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インタビュー

2022/05/11

日本に”新しいあたりまえ”を。斎藤工さんが映像制作現場に「託児スペース」をつくった想いとは。

  


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※上の写真は「ヒヤマケンタロウの妊娠」撮影現場に設置した託児スペースにて

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」全世界独占配信中 ©坂井恵理・テレビ東京/講談社

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」全世界独占配信中 ©坂井恵理・テレビ東京/講談社

「誰も犠牲になっちゃいけない」

「俺達は誰も犠牲になっちゃだめだよ。全員の人生を大切にしたい」。

Netflixにて全世界独占配信中のNetflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」。この台詞は、斎藤工さん演じる主人公・桧山健太郎がドラマの中で発したフレーズです。

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」は、自分が妊娠するとは思っていなかった男性が妊娠するようになった世界で、突然の妊娠に悪戦苦闘する桧山健太郎と周囲の人々を描いたドラマです。

「もし、男性が妊娠したら?」をテーマに男女の役割の固定観念の逆転を軽妙なタッチで描きながら、登場人物達と共に社会を新しい角度から見る体験を視聴者に提供するこの作品。

 「◯◯らしさとは」「ノーマルとは」「あたりまえの常識とは」…。

主演の斎藤工さんは、「誰かがなにかを我慢することで成り立つような社会を変えていく時、希望になるのはやっぱり”人”なのかなと思う」と作品を振り返ります。

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」より

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」より

今回フローレンスニュースでお届けするのは、Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」の撮影現場において斎藤工さんが取り組みとして実施した、「撮影現場への託児スペース設置」に関するインタビューです。

斎藤さんは、映像制作の現場において、子育て中のスタッフの仕事と育児の両立が難しいことに課題を感じ、お子さん連れで来ることができる現場を実現したいと考えていらっしゃいました。

こうしたアクションに賛同し、普段は登録会員さんのお宅で病児保育を提供する事業を運営する保育スタッフと運営部隊が、初めての「出張託児スペースの設置・運営」にトライしました。

映像業界ではあまり例のないこのアクション、アイディアを実行した斎藤さんの思いや運営の舞台裏についてご紹介いたします!

 斎藤さんにお話を伺ったのは、ドラマの配信記念イベントに付随する各種メディアのための取材時間内。

メディアが集まる中ご挨拶をすると、斎藤さんは「ありがとうございます。お世話になっています」と笑顔で迎えてくださいました。


育児や家庭と乖離する日本の職場

―今回、撮影現場に託児スペースを設置しようと考えた背景を改めてお聞かせください。 

自分が今まで出会ってきた撮影現場で働く女性スタッフの方々において、妊娠のタイミングで多くの皆さんが職場を離れ、その後も戻れない、ということを目の当たりにしていました。映像業界だけではないと思うんですけど、女性の出産育児と働くということが乖離しているなと常々感じていました。

海外に比べて、日本は子どもや家庭が職場から遠く、遠慮という概念も際立っていて。

女性が仕事を続けられないことで、映像業界として多くの才能をロストしてきている。

この業界に限ったことではなく、そもそも女性が妊娠をした時点で二者択一を迫られることに非常に違和感があるなと思いました。でもこれまで「そういうものだ」っていうふうにしてきてしまったし、僕もその一部だった。

ある作品でフランスロケにいったときに、フランスの映像業界ではちゃんと昼休みを2時間とって、撮影現場に家族を呼んで家族団欒の時間が仕事の合間にあるのを見ました。

ユニオン(労働組合)により8時間労働が守られ、家に帰ってからも当然家族との時間があるのがあたりまえ。ある種のルール、モラルとして家族や子育てが社会に調和していて本当に自然だなと思った記憶があります。

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※写真はイメージです

「託児スペース」の発想は、幼少期の肌感覚の記憶も関係しているかもしれません。

僕は父親が映画製作者だったので、小さい頃、職場によく連れて行ってもらっていました。父の仕事を間近で知ることができたし、父の職場仲間のお子さんもそこにいて、コミュニティが生まれたりということがありました。

 また、女優の安藤サクラさんがご出産の直後にNHK朝の連続テレビ小説の主役を演じられた時、NHKさんが撮影現場に託児スペースを作ったという事例も耳に入っていました。

 日本の映像業界は、例えば育児や家庭といった社会性と乖離してしまっている。

開通させる「なにか」があればいいのになあと、常々思ってきて。

これは主観というか、俯瞰で思ってたことではあるんですけど、「託児スペース」という場所がそれを繋げるものになるんじゃないかなって。

 撮影現場に託児スペースをつくった最初の体験は、2018年自分の監督作品の制作時。1週間のオール高崎ロケというのがありまして、その時小さなお子さんのいるお母さんが何人か参加して下さっていたんですね。そこで高崎の地元の事業者の方々と協働し、合計3名のお子さんを撮影現場でベビーシッターさんが預かるということにトライしました。

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※写真はイメージです

それが僕の中で最初のはじまりではあるんですけど、行動にうつすことで、なにかを掲げることで、同じ志の方だったり、そういった活動をずっとされてきた大先輩の方達と出会えた。

僕の非常に個人的なアクションではあったけど、それがむしろ同志というか仲間というか、業界を越えて多くの方々に出会える流れになったので、非常にありがたく思っています。

ニューノーマルが意識されなくなるまで

―一方で、アクションを継続していく難しさについてはどのようにお感じでしょうか?

僕のライフワークでやってる移動映画館※もそうですが、固有名詞が先に来て珍しい取り組みだと紹介されることは、根付いていない表れでもあるなと思っています。

僕がパイオニアなわけでもないし、清廉潔白な人間でもないのに、強調されてしまうっていうこと自体が、マイノリティな動きであることを証明しています。

 これがあたりまえになって、もっとマジョリティの感覚になる時に、初めて意味になっていくのかなと感じます。託児所や移動映画館といった手法にこだわりがあるわけではなく、ニューノーマルが浸透するといいなと思っているので、一過性のプロジェクトにならないようにと考えています。

ただ、フローレンスさんと出会って、様々な活動だったり、運営場面でのサポートの偉大さに、本当に僕は感銘を受けました。

僕は、そのサポートがなければこうして断続的に託児スペースの設置に向き合えてなかったと思います。

僕は安藤サクラさんの前例があったことをきっかけに行動したので、誰かがサンプリングしていく”はじまり”になったら。

僕の行動や手法自体が問題解決になるというよりは、はじまりやきっかけにはなり得るのではないかと思います。

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※フローレンスHPより

※移動映画館…被災地支援から始まった斎藤工さんの個人プロジェクト「cinéma bird」。地方の市町村に移動映画館を設置し鑑賞体験を届ける。コロナ禍では医療従事者向けに実施し話題となった。 

―実際に託児スペースを設置してみて、お子さんを預けたスタッフの方や現場の方々からはどんな反応がありましたか?

男性スタッフが預けてくれるケースもけっこうあって、その場合はパートナーさんに休日ができてすごく喜ばれたと言っていましたね。あとは、映像制作の現場で働く男性はやはりお子さんとの時間がそもそもない。

労働を終えて帰宅する頃にはお子さんはもう寝ていて、お子さんが朝起きる前には現場に行って。そういう方達は、現場に我が子がいるっていうことの喜びがあったし、士気があがったと。

お子さんのお母さんである女性スタッフはもちろん、仕事の合間に授乳ができたりして、本当にありがたいとおっしゃっていました。

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フローレンスのスタッフさん達がお子さん達についていてくれて、すぐそこにいるっていう安心感が、親御さんにはものすごく大きな希望になりました。一番サポートしてくださっている、一番の主役が保育スタッフさん達だなと、どの現場でも強く思いました。

ただ、託児スペースを利用した方からは長い長い感謝のメールをいただいたり、お手紙をいただいたり毎回するんですけど、やっぱりすごく大きなリアクションですよね。

特殊なことだからこういうリアクションをいただくんだなと思っていて。これが「ありがとね!」くらいに常態化していくのが理想です。

 お子さん達は未来の希望なので、フローレンスさんの活動やSNSなどの発信にも勇気というか…希望をもらっています

ありがとうございます。

(インタビュー完)

Netflixシリーズ「ヒヤマケンタロウの妊娠」
原作:坂井恵理『ヒヤマケンタロウの妊娠』(講談社「BE LOVE KC」所載)
監督:箱田優子 菊地健雄
脚本:山田能龍 岨手由貴子 天野千尋
出演: 斎藤 工 上野樹里筒井真理子 岩松 了 高橋和也 宇野祥平 山田真歩 / リリー・フランキー細川 岳 前原 滉 森 優作 山本亜依 伊勢志摩 篠原ゆき子 橋本 淳 小野ゆり子 木竜麻生 斉木しげる 根岸季衣
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix コンテンツ・アクイジション部門マネージャー)
プロデューサー:間宮由玲子(テレビ東京) 太田勇(テレビ東京)   平林勉(AOI Pro.)
企画・制作:テレビ東京制作協力:AOI Pro.
配信:Netflixにて全世界独占配信中©坂井恵理・テレビ東京/講談社
【Netflix作品ページ】www.netflix.com/ヒヤマケンタロウの妊娠

”新しいあたりまえ”を多くの人と共につくる

「ヒヤマケンタロウの妊娠」の撮影現場では、安全面の確保等々の考慮もあり、トライアルとして一日実施しましたが、託児スペースの設置・運営にあたっては、実現に向け制作現場、テレビ局、斎藤工さんの事務所の方々など多くの皆さんと協働しました。

 フローレンスの病児保育は、団体として運営する多様な保育現場の中でも、一期一会のお子さんへの保育提供に最も経験値のある保育スタッフが揃う部門です。

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フローレンスの訪問型病児保育

それでも、撮影現場がどのような環境なのか?お預かりのお子さんは何名で、どんなお子さんなのか?直前まで具体的な情報が少ないという映像制作現場の特性上、関係者皆さんと何度も打ち合わせをして、準備しました。

斎藤さんも当日は託児スペースを訪れ、これまで様々な出演ドラマで託児スペースの設置を呼びかけてきたが、「ドラマのテーマとピッタリだったこともあり、実現できました」と、喜びを伝えてくださいました。

その後他の撮影現場でも1日保育ができないか?といった相談があるなど、現在もコミュニケーションを続けています。

私たちフローレンスは、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」を実現するため、保育や福祉サポートの事業を運営しながら、政策提言やソーシャルアクションで社会をアップデートする団体です。

斎藤工さんがおっしゃるように、日本は今、様々な業界が変化の時期を迎えています。

目の前にある課題に直接アプローチをしながらも、社会全体の意識やカルチャーを変える活動を私達も続けていきたいと考えます。

ありたい社会について多くの方々とアイディアを出し合い、共に行動を起こすことで、フローレンス一団体では実現できない「新しいあたりまえ」を作っていきたいです。



書いた人:岡水 恵弥


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