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アクション最前線

2024/10/23

「シチズンシップ保育」本気で取り組んで見えてきたこと ~こどもたちがよりよく育つ場を目指して~

   


フローレンスの保育園では、「みんなの未来をつくることに自ら参加し、貢献し、そして楽しむ心を育む」ことを、保育理念としてかかげ、こどもたちの共感性、内発性、創造性を伸ばしていくシチズンシップ保育を実践しています。

そんなフローレンスの運営する小規模認可保育所、おうち保育園。チーム全体で「シチズンシップ」を意識しながら、日々こどもたちとかかわっています。今回はおうち保育園門前仲町の園長先生が、そんな毎日の中で見えてきた、これまでの保育とは異なる部分を中心に少しお話したいと思います。

 

認定NPO法人フローレンス「おうち保育園門前仲町」 園長   野口 恵美子 

専門学校卒業後、児童養護施設で2年、認可外保育施設、一般企業で3年勤務。その後専業主婦として3人の子育てを経験したのち、2011年より社会福祉法人や株式会社の保育園にて保育の仕事を再開する。「一人一人に寄り添った乳児保育(小規模保育)」に興味を抱き、2016年にフローレンスに入社。2019年10月より同園園長に就任。現在「シチズンシップ保育」の推進担当も担う。

感情をぶつけ合う経験から学ぶ

ちいさなこどもたちが集まるとどうしても起こってしまうケンカ。どんな些細なことであっても、それが起こるのには理由があります。それぞれに思いがあり、何かを主張したいがゆえに感情がぶつかるのです。その瞬間、こどもたちは自分の気持ちを相手に伝えようと必死になり、それによって他者と向き合う力が育まれます。ケンカを通じて、ただ感情を発散するだけではなく、自分の意見や気持ちをどう伝え、どう解決していくかを学んでいるのです。

かつて保育の現場では、こども同士のトラブルに対して保育士がいち早く介入してケンカに発展させない、怪我をさせないという文化が主流でした。しかし、わたしたちはそれをすぐに止めるのではなく、見守ることに挑戦しています。その結果、感情を上手く言葉にできなくて先に手が出てしまうこともあります。「お友達にひっかかれた」「お友達を叩いてしまった」これらは本来、保育園であってはならないことですが、こどもの成長過程ではよくあることで、この経験からもお互いの痛みを知り、さまざまな感情にふれる機会を得られます。こどもたちはこのような経験を繰り返しながら、「どうしたらお友達を傷つけずにすんだか」「どうすれば仲良くできるか」などを考えられるようになるのです。もちろんそこには、大きな怪我につながらないように見守り、適切な言葉を添えながら、一緒に考える大人の存在が不可欠です。そのためには配置基準が改善され、保育業界全体にもっと時間と人員配置にゆとりのある環境が整うといいのにな、と思っています。

そして、このようなやり方は保護者の同意がなければ成立しません。それぞれのご家庭には、保育士側の思いも含めてシチズンシップ保育を理解してもらえるよう、日頃から丁寧なコミュニケーションに努めています。しかし、それを頭で理解していたとしても、自身のお子さんが怪我をした、お友達に怪我をさせてしまった、という報告は保護者にとってショックなニュースです。そんなお母さんやお父さんの気持ちにも寄り添いながら、対話を続けることができてはじめて、お互いを「こどもの成長を見守る同士」として信頼できるのだと思います。

統一ではなく、多様性を尊重する保育

かつて私は、保育のやり方や方針をある程度統一することが望ましいと考えていた時期がありました。シチズンシップ保育を取り入れる前までは、管理型教育が望ましいとされていた時代だったこともあり、園として一貫した方針を持つことが必要だと思っていたのです。しかし、今は保育に「これが正解」というものはないと感じています。

状況によって、こどもたちにとっての「良い保育」は異なります。

例えば、1~2歳の子に木に登りたいと言われた時、「危ないからやめなさい」とすぐに答えるのではなく、その子の冒険心や挑戦する気持ちを尊重し、安全に配慮しながら、木に登ってみる経験をさせてあげることが大切だと考えています。こどもたちは、挑戦の先にある成功や失敗からの学びが自信となって、次のステップに進むことができると思うからです。

また、ある子がきれいなお花を見つけて「摘みたい」と言ったとしましょう。そんな時、「お花を摘むのはダメ」と一方的に禁止するのではなく、「お花は生きているから、ここで見て楽しむのはどう?」と、話してみるのも一つの考え方です。また、丁寧に持ち帰って、「保育園に着いたらお水に入れて飾ってみようか」と提案する人がいてもいいかもしれません。どちらが正しい、間違っているかではなく、様々な意見や考え方があることを示し、こどもたちと一緒に話し合いながら進めていくことが大切です。

また、保育園では雨が降る日は室内活動、というのがあたりまえだと思っていた私ですが、ある時、色鮮やかな雨合羽に長靴を履いて歩いて登園して来るこどもたちを見て「今日はみんなで雨の日を楽しむお散歩に出かけよう!」と提案してくれたスタッフがいました。私の中の「雨の日は戸外に出られない」というバイアスが外れた瞬間です。お散歩の様子をあとから聞いて、楽しそうなこどもたちの姿を知ることができました。

保育の現場にはこのように、本当に必要?と思える「あたりまえ」がまだまだ多く潜んでいそうです。これまでの保育の「あたりまえ」を疑って、見直して「新しいあたりまえ」をつくっていきたいものです。

今この瞬間を大切に

私が特に大事にしているのは、「こどもたちが今この瞬間に感じている気持ち」を尊重することです。こどもたちが将来できるようになったほうがいいことや、大人になるための目標も必要かもしれませんが、それ以上に大切なのは、今目の前にいるこどもたちの「今」の気持ちです。

例えば、こどもたちが何か新しいことに挑戦したいと感じた時、「後で」とか「もう少し大きくなったら」と、先延ばしにするのはもったいないと感じます。こどもたちが感じる今を大切にして、お互いに無理なく挑戦できる機会を用意してみましょう。頑張りを認めてもらうことで自己肯定感が高まり、自分に自信が持てるようになりますね。また、そうやって自分の今の気持ちを尊重して信じて任せてくれる相手の存在こそが、その子が本当に辛い時の支えになるのではないでしょうか。

大人のシチズンシップ~保育士自身も尊重される存在~

おうち保育園門前仲町では、スタッフがそれぞれの個性を生かしながら、自然にこどもたちと向き合うことを大事にしています。同じ保育士でも一人一人に特長があって、性格や考え方もみんな違います。そこでチームづくりに大切なのは、普段のコミュニケーションでお互いのことを知り、尊重し合うことです。

過去には「園としてどうするか」という視点でものごとを決めていた時代もありましたが、今は「その時々に合わせた柔軟な対応」が大切だと感じています。保育士たちが自由に意見を出し合い、自分の個性を発揮できる場を作ることで、結果的にこどもたちも大人と同じように個が尊重され、より豊かな環境で育つことができるのです。

そして、何より大切なのはチーム内に「心理的安全性」が担保されていること。そうでなければ、健やかなコミュニケーションは生まれません。まずはスタッフ一人一人がそれを理解し、自分ごとと捉え、意識するところから始めましょう。お互いの人となりを知って思いを尊重し、信頼できるようになれば、保育の仕事はもっと楽しく、楽になるはずです。

また、スタッフとの面談の際には、あえて「ぶっちゃけどう?」といった率直な質問を投げかけることもあります。私は園長という立場ではありますが、指導者ではありません。それぞれが日々感じていることを共有し、無理せず、ごきげんに保育に取り組める環境を整えることが使命だと思っています。

誰もが我慢しない保育を目指して

私たちの保育園では、こどもでも大人でも、誰もが我慢せずに過ごせる環境を目指しています。こどもたちが自由に感情を表現し、自分らしく成長できる場をつくること。そして、保育士たちも無理をせず、自分自身のペースでこどもたちと向き合えること。これが、私の理想とする保育の姿です。

先日、シチズンシップ保育を実践するようになって、自身にどのような変化があったかを保育スタッフに訊ねてみました。初めはなにが正解かわからなくて悩みもしたけれど、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を外してこどもたちの声を聴くこと、自分の気持ちも大切にして無理をしないこと、これを意識したら保育が楽になった。と話してくれました。また、大人だからといってこどもに対して何でも教えようとしないこと、対等にかかわることで見えてくる新しい保育を皆さんにもぜひ感じていただきたいです。これらはなにも保育に特化したことではなく、こどもにかかわるすべての人に伝えたいシチズンシップ(保育)のお話でした。

これからも、こどもたちが自由に成長できる場をつくり、保育に携わるスタッフみんなが自分らしくごきげんに働ける環境を整えることに努めてまいります。

フローレンスの保育園は新入園児を募集中です!

シチズンシップ保育を実践する、フローレンスの保育園では、新入園児を募集中です。入園を検討されている方向けに各園で保育所体験や園見学も実施しています。 「参加してみたい!」という方はぜひ各園にお問い合わせください。

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フローレンスの保育園  各園情報

★おうち保育園

0-2歳児のこどもたちのための小規模な保育園です。園名には、「おうちにいるような安心感を感じられ、こどもたちにとっての第2のおうちになりたい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/台東区/品川区/豊島区/杉並区/渋谷区/宮城県 仙台市)

おうち保育園

★みんなのみらいをつくる保育園

0-5歳児のこどもたちのための認可保育所です。園名には、「”みんなのみらいをつくる人”に育ってほしい」という願いが込められています。
(東京都 江東区/渋谷区)

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