この夏、わたしたちは初めての取り組みとして、ひとり親家庭へ「おやこエール便」をお届けしました。
届いたご家庭からたくさんの感想が寄せられる中、ある中学生の女の子の言葉が目に留まりました。
「自分たちのことをちゃんと考えてくれている人がいるんだと思い、きょうだいみんなで喜んでいます。」
最初は「届けたかった思いがちゃんと届いた」とうれしく読みました。
けれど何度も読み返すうち、少し違う気持ちが湧いてきました。
「自分たちのことを考えてくれている人がいる。」
自分が中学生だった時、そう感じることがあっただろうか?
思い当たる記憶はない。
一人の中学生が、こう心の内を語ってくれる、それは一体どういうことなのか・・・
そもそも、おやこエール便とは
夏休みは給食がなくなり食費や光熱費が増えるなど、ひとり親家庭の負担が重なる時期です。「自分が倒れたらどうしよう」という緊張感の中で過ごす親御さんも多く、フローレンス独自で実施したアンケートでは99.4%がこどもに「申し訳ない」と感じることがあると答えました。
だから、おやこエール便は、食品だけでなく、日傘や日焼け止めなどのケアアイテム、おもちゃも同梱し、企業や周囲の方々と協力して200世帯へ届けました。

なぜ食品だけに限定しなかったのか。
それは、以前お話を伺ったお母さんたちの言葉が忘れられなかったからです。
あるお母さんは、かつて行政の窓口で「それくらい自分でなんとかできないんですか」と言われた気がして頼ることが怖くなったと話してくれました。窓口の方に悪気があったわけではなく、余裕のない支援の仕組み自体が意図せず人を傷つけてしまうことがあるのだと思います。
一方で、こんな話をしてくれたお母さんもいました。
「近所の人が『こども見ててあげるから、ちょっと休んでなよ』と言ってくれた」
「大家さんのおばあちゃんが『何かあったら言ってね』と声をかけてくれた」
置かれた状況の厳しさは変わらなくても、誰かに気にかけてもらえているお母さんはどこか安心して、前を向いて笑えていました。
お話を聞いて感じたのは、「自分を気にかけてくれる人がいる」「頼れる人がいる」という実感が、人を支えているということです。
大変な状況にあることと、その大変さを一人で抱え続けることは違います。
だから箱の中には、必要なものに加えて、「あなたのことを思って選びました」と伝わるものを入れたいと思いました。日傘や日焼け止め、おもちゃは、そのためのものです。
200箱と、1,200世帯
ただ、寄付をお預かりし支援を届ける担当者として、今回あらためて突きつけられた数字があります。
200世帯の募集に対し、1,200世帯近くからの応募があったのです。
応募フォームには、さまざまな声が寄せられていました。
給食のない夏休み、お昼ごはんをお腹いっぱい食べさせてあげられるか心配だという声。
1日1食の日もあるという声。
「こんなのしか準備できなくてごめんね」という声。
生活に余裕がなく、つい常にイライラしてしまう、という声。
ーーけれど、届けられるのは200世帯だけ。
お届け先は抽選で決まりました。
届けることができなかった約1,000世帯を思うと、自分のやっていることの小ささを感じずにはいられませんでした。
段ボール一箱で、家庭の状況が大きく変わるわけではありません。
それでも、あの中学生の言葉は、箱の中身以上のものが届いていたことを教えてくれました。
だから、200箱を届けて終わりにはしません。この一箱を、ゴールではなく最初の一歩にしていきます。
「自分は大切にされている」、こどもが確かめなくても、そう思って過ごせる社会にしたい。
寄付者の皆さんとご家庭のあいだに立つ担当として、物やお金と一緒に、「あなたのことを考えている人がいます」ということも届けていきたいと思っています。
そしていつか、こどもたちが、あの言葉をわざわざ書かなくてもいい日が来ることを願って。
書いた人 レー クイ

認定NPO法人フローレンス寄付担当。
飲料メーカーで商品開発を経験後、2022年入職。
ベトナム生まれ、日本育ち(8歳で来日)。
一男一女の育児に奮闘する毎日を送る。
ビールと餃子を愛し、毎晩のストレッチで一日の疲れをリセットするのが日課。


