2023/03/25
【仙台で医療的ケア児の保育がしたい!】滋賀・オリーブ守山保育園に学ぶインクルーシブ保育
こんにちは!私はフローレンス仙台支社でライターをしている小澤と申します。医療的ケア児の息子を育てているのですが、その過程で様々な壁にぶつかり、それを解決したいと思い、フローレンス仙台支社の皆さんと一緒に活動しています。
医療的ケア児とは、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な子どものことです。新生児医療の進歩などを背景にその数は15年で約2倍になり、全国に約2万人いると言われています。
フローレンスは2014年から日本で初めて医療的ケア児を専門に長時間お預かりする「障害児保育園ヘレン」を設立するなど、医療的ケア児家庭の支援に取り組んできました。
しかし、医療的ケア児を預かる施設はまだまだ不足しており、一般の保育園に入ることが難しいケースも多く、医療的ケア児支援法が施行されて1年がたった今でも、預け先が見つからない“保育園難民”が全国で生まれています。フローレンスが事業を展開している仙台市もその例外ではなく、現在仙台市内で保育園を利用している医療的ケア児はたった5人しかいません。
実は筆者も息子の保育園探しに苦労した経験があります。受け入れ先が少なく見つけるまでがまず大変。やっと見つけても今度は自治体に交渉しなければならず、時間と体力を消耗しながら、どうしてこんな思いをしなければいけないんだろう、と悔しい思いをしました。
それは私だけではありません。フローレンス仙台支社ではそんな保護者を何人も見てきました。そして、何とか力になりたい、と考え、仙台で運営している3つの保育園で、今後医療的ケア児の受け入れをしていきたいと現在準備を進めています。
その一環で、実際に医療的ケア児を受け入れている県外の保育園の話を聞く機会を設けました。保育にかかわるスタッフはもちろん、事務や訪問事業に従事しているスタッフなど、仙台支社全スタッフが参加。仙台支社一丸となって医療的ケア児の受け入れを進めるべく、医療的ケア児の保育についてより理解を深める取り組みを行っています。
今回の記事ではその様子の一部をお伝えしつつ、スタッフたちがどんな想いで医療的ケア児の受け入れをしようとしているのか、そして、医療的ケア児の親として私がどう感じたか、について綴っていきます。
「保護者と子どもを社会から分離させない」滋賀県でインクルーシブ保育を実現するオリーブ守山保育園の取り組み
今回お招きしたのは、滋賀県でインクルーシブ保育園を営む株式会社びわこナーシング、代表取締役の角野めぐみさん。
もともと訪問看護師をされていた角野さんは、「仕事をしたいけど預け先(保育園)が見つからない」という親御さんの声を聞き、「そんなことはないだろう」と驚いたそうです。しかし実際に役所などに相談に行くと、「看護師もいないから受け入れできません」と言われてしまったとのこと。「どの子も希望したら保育園に入れる環境をつくりたい」ーそんな思いから保育園を作ろうと思ったそうです。
その際考慮しなければいけなかったのは、滋賀県の特性。「人口の少ない市が隣接しているため、複数の市に医療的ケア児が点在している現状がありました。認可保育園だと複数の市からの受け入れができず、どうしたらいいかと考えた末、行政の枠に縛られない企業主導型ならできる、ということにたどり着きました。」
そうして2018年にできたのがオリーブ守山保育園。今まで預け先がなく離職まで考えざるを得なかった保護者にとって、待望の施設だっただろうことは容易に想像ができます。
角野さんが「できないことをどうしたらできるだろう」と考え続け、様々な人と連携したからできたことです。
一緒にいることで、子どもたちは学んでいく
「保護者と子どもを社会から分離させない」という角野さんの想いは、この保育園を「インクルーシブ」にしたことにも反映されています。
医療的ケア児専門の保育園ではなく、医療的ケアがある子も、健常の子も、一緒に過ごす場にする、ということです。定員の半分まで医療的ケア児を受け入れる、と決め、もう半分は健常児を預かることにしました。
角野さんは保育園で医療的ケア児と健常児が一緒にいるところを見ていると、子どもたちの「学んでいく姿」を実感することがしばしばあるといいます。
「たとえば人工鼻をつけている子が、たまに自分ではずしてしまうことがあるんです。そうすると、『〇〇ちゃんの大事なもの落ちてたよ』と持ってきてくれる。経管栄養の子の注入が終わったアラームが鳴ると、『先生、〇〇ちゃんのご飯おわったよ』と教えてくれる。子どもたちは一緒に過ごす中で、自分たちとは違っても、お友達はこうなんだな、ということを理解してくれてるんです」
インクルーシブの考え方が自然と子どもたちに浸透しているんですね。
最初から全部できたわけではない
保育園を立ち上げて5年。今でこそこのように「保育園で医療的ケア児を受け入れる取り組みの共有」を積極的にされている角野さんですが、最初から今のように全部うまくいっていたわけではない、と言います。
「やってみてからわかることもたくさんありました。でも、子どもたちを見ているうちに、だんだん保育士さんたちが学んでくれて、課題を見つけて共有して、ということを繰り返して今の形になっています。今は子どもたちと接している姿を外から見ると看護師なのか保育士なのか見分けがつかないくらいですよ」
この言葉は、医療的ケア児の保育園での受け入れに初めて挑戦するフローレンス仙台支社のスタッフたちにも、きっと心強く感じたのではないでしょうか。
未知なこともたくさんあるけれど、やっていくうちにこんな素敵な保育園になるんだ、と。
「私たちもやりたい」と意欲を燃やすスタッフ
それを表している言葉が、質疑応答の時間に出てきたスタッフからの「私もそういう保育に携わりたい」「理想が詰まった保育園で、やりたいという気持ちが更に熱くなった」という感想でした。
その後行われた「理想の保育園」というテーマのワークショップでも、「障害や医療的ケアがある子もない子も、一緒に保育する」というイメージを描いたグループがたくさん。
私自身、会議に出席していて、参加したスタッフたちの熱意はとても印象に残りました。
会議後のアンケートにも「理想の保育園」「素晴らしい園」という言葉が多数見られました。内容を一部抜粋します。
これじゃん!と、みんなでなんとなくイメージしていた保育園の形を知ることができました
理想が詰まっている保育園!!
こうすればできるんだということがわかり、目標が持てました
「大変だからやらない、できない」ではなく、「私たちにできることは何か、どんなことができるのか」を考えていくことが最も大切なことだなと話を聞いていて感じました
工夫をしながら健常児、障害児共に愛情溢れる保育をしているところに素晴らしさを感じました。
フローレンスの保育園のこれからがとても楽しみになる言葉ではありませんか。経験のないことに挑戦しようとするとき、不安や怖さがあるのは当たり前です。しばらくは試行錯誤が続くでしょう。最初から完璧にすることは難しいですから。
それでも「やろうとする気持ち」があれば、角野さんがおっしゃっていたように、課題を見つけ、共有し、どうしたらもっとよくなるか、という議論の繰り返しの先に、必ずいい方向に向かっていくと、私は思います。
フローレンス仙台支社のスタッフには、「やろうとする」気持ちが間違いなくあると、私は感じました。医療的ケア児と、その家族のために何かしたい、そんな思いが各々から伝わってくるのです。
そんな姿を見ていて私は、いち医療的ケア児の親として「この人達になら子どもを預けたい」と思いました。技術や知識なんて、経験を積めば自然と会得していきます。一番大事なのは、やろうとする気持ちです。綺麗事かもしれません。なにか根拠があるわけでもありません。けれど、「医療的ケア児」というだけで保育園に預けたいと言ってもけんもほろろに断られてきた今までを思うと、「受け入れたい」という強い思いでこうして知識を吸収し実行しようとする姿に、期待せずにはいられないのです。
こんなに意欲にあふれたメンバーたちがつくる保育園なら、きっと子どもが楽しく、安全に過ごせる場になる。私はそんなフローレンスの保育園の未来を想像しました。
以上、仙台の新たな取り組みをご紹介しました!
フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本の子どもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。
これからもフローレンスは新しいあたりまえの実現に向けて、一丸となって取り組んでいきます。ぜひ応援よろしくお願いします。
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