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アクション最前線

2020/11/11

「子どもと同居していても児童手当すら受け取れていない」制度運用の課題とは。ノーセーフティネットひとり親家庭を救え!記者会見実施!

  


フローレンスや認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ等による「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームは、これまで十分な調査データが存在しなかった「別居中・離婚前のひとり親家庭」を対象とした実態調査を全国規模で実施しました。

その結果、児童手当さえ受け取ることができない厳しい状況に陥っている「ノーセーフティネットひとり親家庭」の存在が明らかに。2020年11月11日、「ノーセーフティネットひとり親家庭を救え!」と題した記者会見を厚生労働省にて開催し、調査結果を発表いたしました。

記者会見では、フローレンス代表 駒崎のほか、社会保障の専門家で、福井県立大学名誉教授 北明美さん、認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子さん、「ノーセーフティネットひとり親」状態に陥っていた当事者の方お二人が登壇し、22名もの記者の皆さんにお集まりいただきました。

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ノーセーフティネットひとり親家庭とは

別居中・離婚前で、子どもと同居していながら児童手当をはじめとしたセーフティネットを剥奪され、精神的、経済的、社会的に追い詰められた状況にいるひとり親家庭です。

今回私たちは、様々な理由で別居中で離婚できず、かつ子どもと同居しているにも関わらず、子どもと同居している方の親に支払われるはずの児童手当を受け取ることができていない実質ひとり親家庭の課題を取り上げていきます。

アンケートの概要

新型コロナウイルスの影響により、ひとり親家庭は引き続き苦しい状況におかれています。

別居中・離婚前のひとり親家庭の生活実態・公的な手当・制度等の利用状況を明らかにし、必要な支援策を明らかにするため、フローレンスや認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ等によるプロジェクトチームは、フローレンスがプロジェクト事務局を務めるプロサッカー選手・長友佑都さんとのひとり親支援プロジェクト「ひとり親をみんなで支えよう」で緊急支援を行った対象者のうち、パートナーと別居中・離婚前でご自身が子どもと同居しており、実質的にひとり親状態にある家庭の全国実態調査を実施しました。

【別居中・離婚前のひとり親家庭アンケート調査 概要】

・実施期間:2020年9月10日(木)~9月23日(金)
・実施方法:Questant(マクロミル)を利用したWebアンケート
・対象世帯:別居中・離婚前のひとり親
・有効回答数:262
・実施者:別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチーム(事務局:認定NPO法人フローレンス)
認定NPO法人しんぐるまざぁず・ふぉーらむ 理事長 赤石千衣子
シングルペアレント101 代表 田中志保
認定NPO法人フローレンス 代表理事 駒崎弘樹
福井県立大学 名誉教授 北明美
※端数処理の影響で、紙面上の数字の合計が100%にならない場合もあります

アンケート結果サマリ

● 厚労省調査の「母子世帯」の就労年収200万円未満の割合58.1%に対し、本調査対象者は71.8%と経済的により困窮している層である(N=262)

別居中・離婚前のひとり親家庭では年収200万円未満と回答した方が7割超。厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」における「母子世帯」の就労年収200万円未満の割合58.1%を大きく上回る数値となりました。「収入がゼロになってしまった」「子どもの体重が大幅に減少してしまっていて不安である」との声が寄せられました。

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●公的には離婚していないが実質的な「ひとり親」状態が年単位で長期化している家庭が6割いた(N=262)

7割以上に離婚意志があり、6割以上の方が1年以上別居状態が続いていると回答。長い方では11年以上別居状態の方もいました。「コロナで業務が増え、負担も増えたのに、調停のストレスと相手のいやがらせでPTSDがひどくなり鬱になり働けなくなってしまった」「いつまでこの苗字を名乗らないとならないのか、いつになったら本当にシングルマザーになれるのか」といった悲痛な声が寄せられています。

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●約7割が相手からのDVを経験。身体的なDVだけでなく、9割は精神的なDVを経験しており、経済的・性的暴力も複合的に受けていることがわかった

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アンケート結果から見えてきた「別居中・離婚前のひとり親家庭」の課題

利用できるはずの公的な手当・制度を利用できていない】

・中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に支払われる「児童手当」は、父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給されることになっているが、別居中・離婚前のひとり親家庭の18.1%では「子どもと別居中の相手が児童手当を受け取っている」

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・児童手当の受給者変更できることを知らない人が約4割で、制度の運用・周知に課題がある

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・窓口で言われた不受理の理由は「別居の相手(現在の受給者)が住民票上の世帯主になっている」「こどもが別居中の相手の健康保険等の扶養家族であるため」という声が挙がっており、別居中の相手と生計同一でないことの証明が難しいために、同居親優先の原則が適用されていない可能性=制度の運用に課題がある

【別居中・離婚前のひとり親家庭は社会的に孤立している】

こどもの学校関係者へ実質的にひとり親となっている状況を打ち明けられてない家庭が約6割で、職場の人に伝えられていない家庭も多い

・現在の悩みは「家計に関すること」が8割以上。悩みや困りごとがあっても、行政や専門機関等に相談していない家庭が約6割で、理由が「相談しても解決しないと思う・解決しなかった」「相談しても支援を受けられないと思う」と相談する前にあきらめているケースも多い

・一度相談してみたが「離婚していないので助けられない」という対応を1度でもされた経験が、相談することへの”あきらめ”につながっている可能性がある

・「制度の利用なし・利用している制度がわからない」世帯が41.6%で最多。家庭への支援の案内に課題がある

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【新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、別居中・離婚前のひとり親家庭の生活は苦しくなっている】

・コロナの影響で「生活が苦しくなった」実感のある家庭は7割、直近3ヶ月の収入が15万円未満が約7割(うち無収入は2割)と経済的な困窮が深まっている
・現在、生活や子育てに困ったときに相談できる人、何かあったときに手助けしてもらえる人が明確にいないと約5割が回答。コロナの緊急対策でも対象外になったことなどを受けて、さらに孤立化が進んでいる傾向が伺える

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別居中・離婚前のひとり親が「子と同居していながら児童手当を受け取れない状況」が生まれる理由

現在の児童手当制度では、離婚を前提として別居している場合には、住民票を別世帯にすることを条件に、児童手当の受給者変更ができるようになっています。

例)江戸川区のホームページより

例)江戸川区のホームページより

住民票を別世帯にする手続きをしようとすると、相手に居場所を知られてしまいます。DV被害者の多くは、それを恐れて、住民票を別世帯にすることができず、結果的に児童手当を受け取ることができない状況が生まれます。

現在、児童手当の受給者変更手続きにおいては、住民票の移動などについて双方の親がコミュニケーションを取ることを前提としている一方で、DV避難中であったり、相手が失踪したケース等、別居中の相手(現在の受給者)との連絡が様々な事情によって難しい場合、ノーセーフティネットひとり親家庭となるリスクが高いことが伺えます。

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国は「児童虐待・DV事例における児童手当関係事務処理について」(平成24年3月31日付雇児発0331第4号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下「DV事務通知」という。にて、現在の受給者が虐待やDVの加害者である場合に、その者に対して児童手当等の受給資格を取り消すことができる事例が形としては示されていますが、同通知では、非常に対象者が限定されています。

つまり、申請者が「配偶者」(虐待・DVの加害者)と同一の住民票のままやむなく避難しており、かつ「配偶者」の社会保険の被扶養者になっている場合に、その「配偶者」に対し「職権による支給事由消滅処理を行うべき事例」として下記の通り「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」のみ例示されるにとどまっており、この点が課題であると考えられます。

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結果的に、各自治体において「児童との間に生活の一体性がないと認められる場合など」が非常に狭く解釈されてしまう状況が生まれ、児童と別居している親(現受給者)から同居している親(被害者)へ受給者変更する手続きが進まず、児童と同居している親が児童手当を受け取れないという状態が発生しています。

私たちの提言

DVで避難中等の「ノーセーフティネットひとり親家庭」が児童手当を受け取れるようにしてください

2020年9月に「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームが実施した別居中・離婚前のひとり親家庭262世帯への調査にて、18.1%が児童と同居しているにも関わらず、児童手当を受け取れていないことがわかりました。

本来受け取れるはずの手当を受け取れていない「ノーセーフティネットひとり親家庭」への支援を強く求めます。

①「DV事務通知」の改正を要望します

児童手当を必要としている多くの別居中家庭の実態に合わせて自治体が判断できるよう、「DV事務通知」の改正を強く求めます。

例えば、「申請者と児童が母子生活支援施設に入所」以外のケースとして、「特別定額給付金事業におけるDV避難者や施設入所児童等への対応」(2020年4月 特別定額給付金室)にて採用された要件を参考に、「行政または行政から委託された弁護士・民間支援団体等がDVから避難しており児童と同居しているという生活実態を確認できた場合」等も例示に追加することをご検討ください。

ノーセーフティネットひとり親家庭にならない・させないための周知徹底を要望します

別居中・離婚前のひとり親家庭への調査では、そもそも、児童手当の受給者を変更できるということすら、知らない・よくわからない世帯が約4割いました。

よって、前述の「DV事務通知」の改正を行うと同時に、「児童と同居している親が受給すること」があるべき姿であり、例えばDVからの避難などのノーセーフティネットひとり親も、新通知に基づいてしっかりと救済されるのだ、ということを自治体・民間支援団体・当事者へ積極的に周知していただきたいです

当事者Aさんのコメント

不安で弱っている、また生活を立て直さなければならない状況、子どもたちと生きていく決意の中、児童手当という制度は心強く、生活スタートには欠かせないはずです。ひとり親になり子どもを育てていくシングルマザーの支えになるはずです。住民票、世帯主の観点だけでなく、現場へ、駆け込んできたシングルマザーの状況、生の声を聞いて欲しいとお願いしたいです。

当事者Bさんのコメント

「私たちは離婚はしていませんが、実質、ひとり親です。なかなか進まない相手との離婚手続きをなんとか解決したいと思いながら、必死で仕事をし、子どもたちを育てています。どうか、いまだに児童手当を受け取ることができない親子のために、皆さまのお力を貸してください。」

このような事例は、氷山の一角です。

「別居中・離婚前のひとり親家庭」実態調査プロジェクトチームでは、まずはノーセーフティネットひとり親家庭が児童手当を受け取ることができるよう、近日中に、お配りした提言書の内容の申し入れを政府の関係部局に行ってまいります。

また、児童手当はノーセーフティネットひとり親家庭の抱えている課題の1つに過ぎず、調査から明らかになった他の課題に対しても今後、アクションを検討していきたいと考えています。

このようなソーシャルアクションは皆さまの寄付によって支えらています。引き続き、ご支援、応援よろしくお願いいたします。




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