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インタビュー

2021/08/19

ついに男性育休義務化へ。性別に関わらず、誰もが活躍する社会を作るには?【BHPジャパン・ガントス有希さん × 駒崎対談】

    


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フローレンス代表理事の駒崎は、4年ほど前から有志メンバーとともに「男性産休の創設」「男性育休義務化」について政策提言を行ってきました。その活動が実を結び、今年6月3日、育児・介護休業法の改正法案が成立。2022年度から男性が育児休業(以下、育休)を取りやすくなります。

弊会が進めてきた働き方や多様性を推進する取り組みに賛同し、コロナ禍で大変苦しい状況に置かれている日本の子育て世帯、特に経済的に不安定なご家庭やひとり親家庭の方々への支援を行うフローレンスの活動を支えるための寄付をしてくださったのが、世界有数の資源会社、BHPさんです。

同社はインクルーシブで多様性のある職場がもたらす価値を認識し、2025年までに従業員の男女比を同率にする目標を掲げています

男性の家庭進出や女性活躍、人事施策として注目されているダイバーシティー&インクルージョン(※)について、BHPジャパン代表取締役社長のガントス有希さんとフローレンス駒崎が意見を交わした様子をレポートします。

(※)性別、年齢、国籍のほかライフスタイルや価値観に関わらず認め合い、良いところを活かしていくという考え方。

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男女比50:50の実現には、フレキシブルな働き方が必要

ガントス有希さん:弊社はオーストラリアに本拠地を置く資源会社で、鉄鉱石などの採掘、加工、販売を担っています。

当社の理念は「人と資源を繋いでより良い世界を作る」こと。「人」に焦点を当て、従業員が安全で働きやすい労働環境を作るためにダイバーシティー&インクルージョンに真剣に取り組んでいます。この取り組みの成果をしっかりと図るために、2025年までに全世界で働く従業員の男女比を50:50にするとの目標を2016年度に設定しました。

しかしこの目標は非常にチャレンジングであると自覚しています。もともと男性が多い業界で、全世界に約8万人いる従業員のうち女性従業員の割合は2016年度で17.6%にすぎませんでした。

駒崎:10%台後半だった女性比率を10年で50%にまで引き上げる高い目標を掲げていらっしゃいますね。実現に向けて御社はどのような施策を講じていらっしゃいますか?

ガントス有希さん:これには複数の方針がありますが、特に優先度が高いのはフレキシブルな働き方です。女性のキャリアは妊娠や出産といったライフステージの変化の影響を受けやすいため、家庭と仕事を両立できる働き方を企業が整えることが大切です

しかしこれは「遅く出社して、早めに退社して良いですよ」という表面的な施策ではなく、仕事内容を含めて個人が存分に実力を発揮してもらえる仕組み作りが求められます。現に当社はフレキシブルな働き方が特別なものではなく、日常のものであると捉えています。

ひとり親女性では、生活を維持できない

ガントス有希さん:フレキシブルな働き方は、私たちがフローレンスさんに賛同したポイントの一つです。お子さんが病気になった時、たいていは女性が仕事を休んで看病をします。でもここで病児保育を使うことができたら、どうでしょうか。お子さんが熱を出しても病児保育にお子さんを預けて働くことができます。

企業としては、フレキシブルな働き方を推奨し、自身のキャリアや仕事への影響を心配することなく子供を預けたり病院に連れていくことができるようにする。そうして企業だけでなく、フローレンスさんたちの社会サービスの取り組みの相乗効果を生み出すことにより、より働きやすい環境を作ることができると感じています。

駒崎:子どもの看病は母親が行うものとの決めつけが根強いですからね。根底にあるのが、性別役割分業の考えです。このことはジェンダー・ギャップ指数2021で、調査対象となった156カ国中で日本は120位という結果に表れています。同指数では経済、政治、教育、健康の4つのカテゴリで格差を数値化していますが、このうち経済と政治で特に男女格差が見られます。

女性の平均賃金は男性の約6割程度しかないことから、離婚後に母親が稼ぎ手となった場合、生活に必要なお金を得ることができず経済的に苦しい状況に陥りがちです。OECD(経済協力開発機構)の調査では、ひとり親世帯で、なおかつ親が就業している場合の相対的貧困率は50%以上。多くのひとり親女性が貧困状態にあることがわかっています。

一方で、男性も苦しい。平均賃金が女性よりも高いため男性は大黒柱としての役割を担わざるをえません。最近では男性でも家庭を優先したいと考える人が増えているものの、稼得責任から仕事中心の生活となってしまう状況があります。

男性が生き方を見直す「Lean Out」(リーン・アウト)という考え方

ガントス有希さん:男性の働き方についての話題が出ましたので、弊社が行っている男性従業員向けの取り組みをお話させてください。弊社では従業員が有志で集まりさまざまな活動を行っているのですが、その中にダイバーシティーグループがあります。同グループでは昨年シンガポールで Lean Out(リーン・アウト)をテーマにしたイベントを実施しました。

2013年、Facebook社のCOOであるシェリル・サンドバーグ氏が書いた『Lean In』(リーン・イン)という本を覚えていらっしゃいますか?Lean Inが「女性はもっと前に出ましょう」との意味に対して Lean Out は、「男性が仕事中心の生活から家庭を優先した暮らしをして、女性がさらに活躍できる環境を作りましょう」というメッセージを含んでいます。シンガポールでのLean Outイベントの一環として心理学者を交えて、夫婦それぞれのキャリアや家事分担をどうすればいいのかのコミュニケーションについても学びました。

駒崎:リーン・アウトとは素晴らしい考え方ですね!

ガントス有希さん:先ほど従業員の男女比を50:50にするために必要なこととして、フレキシブルな労働環境を挙げました。でもそれだけでは不十分で、我々の意識、行動を変える施策も求められます。壁になるのが「無意識に持ってしまう偏見」です。育休に意欲があったとしても実行に移さない背景には、「育休を取って仕事から離れるとキャリアがダメになる」との思い込みがあります。

先ほどのシンガポールでのLean Outイベントの例に戻りますが、男性従業員同士で仕事と育児の両立に関する悩みを相談できる場を作り、自分の考えを客観的に見る機会を設けようと「父親のためのファイヤーサイドチャット」と呼ばれる座談会を開きました。

座談会では男性が仕事と育児の両立で不安に感じていることを打ち明けたり、実際に育休を取った男性従業員に体験を聞いたりすることで、最終的に育休を取るのは素晴らしいこと、キャリアに悪影響がないことを知ってもらいます。また「リーダーの立場にある男性こそ積極的に育児に関わっている」というキャリア上のロールモデル作りも目的の一つです。尊敬を集める先輩や上司が育休を取得したら、「自分も同じようにしていいんだ」と思う男性従業員が増えますよね。現状ですが、男女ともに育休を進んで取得しています。

制度を先に整えてから、人の意識を変えていく

駒崎:性別役割分業の考えを変えていくには、企業の役割がとても大きい。さまざまなお取り組みを進めてこられる姿勢に感銘を受けました。でも御社のような企業ばかりではないですから、ジェンダーイコーリティーを実現するにはある種の強制力を働かせないといけないケースもあります。

私は厚生労働省のイクメンプロジェクトの座長を務めてきまして、「イクメン」なる言葉を作り男性の意識変化を訴えてきました。結果として「イクメン」の認知度は上がったものの、男性の育休取得率は過去最高とはいえ約7%にとどまっています。

ガントス有希さん:理想的な展開は、男性が育休を自発的に取得することですよね。当社でも、自然と従業員の男女比率が半々になればそれに越したことはありせん。でも人の意識が変わるのを待っていたら10年20年、30年経っても何も変わらないかもしれません。駒崎さんは男性の育休義務化の実現に関わっていらっしゃいますが、こうした仕組みを作られたことの意義はとても大きいです。

駒崎:フローレンスとしても男性の家庭進出についての啓発に努めてきましたが、人の意識はそう簡単に変わりません。「こうなったら法律化するしかない!」と思い、政治に働きかけることにしました。制度を先に作ることが、社会を変えるきっかけになるのではないかとの気持ちです。

ひとり親や経済的に不安のあるご家庭への食品を支援するだけでなく、男性の育休義務化のように長期的に見て男性の働き方改革や女性活躍に繋がるように制度そのものを作ったり、変えたりするようなソーシャルアクションにも弊会は力を入れています

企業として、ビジネスでお世話になっている日本に貢献したい

駒崎:しかしソーシャルアクションが利益を生み出すわけではありません。活動するには人手も資金も必要ですから、御社のように私たちに賛同してくださる方からの寄付金に支えられているわけです。最後になりますが、弊会に寄付をされようと思ったきっかけや寄付にかける想いを伺わせていただきたいです。

ガントス有希さん:BHPのコミュニティ、我々が操業を行っている国そして我々のお客様がいる国で、コロナ禍で直接または間接的に多くの人々が影響を受けています。その中で我々が貢献することは大切なことだと考えています。コロナ禍の影響から立ち直るためには政府の包括的な連携に加え、民間での連携も必要になります。その中で、我々の社員やお客様がいるアジアの国々での復旧支援へ貢献するために、アジア・レジリエンスパートナー基金を設立したのがきっかけです。

弊社にとって日本はこれまでたくさんお世話になってきた国で、長年のパートナーでもあります。新型コロナウイルスの影響で子育て世帯が苦しい状況に置かれていることを知り、こうした方々への支援を行っているフローレンスさんに寄付をすることにしました。

社会への投資は、私たちの社会的な存在価値である「ソーシャルバリュー」創造のためのツールです。基本的な目的は、我々がお世話になっているコミュニティでの環境を改善するのに貢献することで、その辺がフローレンスさんと同じであることも大きいですね。営利団体かそうでないかの違いはありますが、目指すところは同じ。ソーシャルアクションとソーシャルバリューが合わさったときの相乗効果も期待しました。

駒崎:ありがとうございます。たしかにコロナ禍で日本の子育て世帯はかなりの打撃を受けたと感じています。2020年度に報告されたDVの件数は前年同時期に比べると1.6倍に増えています。また女性と子どもの自殺者も増加しています。

フローレンスの支援活動の一つに、経済的に苦しい世帯へ定期的に食品を届ける「こども宅食」があります。生活に困った方から連日のようにご相談を受けますが、中には「ひとり親で子ども2人を育てているけど、一日パン一個を食べてしのいでいます。もう限界です」といった声もあり、「先進国である日本で、このような過酷な生活を強いられているのか」と衝撃を受けました。

そこで私たちは昨年、「新型コロナ緊急支援プロジェクト」として、経済的に不安定なご家庭やひとり親家庭などのべ1万2000世帯以上の子育て世帯に緊急支援を行いました。フローレンスでは、これからも苦しんでいる人を助けるとともに、苦しんでしまう人を生み出すような制度を変えていきます。今後とも、よろしくお願いいたします。

ガントス有希さん:私たちの寄付をフローレンスさんが世の中を変える活動に使っていただけて嬉しく思います。こちらこそ、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。



書いた人:そのべゆういち


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