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アクション最前線

2016/11/29

11月は児童虐待防止月間~誰にでもできる「虐待ゼロ」への第一歩を考える~

 


塚原先生

みんなで社会変革事業部の奥村です。残り少ないですが11月は児童虐待防止月間。フローレンスでは、子どもの虐待死をなくすための事業として「赤ちゃん縁組事業」を行っていますが、今回はフローレンスで働きながら、プライベートな時間を利用して「子どもの虐待」問題にアプローチしているフローレンススタッフを紹介したいと思います。

「おうち保育園」で働く塚原萌香は新卒2年目の保育士です。彼女は現在「おうち保育園」での勤務のかたわら、NPO法人PIECESでコミュニティユースワーカーとして活動しています。PIECESでは、児童精神科医やソーシャルワーカーなど専門的な知見を持ったコアメンバーが普通の市民をコミュニティユースワーカー(CYW)として育成し、虐待や貧困など困難な状況にある子どもたちと社会の関係をつなぎ直していくという取り組みを行っています。塚原はこのCYWの一期生として、10代でママになった女性の支援を行っています。

虐待防止や要支援家庭のために一人ひとりができることは何か、彼女のインタビューを通じて探っていきたいと思います。


虐待を受けても「お母さんに会いたい」

私が保育士を目指したのは、子どもが好きなことはもちろんですが、保護者のサポートをしたいという思いがあったからなんです。保護者支援をしたいという人は周りにあまりいないんですが、私自身が親子関係で悩んでいたことや、学生時代の経験が影響していると思います。

私は学生時代、児童養護施設でアルバイトをしていて、週4日、1日8時間ぐらい子どもたちと関わっていました。親から虐待を受けた子どもたちがそれでもなお「お母さんが大好きで早く会いたい」と言う様子を見て、本当に親子関係は思い通りにならないものだなと実感しました。それを見ていたら、親御さんの精神的な悩みに寄り添う存在になりたいなと思うようになったんです。そんな中、とあるイベントで(PIECESの代表である)小澤いぶきさんを知ってからPIECESの活動はウォッチしていましたが、CYW一期生募集の情報を見て、本業である保育士以外にも保護者支援に関わりたいと思い、応募しました。

―10代のママの精神的なサポーターに

CYWの活動では10代のママをサポートする活動をしています。職場である保育園で出会う親御さんももちろん悩みを抱えていると思いますが、10代のママは人とのつながりが希薄であったり、自身が虐待を受けて育ったり、貧困だったり、複数の課題を1人で抱えやすい状況にいます。何か私にもできることがあればという思いでした。

CYWとして活動しているのは私を含めて計8人いますが、学生もいれば社会人歴の長い人、一般企業に勤めている人もいます。CYWの特徴としては、地域で出会う子ども一人ひとりにあった必要な関係性を作っていくことです。そして、チームメンバーそれぞれの特性を生かして、チームならではの支援を作り出していくことです。 そのためには、あらかじめ用意した研修を受け、現場ですぐ実践する……というのではなく、目の前の子のために身につけておかなければいけないことは何か、自分たちにできること、自分たちが学ばなくてはいけないことは何か、を日々の活動を振り返りながら模索していきます。 CYWの活動の特徴に合わせて育成プログラムをゼミ形式で行います。

10代のママへの活動では高卒認定のための勉強を教えたり、生活面のサポートをしたり、様々な面からサポートしています。私は精神的なサポートを大切にし、悩み事の相談に応じたりしています。保育士としての目線しか持っていないけれど、安心できる同性の相手としてサポートできたらなと思っています。

―10代ママとの関わりが仕事にもプラスに

私が関わっている10代で妊娠した女性たちの多くは、虐待や裏切りなど、さまざまな壁を乗り越えてきた人たちです。私には想像もつかないほどの苦労を重ねてきた彼女たちを本当に尊敬しているし、パワーをもらっています。

私自身にも変化がありました。例えばCYWで関わるママたちの中には約束時間に遅れる人もいます。今までの私は、それが許せなくてモヤモヤすることも多かったんです。でもそれは自分の中でのルールなのであって、価値観が固定されているんじゃないかと考えるようになりました。それは誰と接するときでも同じですよね。

この変化は本業である保育士の仕事にも影響があって、保護者とのコミュニケーションにいい意味で緊張がなくなってきました。新卒ということもあり、「何か話さなきゃ」から「聞こう」という姿勢になってきました。もともと、家庭でのコミュニケーションまで視点を持った保育士になりたいと思っていましたし、保育園で子どもが不安定な様子であれば、親御さんの様子も気にかけて声をかけるようになりました。

誰にでもできる一歩があるはず

今回私はCYWという立場で子どもたちに関わっていますが、子どもとの関わり方は本当にさまざまだと思います。
CYWの活動を通じて実感するのは、色んな大人がいるように、子どもたちのタイプもいろいろで相性があるということ。その人だからこそ関われることがあると感じます。
私自身も日々悩みながら、ソーシャルワーカーなど専門的な知識を持つ人とつながり、子ども達と関わっています。専門的な立場からCYWのような支援者をさらに支援するような関わり方も一つかもしれません。子ども達の可能性を広げる一助となるような場を一緒に作っていくことができたら嬉しいです。


おうち保育園で保育士として働くかたわらリスクの高い10代ママへのサポートを続ける塚原。

誰もがゼロにしたいと願う「児童虐待」ですが、実際に何か行動を起こすのは勇気がいることかもしれません。しかし、塚原のように課題に気づいた時から情報に触れるアンテナを少しだけ高くしておいたり、自分に何かできることはないか機会をとらえて参加してみる、というのは誰にでもできることではないでしょうか。

児童虐待防止月間の11月は間もなく終わってしまいます。しかし、「月間だから」というのではなく私たち一人ひとりがこの問題に対して意識をつねにもち、「自分にできる解決方法は何か」を考えていければと思います。


フローレンスでは、赤ちゃんの虐待死をなくすための「赤ちゃん縁組事業」をはじめ活動をサポートしてくださるマンスリーサポート会員を募集しています。

書いた人:奥村 康子