大切な支援です。
④神戸こども宅食「親子でいこーべ (KOBE)!秋のハッピーギフトフェア」(2024年11月)

フローレンスが主催し、BE KOBEミライPROJECT、神戸市こども家庭局こども未来課などと協力して親子イベントを開催。神戸こども宅食ご利用家庭 ・神戸市在住の子育て家庭でお申し込み者の中から、抽選で350世帯をご招待しました。対面イベントならではの子育て相談ブースが設けられたのはもちろん、レゴのあそび場、ゲームコーナーでお子さんたちに楽しんでもらうことができました。クリスマスが近かったこともあり、プレゼント品とお菓子の配布も行い、参加者に喜ばれました。
⑤わくわくドキドキ!ランドセル配布で新生活応援イベント(2025年5月)

24年11月に実施した④のイベントに来場してくださった神戸市長田区社会福祉協議会さんにご協力いただき、実現したイベントです。フローレンスの寄付企業としてつながりのあるコストコさんに新品のランドセルのご提供を受け、翌年から就学予定のお子さんへプレゼントしました。事前に色の希望を伺った上で、「どの色が当たるかは当日のお楽しみ!」ワクワク感満載の配布会となりました。
もちろん、当日は地元に詳しいフローレンスの相談員が会場で待機。コミュニケーションをとりながら子育て相談も実施。就学にまつわる不安や悩みなどを直接うかがう場を設けました。今回は神戸市長田区社会福祉協議会さんのお声掛けで集まった方々へのイベントとなりました。また、イベント会場は地域の方が運営する「福祉カフェ」をお借りしたことにより、地域へつながる機会ともなりました。相談コーナーでは、「ここならチャットKOBE」のご紹介も併せて行いました。
◎参加したご家庭の感想
Aさん
ランドセルは高額で生活費を圧迫するのでとても助かりました。またこどもも喜んで嬉しかったです。ありがとうございました。
Bさん
まさかランドセルが当選すると思わなかったのでびっくりしました。いただいたランドセルはとても可愛くて、軽くて、使いやすそうです。
お話を聞いてくださったり、皆さんとてもフレンドリーで話しやすかったです。こどもともたくさん遊んでくださり、とてもいい時間になりました。
◎神戸市長田区社会福祉協議会さんの感想
今回このようなお話をいただいて、どういう支援の可能性があるか考える機会をいただきました。
ランドセルをきっかけに、長田区全域の保育園園長とつながることができ、未就学児家庭とのつながり、園長も協力的でした。園からは、良い取り組み、協力したいという声もありました。
また今後もご一緒できれば、神戸市全体のいろんな場で発信していきたいです。 (長田区社会福祉協議会さん) |
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支援体制を地域全体で厚く、強くしていく
神戸での事業展開を始めて4年、拠点を設けて1年。デジタルでの相談を入口にしながらも、わたしたちが支援を継続していく上で最も大きな力になっているのは、やはり「人」とのつながりです。今回ご紹介した地域とのつながり、協働先とのつながり、利用者との直接の関わりの中で、支援者同士では新たな連携を生み、利用者の方々のニーズに対応してこられたという実感があります。
今後も神戸市という土地に根ざしながら、地域団体との連携をさらに強化していきたいと願っています。そのためには、行政、企業、民間など、セクターが異なっていたとしても、支援を届ける者同士で地域の子育ての課題について情報共有をしたり、新しい連携の形を探っていくことが不可欠です。
共に支援を強化してくださる地域団体の皆さんとともに、日本全国に展開できるような新しい協働のロールモデルを創出していきたいと思います。