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インタビュー

2016/03/10

駒崎弘樹×宮崎真理子インタビュー「志を共にする仲間と共に、目指す社会に向けて進みたい!」

       


「病児保育」-保育業界が長年抱え続けてきたこの問題に、駒崎が挑戦することを決めて早10年。その間フローレンスは、病児保育問題はもちろんのこと、待機児童問題、障害児保育問題、赤ちゃんの虐待死の問題など、「親子の笑顔をさまたげる」さまざまな社会問題の解決に挑んできました。

そんなフローレンスが、創業以来大切にしているのが「人」。駒崎は言います。

「僕がよくメディアに出ているせいもあり、ともすると『フローレンス=駒崎』と見られがちです。確かに外からはそう見えるかもしれない。でも本当に大切なのは、その土台となっている『人』であり『チーム』なんです

400人規模という、NPO業界において未知の領域に突入したフローレンス。フローレンスのこれから、そしてその将来をともに形づくっていくであろう仲間たちについて、代表理事・駒崎とディレクター・宮崎が語ります。


 「いろんな家族の笑顔」を夢見る新たなビジョン

 

---フローレンスも創業から10年を超え、2015年、組織のアイデンティティとも言える「ビジョン」を変更するという大きな決断を下しました。ここには、どのような想いが込められているのでしょうか。

駒崎:フローレンスは2004年、病児保育問題の解決を目指す組織としてスタートしました。

いまでは、約5,000名の会員にご利用いただくまでに成長し、「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」をいただくなど、各方面から評価していただいています。

しかし、自分自身にも子どもができ、病児保育に長年携わっていくうちに、他にも色々な課題が見えてきたんですね。「あれ、まだまだやんなくちゃいけないこと、いっぱいあるじゃん!」って。たとえば、いま世間を賑わせている待機児童問題であったり、重度の障害を抱える子どもの保育の問題であったり、残念ながら、「親子」「家族」という観点で考えてみると「まだまだ問題は山積み」というのが、いまの日本の状況なわけです。

宮崎:今回のビジョンの変更には、「病児保育」だけでなく、この「山積みに残されている問題」の解決にもフローレンスは挑戦していくんだ、そんな私たちの想いが込められています。

これまでのビジョンは、病児保育のみを念頭に置いたものでした。そこで、より範囲を広げ、フローレンスは「いろんな家族」の笑顔を応援していくんだ、という決意表明として新たなビジョンを作ったというわけです。

駒崎「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」 このビジョン、社員みんなでワイワイ言いながら作ったんですけど、個人的には結構気に入っています。

 

フローレンスは「道なき道」を開拓する「ジープ」

 

---「ビジョン」というものは、その組織の向かうべき方向性を示すものです。そういった意味では、フローレンスはビジョンを変えることで、大きな転換点を迎えたとも言うことができます。フローレンスはこの新たなビジョンを掲げ、今後どのような方向に向かっていくのでしょうか?

駒崎:それに答えることは正直難しいです。なぜなら、われわれが進んでいる道は「道なき道」であるから。

フローレンスは、おかげさまで400人規模の組織となりました。それは大変ありがたいことではあるのですが、よくよく考えてみると、日本においてそんな規模のNPOは他にありません。つまり、われわれが今後どのような姿になっていくべきか、そのお手本は存在しないというわけなんですね。

一般的な組織が「電車」であるとするならば、われわれは「ジープ」であると言うことができます。

---「ジープ」って、あのなんかゴツいやつですか?(笑)

駒崎:そうです、そうです。あのゴツいやつです。

電車は線路というものが元から整備されていて、行き先は決まっています。あとは快速か、鈍行か、など、決められた目的地へ「どう行くか」ということを決めるだけです。

一方でわれわれは、360度道が整備されていない荒れた土地で、「じゃあ、どこに行くんだっけ?」というところから始めなくてはなりません。まさに「道なき道」を行くわけです。

宮崎もしかしたら「ジープ」ですらないかもしれないですね。突然川にぶつかって「いかだを作らなくちゃ!」みたいなこともあるでしょう。

 

---もうなんでもアリですね(笑)

 

宮崎:でも、ほんとそうなんです。何とかして自分たちで創り出していかなくちゃならない。

フローレンスは、それまで誰も解決することのできなかった社会問題、つまり未知の領域に挑戦していく組織であるので、向かうべき方向性を自ら考えていかなくてはならないんです。そうした傾向がここにきて、さらに色濃くなってきているんじゃないかと思いますね。

1年先、2年先ですら、どうなっているか分かりません。ですが、その「よく分からなさ」はネガティブなものではない。「どうにでもなれる」からです。それはそれで楽しみたいですし、それを楽しめる人と一緒にやっていきたいですね。

駒崎弘樹×宮崎真理子

 

道のりは、まだ半ば。解決しなくてはならない問題は山ほどある

 

---常に「道なき道」を開拓し続けてきたフローレンス。フローレンスがこれまで積み重ねてきたものを自己評価するならば、どのようなものになるのでしょうか。

駒崎まだまだ全然ですね。道半ばもいいところです。

---そうなんですか? 意外です。フローレンスは、日本でも最も成功しているソーシャルベンチャーの1つだと個人的には思っているのですが……

宮崎いえいえ、私たちは決して現状に満足はしていません。さきほど新しいビジョンのお話をさせていただいた際にも触れましたが、まだまだ解決しなくてはならない問題は山ほどありますからね。

しかし、あえて言うならば、「方程式」のようなものがやっと見えかけてきたかな、という段階だと思います。

---「方程式」ですか。

宮崎誰も解決することのできなかった社会問題を解決する「パターン」と言ってもいいかもしれません。

代表的なのは、いま世間を賑わせている「待機児童問題」と、その解決方法としての「小規模保育」です。

待機児童問題は、原則20人以上定員の保育所でないと行政に認可されないというところに、その原因がありました。

それに対して私たちは「小規模保育」という「解」を提示し、その成功モデルをもとに国に働きかけることで、法律そのものの作成にまで携わることができました。2015年4月からスタートした「子ども・子育て支援新制度」では「小規模保育」は新たに行政の認可事業となり、待機児童問題解消の切り札として注目されています。

---民間から「点」として成功事例を生み出し、それを法律にしていくことで「面」として社会問題を解決していくと。

宮崎:そういうことです。

「社会問題」に対して、われわれフローレンスが「事業」という形で「解」を提示する。そしてその「解」を政治や行政に伝え、法制化することで全国に広げていく。そんな「社会問題」解決のための成功パターンを、やっと少しずつ積み重ねることができている、というのが今のフローレンスに対する私の評価ですかね。

駒崎:僕も、宮崎と同意見ですね。フローレンスはまだ「赤ちゃんがやっとヨチヨチ歩きを始めた」くらいのレベルです。

すでに取り組んでいる分野においても、まだまだやらなくてはならないことがたくさんありますし、それ以外の分野でも同じような動きを作っていかなくてはなりません。

ただ、おこがましいことかもしれませんが、ゆくゆくは「日本の危機を救った」、そんな風に言われる存在になっていきたいという野望も持っています。

---大きく出ましたね(笑)

駒崎このままの状況で2100年とかになると、子どもの数は大きく減ってしまうし、正直日本はかなりマズイ状況に陥ってしまう。

しかし、それはあくまでも「このままの状況が続けば」の話です。

将来、歴史の教科書などで「あの時、フローレンスという組織が民間からこういう動きを起こしたことで、なんとか軌道修正できたよね」みたいな風に語られるようになっていきたいですね。「思い返してみればあそこがターニングポイントだったよね」と言われるような、そんなイメージです。

 

「決めたらやる、やれるまでやる人」と「花開かせる人」

 

---社会問題に対する「小さな解」を事業として提示し、それを政策として大きく広げていく。そんなフローレンスでは、共に働く仲間として、どのような「人」を求めているのでしょうか。

宮崎:まずは大前提として「ビジョン・ミッションに共感する人」ですかね。

確かにスキルも大切ですが、必要なスキルというのは1年刻みくらいで常に変わってくるものですし、「こういう社会を作りたいよね」という強い想いを持っていれば、いくらでも後からついてくるものだと思います。

あとは「決めたらやる、かつ、やれるまでやる人」。いいことを思いつく人は世の中にいくらでもいます。でも、そこから一歩踏み出せる人となると少し減って、それを継続できる人となるとさらに減ってしまう。

私たちは、これまで誰も解決することのできずにいた社会問題を解決していく組織なので、「そんなのできるわけないじゃん」と言われた時に諦めるのではなく、「ニヤリ」と笑って前に進んでいけるような人を求めています。

駒崎「子どもの可能性を最大化しようと努力する人」というのも、キーワードとして挙げておきたいと思います。英語でeducationという単語がありますが、この単語の語源、知ってますか?

宮崎:知りません(笑)

駒崎:これはですね、ラテン語のeducareという単語が語源になっていると言われています。educareの意味はというと「花開かせる」という意味です。これを知ったとき、「ラテン語すげー。昔の人すげー」って思いました。

日本語で「教育」と言うと、「知る者」から「知らざる者」へ知識を授けるというイメージがありますけど、educareだと「その人が元々持っている可能性を開花させる」というニュアンスになるんですね。

僕はこれこそが「保育」の本質だと思っています。目の前の子どもが持っているもの、その子どものいいところを開花させよう、そのために自分は何ができるのだろう、常にそういったことを考えられる方に来て欲しいですね。

---それは、実際に現場で子どもに関わるスタッフ、普段は現場には出ない事務スタッフ、双方に共通するものですか?

駒崎もちろんです。僕も常に妄想を働かせながらパソコンとにらめっこしています。

宮崎それはそれで、何だか気色悪いですけどね(笑) でも、大事なことです。

駒崎弘樹×宮崎真理子

 

フローレンス・ナイチンゲールが成し遂げたことを「保育」の領域で

 

宮崎フローレンスのアイデンティティとして、「道なき道」を開拓していくということがやっぱり核としてあるなあと、これまでお話ししてきて改めて実感させられたんですけど、「人」という面に関しても、それは当てはまるんじゃないかなと思っています。

---と、言いますと?

宮崎:「保育」を職業とする人は、実はこれまであまり重要視されてきませんでした。「保育なんて子どもを見るだけなんだから、誰にでもできるじゃないか」と誤解され、大事な職業であるとは思われてこなかったからです。

しかし、「保育」というものは実は明確な専門職であり、子どもの人生を左右する時期に関わるという意味において、とても大切な役割を担っているはずです。にも関わらず、管理者育成や看護師育成など、他の専門職にあるような育成・成長の場は用意されていません。私たちはそこを変えたい。その部分を担っていく存在になりたいと思っています。

駒崎:いいこと言いますねえ。本当に、そこの認識は変えていかなければならない。

実はいま宮崎が言ったことは、「フローレンス」という組織の名前にも込められている願いなんですね。フローレンスは、かの有名な「フローレンス・ナイチンゲール」の名前を借りているのですが、彼女のどこが素晴らしいのか、一般的には意外と知られていません。

彼女は「看護師の先駆者」と言われています。これは、別に彼女が世界初の看護師だったから、というわけではありません。彼女以前にも看護師として働く人はたくさんいました。

では、ナイチンゲールは、なぜ「先駆者」と呼ばれているのか。分かりますか?

---すみません、分かりません(笑)

宮崎駒崎は歴史オタクなので、好きなだけ語らせてやってください(笑)

駒崎いいですか。ナイチンゲールは、なぜ「先駆者」と呼ばれたのか。それは、看護師の社会的な地位を向上させた初めての人だったからです。

それまでの看護師は、「お手伝いさん」に毛が生えたようなものでしかなく、誰にでもできるものであると考えられていました。いまでは考えられないことですよね。

そこで彼女がしたことが、世界初の看護学校の設立です。これは「看護師は、しっかりと専門的な知識を学んだ『プロ』であるんだ、単なる『お手伝いさん』ではないんだ」という彼女の意思を表したものです。ナイチンゲールは、「看護師」という「職業」を世界で初めて確立した人物であると言うことができると思います。

翻って、われわれが取り組んでいる「保育」という領域に目を向けてみましょう。信じられないことに、「保育」という領域においては、いまだにそれが「プロ」であるという認識が薄い。先ほど宮崎が言ったように「保育なんてただの子守で、だれにでもできるんだから、その辺のおばちゃんにでもやらせておけ」みたいな雰囲気がいまだに蔓延しています。ナンセンスです。

再三言っているように保育は専門職です。就学前という、人間の基礎を形成する最も重要な時期に大きな影響を与える存在であるはずです。フローレンスは、ナイチンゲールその人が「看護」の領域で行ったことを、「保育」の領域で成し遂げていきたいと考えています。

---さきほど宮崎さんがおっしゃった、「人」という面での「道なき道」の開拓ですね?

宮崎そういうことだと思います。私と駒崎の考えが同じであれば(笑)

駒崎同じですよ!(笑) そういう誤解されかねないようなこと、言わないでください!(笑)

こまあzき

 

「フローレンスに入らなければもったいない」

 

---最後になりますが、改めて「人」というものに対する想いをお聞かせください。

駒崎「早く行きたいなら一人で行け、遠くに行きたいならみんなで行け」という言葉があります。僕は「みんなの力」といったものを信じているんですね。「チーム」だからこそ、より大きなものが作れるんだと思っています。

「障害児保育園ヘレン」という日本初の障害児専門の保育園を作ったときに、目を開かされた出来事がありました。当時、まだ事業のモデルを作っている段階でしたが、正直言って「あ、これもう無理かな」という壁にぶつかっていたんですね。

そんなとき、大学を休学してヘレン設立のメンバーとして頑張ってくれていたある女子大生の子が、パソコンの画面を見ながら、何やらブツブツ言ってたんですよ。何言ってんのかなー、と思って聞いてみると「ぜってー諦めねえ」みたいなことを恐い顔して一人で言ってるわけですよ。

「なんだこいつ」と思うと同時に、「すげえな」と思いました。ついこの間まで普通に大学に通っていた女の子が「諦めない」と言っているのに、自分が諦めたらダメじゃないかと。それで結局、諦めずに続けていったところ「解」が見えたんです。

これこそ僕は「チームの力」だと思っていて、チームメンバーに勇気づけられた瞬間でした。たとえ個々の力が足りていなかったとしても、「こんな社会を作りたいんだ」という想いを共有していれば、単なる足し算以上の力が発揮されるんじゃないか、と思っていますね。

宮崎:化学反応ですよね。互いが互いに影響しあって、より大きな力が生まれる。社会問題の解決という困難に挑んでいるからこそ、そうした力が必要なんだと思います。だからこそ私たちは「人」を大切にする。

駒崎:僕がよくメディアに出ているせいもあり、ともすると「フローレンス=駒崎」と見られがちです。確かに外からはそう見えるかもしれない。でも本当に大切なのは、その土台となっている「人」であり「チーム」なんです。

土台がなければ経営者がそこに座っていることはできない。だからこそわれわれは、現場に出る保育スタッフ、本部で働くスタッフ、全ての「人」との出会い、そして彼らの成長に全力を注ぎます。

いいと思うんだけどなあ・・・ねえ?(笑) こんなに面白い組織、「逆になんで入んないの?」っていう感じ。早く入ればいいのに。

宮崎:早くしないと行列ができちゃいますよって感じですね(笑)

駒崎:繰り返しになりますが、フローレンスはまだまだ発展途上の組織です。まだまだやらねばならないことが、たくさんあります。そんな「道なき道」を「自分が開拓してやるぜ!」くらいの気概ある人を求めています。

自らが目指す社会を、自らの手で作り出すことができる。こんなやりがいのある現場に飛び込んで来ないともったいないですよ、正直。これをお読みになって、われわれフローレンスが目指しているものに共感してくださった方々、ぜひわれわれと一緒に汗を流しましょう。

駒崎弘樹×宮崎真理子

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駒崎弘樹

駒崎 弘樹

認定NPO法人 フローレンス代表理事/日本病児保育協会 理事長

1979年生まれ。慶応大学総合政策学部卒業。「地域の力で病児保育問題を解決し、育児と仕事を両立するのが当然の社会をつくりたい」と考え、NPO法人フローレンスをスタート。日本初の「共済型・非施設型」の病児保育サービスを東京近郊に展開する。また2010年から待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開、政府の待機児童対策政策にも採用される。内閣府非常勤国家公務員、内閣官房「社会保障改革に関する集中検討会議」委員、内閣府「子ども・子育て会議」委員などを歴任。現職認定NPO法人フローレンス代表理事、一般財団法人 日本病児保育協会理事長、NPO法人全国小規模保育協議会理事長。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。

宮崎 真理子

宮崎 真理子

認定NPO法人 フローレンス ディレクター

大手アパレルメーカーからベンチャー企業に転じ、マーケティング、人事を経て、2008年フローレンスに入社。働き方革命事業、病児保育事業、小規模保育事業のマネージャを歴任後、現職。ディレクターとして組織運営全般を行う。また、日本の長時間労働の働き方を変えるため、自社の働き方革命を推進するとともにその成果を広めている。働き方革命についての講演、女性のキャリア・チームビルディング研修など多数。筑波大学大学院教育研究科カウンセリングコース修了。JCDA認定CDA。2児の母。




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