2019/04/13
特別養子縁組の成立前から手厚いサポートを届ける「夫婦のための特別養子縁組ステップアップ研修」をリポート!
こんにちは!フリーライターの小晴です。
認定NPO法人フローレンスは、2019年3月15日(金)16日(土)の2日間、東京都文京区の会場で「夫婦のための特別養子縁組ステップアップ研修」を実施しました。当日は、私も取材のため研修にお邪魔してきました!こちらのレポートでは、その研修の一部をご紹介します!
広がる特別養子縁組 フローレンスの取り組み
特別養子縁組とは、保護者の適切な養護を受けられない子どもが、家庭で養育を受けられるようにするための養子縁組制度です。
今年の3月には、子どもの対象年齢の引き上げを盛り込んだ民法の改正案が閣議決定されるなど、より多くの子どもが家庭的な環境で育つことができる仕組みづくりが目指されているとのこと。特別養子縁組制度への期待は、今後いっそう高まりそうです。
フローレンスも2016年4月に「赤ちゃん縁組事業部」を立ち上げ、予定外の妊娠で悩んでいる方・子どもを育てたい夫婦の相談に乗り、特別養子縁組の支援をおこなう事業をおこなっています。昨年の12月には、民間養子縁組あっせん機関として厚生労働省の認可および東京都の許可を受けました。
また、フローレンスでは今年1月から、WEBサイト上で受けられる「特別養子縁組オンライン基礎研修」を開講。これまでも都内で養親研修を実施してきましたが、全国から受講の希望が相次いでいました。そこで、養親希望者が全国どこにいても特別養子縁組についての正しい情報を得られるよう動画によるオンライン研修を開始しました。
この日取材した「ステップアップ研修」はオンライン基礎研修を受け終え、養子縁組を進めていきたいと希望する夫婦を対象にしています。東北や四国など遠方からの参加も多く、この制度に関心を持っている夫婦が増えていることを実感しました。
「養子縁組は、美しいドラマではない」――養親に求められるのは、生涯責任をもって子どもを育てる覚悟
午前中の講義では、オンライン上で学んだ「特別養子縁組で”親子になる”」「子どもを迎える準備・迎えてからの手続き」についてさらに理解を深めます。
特別養子縁組は子どものいない大人のための制度ではなく、子どもが幸せな環境で育つための制度です。つまり、養親希望者は「跡取りがほしい」「社会貢献がしたい」といった自分の都合ではなく、子ども自身の幸せのために迎え入れ、子どもを最優先に考える必要があります。
一度家庭を失った子どもを迎えて生涯責任をもって育てるには、安定した環境を提供できることが不可欠です。希望者のなかには「妻(夫)が望むなら」という方も少なくないそうですが、フローレンスでは、養親を希望する夫婦には繰り返し話し合って、夫婦どちらもが心から納得してから進めることが大切だと考えているそうです。
講義の中で特に印象的だったのが、「養子縁組は決して“美しいドラマ”ではない。血のつながった子どもと同じく、どんなことがあっても夫婦で協力して育てるという決意が必要」という言葉。養子縁組は感動ドラマではなく、家族が日々積み上げていく生活であり、子どもの人生の基盤だということを痛感した瞬間でした。
特別養子縁組の支援はどのように行われているのか?
また講義の中では、特別養子縁組が生じるまでに、支援現場でどのようなことがおこなわれているのかについて話がありました。
赤ちゃん縁組では、まず「にんしん相談」というかたちで、妊娠に悩む女性の相談に乗ります。
特別養子縁組を希望している場合も、何度もカウンセリングを重ね、安易に勧めるようなことはしません。生みのお母さんが自分で育てることを希望している場合には、社会資源等を活用したり様々な方法があることを伝え、育てられる道を一緒に探します。
また、今年4月に施行された「養子縁組あっせん法(※)」でも、出産後に改めて養子縁組するかどうかの意思を確認してから進めなければならないとされています。
※「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」
そのため、養親とマッチングするのは出産後。まず出産後に生みの親の意思を確認し、マッチングしたあとに養親に連絡が入ります。その後は短期間で迎えにいくことになるので、審査中から生活環境を準備しておくことが大切です。
また、特別養子縁組は子どもの福祉のための制度。子どもが安定した家庭で健やかに育っていくために、子どもと養親のマッチングは非常に重要です。
フローレンスでは、生みの親・養親候補者双方へ何度もカウンセリングや面談を行い、強みを見つけ出していくそう。養親も夫婦でよく話し合いながら、無理をせず自分らしくいることが大切だというお話が印象的でした。
子どもを迎えてからの手続きは? 団体の選び方は?
講義の中では、養親が子どもを迎えたあとの、さまざまな手続きについての説明も。
例えば、児童相談所への「同居届」の提出、自治体でおこなう国民健康保険・乳幼児医療証・こども手当などの手続きをはじめ、家庭裁判所への特別養子縁組の申立て、家庭裁判所からの聞き取りや家庭調査など、行うべき手続きがたくさんあります。
大変そうに思われますが、事前に研修で学んでおくことで、シミュレーションが可能になります。子どもを迎えたあとは生活が激変し、子育て自体に慣れることが大変なはず。だからこそ、できることは事前に準備しておきたいですね。
児童相談所以外にも、フローレンスと同じく特別養子縁組をあっせんする団体は複数あります。そのため、何を基準に選んだらいいか分からないという方も多いはず。
説明会や研修会に参加してみて「生みの親や養親にどのような支援をおこなっているのか」「信頼できる団体、自分たちに合う団体か」を見極めていくことが大切という話に、参加者の皆さんも頷かれていました。
「赤ちゃんって、こんなに泣き続けるの!?」子育てでぶつかる困難と対処法を具体的に学び、子育てへの不安がクリアに
午後からは「乳幼児の育児のための知識と技術」について学びました。実際に赤ちゃんを迎えたときに起こりうる状況とその対処法について学べる、フローレンスの「訪問型病児保育」の研修トレーナーによる講義です。
まずは「赤ちゃんが泣くメカニズムと対処法」についての講義がおこなわれました。
ここでは、実際の泣き声の音源を聞き、長時間赤ちゃんが泣いている状況を想定して体験しました。泣き声を聞いた受講者の反応はさまざまで、「不安になった」「予想以上の声の大きさで、こんなに長く続くのかと驚いたし疲れた」という声も上がりました。
しかし、その後の講義で「泣きのピーク」や泣きやまないときの対処法を詳しく教わり、親も安全を確保してその場を離れたり、気持ちを落ちつけたりすることが大切と知ることで、皆さんも少し安心した様子。
「具体的な対処法を知り、自分にもできそうな気がした」「無理に泣き止ませなくていいとわかってほっとした」という声が聞かれました。
次の講義は、「子どもの目線に立ったリスクマネジメント」。子どもの発達特性と事故リスクについて学びました。
この講義ではグループワークをおこない、家の中に多くの事故リスクが隠れたイラストから、どこが危険かを受講者同士で話し合いました。大人だけの生活では気に留めることのない事故リスクについて学んだことで、子どもを迎える準備のために何をしたらいいか具体的なイメージが持てたようです。
最後の「乳幼児期の子どもの病気の特徴」の講義では、発熱やけいれん、アレルギー、SIDSなどの代表的な子どもの病気と対処法について学びました。
こちらはフローレンスが長年専門としている分野のため、さまざまな事例の共有もあり、受講者の皆さんも熱心にメモを取っていました。
特別養子縁組で子どもを迎えた養親の体験談から「自分の場合はどうか?」と考える
講義の最後には、実際に特別養子縁組で子どもを迎えた養親の方が、受講者の前で自らの体験を語ってくれました。
数年前、特別養子縁組で子どもを迎えたFさん。元々子ども好きでしたが、不妊治療を続けたものの実子を授からず、特別養子縁組を希望しました。
パートナーはFさんと違い、最初は特別養子縁組で子どもを迎えることに戸惑いがあったそうです。夫婦で半年間かけてじっくりと話し合いを重ねた結果、最終的には前向きな気持ちで子どもを迎えることを決めました。
また、養子縁組を検討しはじめた頃から上司に相談し、急に育休を取る可能性があることを相談していたこともあり、職場の理解・協力を得ることができたそうです。
連絡を受けて5日ほどで子どもを迎えに行ったときは、「来てくれてありがとう」という気持ちで胸がいっぱいになり、本当に嬉しかったそう。
子育てが始まってからの生活については「準備をしていても、やはり初めての育児は大変」と語ったFさん。それでも家族の協力や、周囲の人の理解のおかげもあり、お子さんはすくすくと成長し、現在は2歳になったそうです。
真実告知については、今はお子さんとの日々の会話の中で、迎えに行った日のことを話すなどしているそう。お子さんが少しずつ理解できるよう、年齢に応じた告知をしていく予定だそうです。
決断までの道のり、職場への前もった相談、子どもを迎えてからのことなど、養親希望者が気になることに率直に答えてくれたFさん。
受講者の方々からも、「心配に思っていたことがクリアになり、心の準備がしやすくなった」という感想が聞かれました。
研修2日目は、1日目で学んだことをもとに実践的なワークショップが実施されました。
特別養子縁組で子どもを迎えるにあたって、それぞれのテーマに合わせて「自分だったらどうか?」を具体的にイメージし、言葉にしてアウトプットをおこないました。さまざまな意見に触れることで、受講者もたくさんの気付きを得られたようです。
研修終了後のアンケートでは、受講者の方々からはこんな声が聞かれました。
「実際に養親となった方の率直な想いを聞けて、養子縁組に対する不安がなくなりました」
「不明瞭な点が一切なく、納得感が深い研修でした。説明の仕方が配慮されており、抵抗感なくすっと入ってきました」
「子どもにとって何が大切かを第一に考える、フローレンスの方針に共感を抱きました」
「自分の中にあるいろんな気持ちに気付く、よいきっかけになりました」
「受講してよかったと思います。養子縁組を考える他の方にもぜひ勧めたいです」
インターネットや書籍だけでは、特別養子縁組のリアルを知るのは難しいのが現状。
制度の詳しい内容はもちろん、実際に子どもを迎えるまでの流れについてや、養親となった方の生の声を聞くことができた今回の研修に、皆さんとても満足していたようでした。
今回の研修にお邪魔し、子どもを迎えるまでの道のりの過程で、夫婦がさまざまな角度から養子縁組について考え、話し合っておく必要があることが分かりました。
「この子を生涯幸せにする」という覚悟をもてるか、そのうえで本当に子どもを迎えたいと思えるか――夫婦で何度も話し合って結論を出し、満を持して迎えられた子どもは、きっとあたたかい家庭で愛情いっぱいに育てられる、幸せな子になるのだろうなと感じています。
また、あわせて重要なのが、周囲の理解と協力。そして、縁組をあっせんする団体のサポートのあり方に養親自身が共感できていることです。その大切さにも、研修を通して改めて気付かされました。
このレポートを読んでフローレンスの赤ちゃん縁組(特別養子縁組)に興味を持たれた方は、ぜひ一度公式サイトで詳しい情報に目を通してみてくださいね!
小晴
平成元年、福井県生まれ。早稲田大学法学部卒。出版社での雑誌編集、web制作会社でのライター業を経て、フリーライターとして活動中。「文章を通してひとの暮らしをよりよくする」をモットーに、美容からライフスタイルまで、女性向けを中心に幅広い分野の記事執筆を手がける。大学のゼミで「子どもの貧困」について研究した経験から、フローレンスの活動・信条に強い共感を抱き、コンテンツ制作に参画。
書いた人:小晴
フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
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