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アクション最前線

2017/08/14

「小1の壁」は #医療的ケア児 にもある。就学を阻む2つの問題

  


先日、医療的ケアが必要な「医療的ケア児」もお預かりする「障害児訪問保育アニー」の保護者会が開かれました。

医療的ケア児は、親や看護師による医療的ケアが必要なため、通常の保育園への入園が難しい問題があります。
障害児訪問保育アニーでは、看護師による訪問看護や、専門の研修を受けたスタッフによる保育で、医療的ケア児の長時間のお預かりを実現しました。

障害児を持つ母親の常勤雇用率はわずか5%と言われていますが、アニーに預けることで、お母さんたちは就労を続けることができました。

しかしアニーを利用するお母さんたちが今非常に悩んでいることがあります。

それは、就学についてです。

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医療的ケア児が「普通に学校に行けない」2つの壁

医療的ケア児は、学校に「普通に」は通えません。そのため、親(母親)は就労を諦めなくてはいけません。

医療的ケア児が普通に特別支援学校や小学校に通うためには、大きく2つの壁を乗り越えなければなりません。

(1)「親が付き添え」の壁

学校への送迎バスには看護師がいません。そうすると医療的ケアに対応できず、送迎は親がやることになります。

学校自体にも看護師が足りず、授業中の医療的ケアは親がやってください、と言われます。

その上、学校に看護師がいたとしても、看護師ができる医療的ケアに限りがあり、親が付き添ってください、となってしまうのです。

どちらにせよ親の付き添いが求められることになってしまいます。

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(2)「放課後デイが医療的ケア児預からない」の壁

障害児の学童保育である、放課後等デイサービス。この放課後等デイサービスで、医療的ケア児を預かってくれる施設はとても少ないです。

23区だったら、無い区の方が多く、あっても2つ。しかも週5日フルでは使えません。

医療的ケア児の就学に、なぜこれほどまでに壁が?

(1)の「親が付き添え」の壁の主な理由は、「看護師が十分におらず、医療的ケアができない」ということです。

しかしそれだけでなく、看護師がいても、看護師が医療的ケアをやらない/できないことで、親の付き添いが求められるケースもあります。

例えば東京都立の特別支援学校では、看護師がいても、呼吸器は作動確認しかできず、その管理は親に任せられています。

これは「昔からのルールで、そうだった」からですが、現場のナースでも医療的ケアには抵抗が強いのが実情。

その背景には、ナースがドクターの指示なく、自らの判断で医療的ケアを行うという文化が一般的でないこと、学校に研修などの十分なサポート体制がないこと、何かあった時の責任を誰が取るのか、というところで法的に守られていないように感じること……と、複合的に絡まった要因があります。

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次に、(2)の放課後等デイが医療的ケア児を預からない理由はどうでしょうか。

これはシンプルで、医療的ケア児を預かる財務的なメリットがないからです。

医療的ケア児は看護師や手厚い配置が必要にも関わらず、一般の発達障害児等と同じ報酬単価しか事業者に支払われません。

よって、医療的ケア児を預かっても財務的なメリットがない、もしくはデメリットが発生する(赤字になる)ことで、預かりたくても預かれない、という事態になります。

どうやって就学を阻む壁を壊すか?

まずは「親が付き添え」問題の解決策です。

以前から主張していたのが、今は家に限定されている訪問看護師を、学校に訪問できるように規制緩和させようよ、というものです。

実際に国家戦略特区の案件として提案され、検討が重ねられてきましたが、加計学園問題によって国家戦略特区は完全にストップしており、この改革も止まっています。

ではどうしたら良いでしょうか。実は、東京都が鍵を握っています。

東京都下の特別支援学校のほとんどは都立です。小池都知事が、「(医療的ケア児の)母親解放宣言」を発し、付き添いしなくても良い体制を取るよう、都の教育委員会および都立特別支援学校に命じれば良いのです。

教育委員会及び特別支援学校は、古い内規を見直し、医療的ケア児の通学を保証。看護師を増員すると共に、在宅診療医にがっつりとサポートしてもらい、医療的ケアを行なった際の事故の責任は都が取ることを明言。現場の不安を払拭し、研修等のサポートを増強します。

都で成功モデルができれば、全国の道府県も変わらざるを得なくなるでしょう。

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次に「放課後デイが預からない」問題の解決策です。

これはシンプルです。医療的ケア児を預かった時には「医療的ケア児加算」が支払われるようにすれば、医療的ケア児を預かってもペイするようになるので、放課後デイは医療的ケア児を預かるようになっていくでしょう。

報酬単価改定のタイミングは来年4月。医療的ケア児加算を創るか否かは、今年中に決まります。

厚労省が財務省を説得し、医療的ケア児加算を創設する。そうすれば、全国で医療的ケア児の放課後問題が解決し、医療的ケア児の親(特に母親)の就労が可能になってきます。

当事者と、当事者以外が声をあげること

来年4月から始まる報酬改定を後押しするには、一にも二にも世論です。

社会保障全体がマイナス改定の中、予算は取り合い、奪い合い。

そこで、今まで何もサービスがなかった医療的ケア児、それによって制度と制度の間に落ちた医療的ケア児家庭を助けるには、医療的ケア児加算が必要だよね、という共感の声を、どれだけ広げられるか。それがポイントになります。

全国のNICU・産科医療関係者の皆さん、医療的ケア児の保護者の皆さん、それ以外にも関心のある皆さん。

みなさんが声をあげ、一人でも多く、この医療的ケア児の問題を知る人を増やし、それが余波として一人でも多く政府関係者の方々に伝わるように。

年末までのこの約5ヶ月が、まさに正念場であり、天王山の時となるのです。


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