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2016/09/27

【社会起業のレシピ】vol.11「現場の声に耳を澄まそう」

  


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現場が教えてくれること

今回から2回にわたって、ソーシャル・ビジネスプラン、つまり事業計画書を作成するノウハウを見ていきたい。事業計画書を作成するにあたって欠かせないのが、実際に現場に行き、そこにいる人たちの声をたくさん聞くことである。実際に現場を経験し、そこに関わるさまざまな立場の人から話を聞くことで、問題の「構造」が把握できる。構造が見えてくれば、問題解決のための「仮説」も見えてくるだろう。

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四半期に一度行う全社会議では、スタッフとともに問題解決のワークショップに参加する

逆に、現場の声をロクに聞いていない状態では、問題の構造を見誤りかねない。そこから生まれる解決策は、とうてい実現できないものだったり、誰の助けにもならないものだったりということが多い。そうした事態に陥らないためにも、なんといってもまずは、現場に入り、そこでさまざまな人の声に耳を澄ますことである。今回は、そのための具体的なノウハウについて述べる。

「肩書」を作って、現場に入る

まず「現場」とは、どこか、である。それは、あなたが「力になりたい」と思っている人たちのいる場所である。たとえば、児童虐待に取り組むのであれば、乳児院や児童養護施設、児童自立支援施設などが現場となるだろう。そうした施設に「見学」や「ボランティア」といった形で入り、当事者である子供たちや、彼らの支援スタッフや行政の担当者など周辺にいる人々、さらには、可能ならば、虐待している親自身などの話を聞くのである。

とはいっても、「現場の声を聞く」は、言葉で言うほど簡単ではない。見学やボランティアでの参加をお願いしても、「うちは見学やボランティアは受け入れていない」と断られてしまうことが多いのだ。僕自身も最初のうちはそうだった。現在の病児保育を知るために都内の病児保育施設に片っ端から電話をしたが、「なんなの、この人?」と怪しまれ断られまくり。それでも、「ここでくじけてはいけない」と、どうすれば断られないかをあれこれ試した。そこで、ある方法にたどりついた。「怪しまれない肩書」を使うのだ。その当時、僕はラッキーにも、「慶應義塾大学の研究員」という立場をもらえていたので、それを名乗ることにした。すると、「でしたら、どうぞ」と、見学などのアポがスンナリ通るようになったのだ。肩書、恐るべし!である。これといった肩書がないからといって心配することはない。方法はいくらでもある。たとえば、ボランティアサークルに所属する、大学などの社会人講座に通う、自治体の民生委員になる、地元の勉強会に参加する……などである。

目標は、100人ヒアリング

「怪しまれない肩書」を駆使してうまく現場に入ることができたら、そこに関わるいろいろな人から話を聞いていくことになる。当事者はもちろんのこと、その周辺に放射状に存在する人たちにまで手を伸ばし、話を聞きまくる。さらに、ある程度知り合いができたら、グループヒアリングを行ってもいいだろう。当事者やその周辺の人など数人に集まってもらって話を聞くという方法だ。

一堂に会せない場合は、スカイプヒアリングという方法もある。最近は、SNSヒアリングといって、フェイスブックやツイッターなどのSNSで、「○○についてどう思いますか?」という問いを発する方法もよく行われる。すると、当事者の人からいろいろな意見を聞くことができる。こんな具合に、さまざまな方法を使って現場の声をたくさん拾っていく。理想は100人の人から話を聞くことだ。そこまで聞くと、その領域についての現場感を相当持てるようになってくる。

虫の目、鳥の目で、現場を知る

この方法はいってみれば「虫の目」での情報収集である。つまり、地を這(は)うようにして情報を集めていく方法だ。物事の構造を的確に把握するには、これだけでは十分とはいえない。「鳥の目」で見ることも必要だ。物事を俯瞰する視点である。その「鳥の目」にあたるのが、文献を使っての情報収集である。現場で「これって何だろう?」と思ったら、どんどん関連する本にあたる。ネットを活用し、気になるキーワードをググって、ネット上の論文や記事などをチェックしていく。そうした作業をヒアリングと同時並行で進めていくのである。文献にあるときには、一冊一冊をすべて読む必要はない。ネット上の論文などもすべて読む必要はない。気になるところだけ、どんどんつまみ読みしていくという方法がお薦めだ。

現場経験が、心に火をつける

このように「虫の目」と「鳥の目」の両方から問題を見ることで、問題の構造が見えてきて、現在、どんな課題を抱えているのかが浮き彫りになっていく。さらに、その課題を解決するためには、こういう事業があればいいのではないだろうか、という仮説も導き出しやすくなる。

これらの作業の効果は、それだけではない。僕が経験したのは、心に火がつく、ということだ。「やっぱり僕は、この人たちの力になりたい!」という思いが湧き出てくるのだ。とくに現場での経験は強烈な原体験となる。そして、その思いが、今後、ソーシャル・ビジネスを立ち上げ、続けていく際の、大きなモチベーションとなってくれるのだ。

その意味でも、現場の声に耳を澄ますという作業は、NPOやソーシャル・ビジネスを立ち上げたいと思う人には欠かせないのである。次回は、現場のヒアリングで導き出した仮説を、どうソーシャル・ビジネスプランに落とし込んでいくのかについて見ていく。


>>【vol.12「ソーシャル・ビジネスプランをどう描くか」】に続く

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書いた人:駒崎 弘樹


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