家具の組み立て説明書って、最初のページに、2人が並んで板を見ているイラストがありますよね。
「2人で作業してください」

あのイラストを、わたしはこれまで何度も見てきました。
でも、なんとも思っていませんでした。ひとり暮らしが長くて、ひとりで組み立てるのがあたりまえだったので、「はいはい」とページをめくって、あれこれ工夫しながら、なんとか組み上げていました。
それが最近、久しぶりにあの説明書を開いたら、目に留まったんです。
「あ、これって2人前提なんだな」
フローレンスの中に、ひとり親家庭のことを考えて発信する小さな編集部ができて、わたしもそこで企画や記事をつくるようになったからです。
そういえば、2人前提のものって多いのかも
一度気になると、ほかにも思い浮かびます。
家具の組み立てのほかに、子育てのまわりにも、同じ前提が見つかります。
平日の昼間にしか開いていない窓口。こどもが熱を出したときの、「お迎えは何時になりますか」という電話。どれも、平日の昼間に動ける大人がもう一人いることを、どこかで前提にしています。
でも、ひとり親家庭は、決して珍しい存在ではありません。この約40年で、ひとり親世帯は約92万世帯から約134万世帯へ、約1.5倍に増えています。
ひとり暮らしの世帯も、いまや全体の4割近くになりました。
家族のかたちは、もうずいぶん変わってきています。それでも、2人前提のしくみは、まだあちこちに残っています。
人を増やそう、ではなくて
じゃあ、足りない1人を補えばいいのか、というと、たぶんそうではありません。
2人いても、2人とも手が離せない日はあります。インフルエンザは家族を順番に回っていくし、同じ日に2人とも倒れることもあります。
ひとり親のあるお母さんのお話を聞いたとき「ひとり親だと逃げ道がないじゃないですか」と話していました。
でも、そのお母さんは、地域のファミリー・サポート・センターを利用して、月に1回、こどもを見てもらう日を自分で決めていたそうです。その日があると、張りつめていた気持ちが、少しゆるむ。こどもも「楽しかった」と帰ってくる。
必要なのは、人の数よりも、「困ったら頼れる」というあてではないでしょうか。
わたしは、これを「頼りしろ」と呼んでみたいと思っています。「伸びしろ」、の「しろ」です。困ったときに、誰かや何かを頼れる余地のこと。
あのお母さんに、月に1回の逃げ場があったのは、お母さんが「頼ろう」と決めたから。そしてもう一つ、引き受けてくれる人と、そのためのしくみが、地域の側にあったからです。頼る側と、引き受ける側。両方がそろって、頼りしろははじめて働きます。
それに、頼りしろがあった方がいいのは、ひとり親家庭だけじゃないはずです。大人数の家庭にも、ひとり暮らしの人にも。頼りしろのある社会なら、みんなが少しずつ楽になれるように思うのです。
わたしの持ち場で
組み立て説明書のあのイラストは、たぶん親切で描かれています。ひとりでやると危ないから、2人でやってね、と。
でも、社会の側の説明書は、まだ「2人でやってね」のままです。
わたしは広報の仕事で、案内文や記事を書いています。小さな説明書を書いている側です。ひとり暮らしのころに気づかなかったように、わたしが書いたものにも、まだ2人前提がまぎれ込んでいるかもしれません。
だからまずは、自分の持ち場から。わたしの手元にある説明書を、少しずつ書き換えていこうと思います。2人でも、1人でも、途中で人数が変わっても、ちゃんと組み立てられる。 頼りしろのある説明書に。
あなたのまわりにも、「これも2人前提だ」と感じるものはありますか。よかったら、教えてください。
書いた人 清野 友花(せいの ゆか)

認定NPO法人フローレンス広報。メーカー系商社で人事を経験後、2019年入職。
フローレンズラジオのパーソナリティを担当。こどもを持たない当事者としての視点を大切にしている。図鑑を読むのが好き。


