2022/08/11
医療的ケア児の在宅での看護とは?現場で働く看護師が実際の看護の事例をご紹介
フローレンスでは、「現場の事例公開!フローレンスの看護セミナー」をテーマに、6月19日にオンラインで事例共有会を開催しました。
医療的ケア児や障害児の在宅の支援について興味はあるものの、看護師としての関わりがイメージできないという方も多いのではないでしょうか。
今回のイベントでは、実際にフローレンスで働く看護師を講師に迎え、現場での事例を紹介しました。
こちらの記事では、そんな事例共有会の様子を一部レポートします。
「医療的ケアシッター ナンシー」でケアを受けるBくんの事例とともに、当日行われた質疑応答についても紹介します。ぜひ実際の支援の現場を知っていただけるとうれしいです!
訪問の現場で看護師はどんなことをしている?――Bくんの事例
Bくんの事例について紹介するのは、ナンシーで働く看護師の増渕です。
増渕は5年半のNICUなどでの勤務を経て、フローレンスに入社しました。
セミナーでは、普段のケアの様子やシッターとしての業務について紹介しました。
医療的ケア児Bくんとの一日
増渕:Bくんは重症新生児仮死、低酸素性虚血性脳症の3歳です。気管切開があり、24時間呼吸器を装着しています。
Bくんを訪問する時、まず行うのはご家族からの引き継ぎや体調確認です。その後、Bくんは呼吸器を装着しているので、呼吸器とアンビューパックのチェックも行います。
その後、幼児向け手遊び歌の「はじまるよ」の歌で活動をスタート。体操の音楽に合わせてマッサージをします。
体がほぐれたところで、制作や感触遊び、手遊びのスタート!
プロジェクターで花火や水族館の映像を鑑賞したり、Bくんが扱いやすいおもちゃを使って遊んだりして楽しみます。
ナンシーでは児童発達支援管理責任者が定期的に一緒に訪問し、お子さんに合った遊びや支援を考えます。一人ですべての遊びを考えなければいけないというわけではなく、周囲と協力しながらチームで関わることができるので安心です。
活動の合間には口鼻腔の吸引も行っています。分泌液がたまると徐脈になる場合があるので、呼吸音などをよく観察するようにしています。
最後に体位を整えて、連絡帳に記入し、親御さんに今日の様子を伝えて、訪問が終わります。
Bくんとの活動を通して、成長を間近で感じられる喜び
増渕:一緒に遊ぶ時間を通して、Bくんの好きなことや楽しいことを見つけています。
Bくんにとって言葉で表現することは難しいのですが、表情を使ったりや手指を動かしたりして、「これがいい!」など意思を伝えてくれます。
訪問したときに最初は緊張している様子があっても、「はじまるよ」の音楽を聞いたり、大好きな的当ておもちゃを見つけたりすると、よく手を動かしてくれます。Bくん自身も遊ぶのを楽しみにしてくれているんだなと思い、思わず私もうれしくなってしまいます。
逆に苦手なことを発見する場合もあります。「雲スライム」を作ろうと、Bくんの横で洗濯のりを使っていたのですが、感触が嫌だったようで涙してしまったことも。
複数の看護師で一人のお子さんを担当しているため、別の看護師がBくんの好きなことや効果的なコミュニケーション方法を発見することもあり、チームで共有しながらお子さんの「楽しい!」を見つけられています。
訪問開始当初は不安になり、徐脈になることもあったBくんですが、最近はそういったことも少なく、ナンシーの時間を楽しんでくれているように感じます。
「大変だったことは?」セミナー参加者の質問に答えます!
セミナー参加者のみなさんからたくさんのご質問もいただきました。引き続きナンシー看護師の増渕と、採用担当の服部がお答えしていきます。
Q.ナンシーで働いて大変だったと思うことは?
増渕:ナンシーでは0~18歳のお子さんを対象としています。私の小児の経験がNICUのみだったこともあり、体格の大きなお子さんを安全に、かつ自分の体に負担が少ない形で抱えるのが大変だと感じました。ただ、先輩看護師からアドバイスをもらったことで、安全に、自分にも負担が少なく、できるようになったと思います。
また、体力が必要だという点も挙げられます。動ける医療的ケア児のお子さんもいます。お散歩に行ったり、長時間外遊びをしたりすることも多く、体力が要ると思います。
あと、訪問看護では各ご家庭の医療的ケアのやり方に合わせます。病院とは異なるので、慣れるまでは大変でした。ただ、ナンシーには、お子さんごとに必要なケアやご家庭ごとの物品の取り扱い方をまとめたアプリがあり、それを確認できるので、不安なく訪問することができます。
Q.看護師としての経験値はどの程度必要ですか?
服部:まずは、採用の視点からお答えします。
施設型の「障害児保育園ヘレン」の場合、小児の経験は不問で、正看護師資格をお持ちで臨床経験が3年以上あり、医療的ケアのご経験がある方であればご応募いただけます。
一方、訪問型の「障害児訪問保育アニー」や「重度医ケア児訪問保育エレノア」、そして「医療的ケアシッター ナンシー」では小児看護の経験が応募要件のひとつです。小児看護の経験は、必ずしも小児科だけに限らず、増渕のようにNICUなどでの経験も含まれます。
増渕:看護師としての経験の年数や内容はメンバーそれぞれです。フローレンスがはじめての転職先という看護師もたくさん在籍しています!初めて関わるようなお子さんだったり、初めて触れる医療機器だったりといったことも多いので、経験年数にかかわらず学ぶ姿勢が大切なのかなと思います。訪問は最初は先輩と一緒に行き、慣れて安全にケアできるようになってから独り立ちという体制が整っているので、不安なく働けると思います。
Q.ナンシーの訪問エリアを教えてください
増渕:訪問エリアは東京23区と横浜市、あとは仙台市でもナンシーは運営しています。各スタッフが担当するエリアは、電車やバスの乗車時間1時間~1時間半ほどで通える範囲でエリア分けしています。
Q.訪問時のタイムスケジュールはご家族と相談して決めるのですか?
増渕:ご家族と大まかに決めているケースもありますが、排痰ケアや胃ろうの注入などは、こちらのタイミングにお任せいただいている場合も多くあります。お子さんの体調や機嫌に合わせてケアを組んでいることも多いですね。
Q.看護師一人あたりが担当するお子さんは何名くらいですか?
増渕:ナンシーの場合、看護師一人が担当するのは大体10〜12名くらいです。複数名で担当しているので、週ごとに訪問する人を調整して、それぞれのお子さんのところであまり訪問の間があかないようにしています。
Q.重度の医療的ケアの必要なお子さんを訪問する際、療育として絵本やマッサージ以外に何をしていますか?
増渕:先ほどのBくんの事例でも紹介しましたが、制作活動を一緒にやっています。例えば、絵の具をつけたビー玉を空き缶の中に入れて画用紙の上で転がして線を描くなど、お子さんの動かせる部分を生かせるような遊びをしています。
フローレンスの障害児保育・支援事業について
フローレンスではナンシーだけでなく、複数の障害児保育や支援事業を展開しています。それぞれに特徴があり、看護師の関わり方も異なります。各事業についてご紹介します。
【障害児保育園ヘレン】障害児・医療的ケア児専門保育園
障害児・医療的ケア児を専門に長時間保育する、日本ではじめての保育園です。看護師は、保育スタッフやリハビリスタッフと連携しながら、チームで保育をしています。経管栄養や吸引、吸入、呼吸器管理といった医療的ケアは看護師が担当しています。
【障害児訪問保育アニー】障害児・医療的ケア児向けの自宅での保育
専門的な研修を受けた保育スタッフがご自宅を訪問し、保育を提供します。看護師は週3回ほど訪問し、お子さんの体調管理を受け持ちます。保育園看護師のような立ち位置で、保育スタッフや保護者の相談にも積極的に看護師が対応しています。
【医療的ケアシッターナンシー】看護師によるシッターサービス
週に1〜2回、1回に2〜3時間ほど障害児や医療的ケア児を在宅でお預かりします。従来の訪問介護よりも長時間の訪問を実現し、親御さんに休息や好きなことに使っていただく時間を提供します。対象は18歳未満で、吸引や経管栄養、人工呼吸器や気管切開などに対応します。また、未就学児のお子さんについては保育の制度で週に4回、1回あたり3時間ご自宅に訪問して、親御さんの就労をサポートすることもあります。
【インクルーシブひろば ベル】障害の有無に関わらず安心して遊べる場
東京・品川区にある障害の有無に関わらずどんなお子さんも楽しめる遊具やスペース、座位保持椅子などが揃った遊び場。看護師は相談対応、見守りなどを担います。
地域で生きる親子に寄り添う 看護師としてできることを
フローレンスの看護師はお子さん一人ひとりに寄り添い、ご家族の日常に伴走し、ともに悩み、喜びを分かち合う仕事です。病棟勤務の経験しかないという方でも、それぞれの強みを活かしながらチームで取り組むので安心。看護師として親子にじっくりと向き合う新たな働き方は、今後のキャリアにもきっとつながるはずです。
支援を待ち望んでいる親子はたくさんいます。ぜひ私たちと一緒に、よりたくさんの親子を笑顔にするお手伝いをしませんか?
オンラインの説明会では、WEBサイトではお見せできない実際のお仕事の様子を動画でご覧頂けたり、仕事の内容についてより詳しくお話いたします。またオンラインにて個別相談会も行なっておりますので、ぜひご参加ください!
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