2023/12/19
【2023年の活動振り返り】寄付者さんとともに、すべてのこどもたちが希望を持てる未来へ
2023年は、4月に「こども家庭庁」が発足し、政府も「異次元の少子化対策」のひとつとして「子ども関連予算倍増」を打ち出すなど、「こども」に大きな注目が集まった1年となりました。
フローレンスは、こどもを真ん中に据え、社会全体でこどもと親を支える国を目指し、2022年よりこども家庭庁で実施すべき8つの政策「こども家庭庁八策」を提言し、子育て家庭へのアウトリーチ型支援の拡充や、こどもを性犯罪から守る仕組み(日本版DBS)の導入等を訴えてきました。
フローレンスの提言が、国の施策に
2023年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」(以下、「骨太の方針2023」)」には、フローレンスがかねてより提言してきた「みんなの保育園構想(保育園を就労の有無に関わらずすべての人にひらく)」と同じ趣旨の「こども誰でも通園制度(仮称)」が盛り込まれたほか、仲間とともに提言してきた「こどものウェルビーイング指標」「男性育休の取得推進」が入りました。
さらに、「子育て無料社会」として提言してきた子育て世帯への経済的支援や、「伴走型相談支援」について記載されたほか、「医療的ケア児支援の強化」「こども宅食」「日本版DBSの導入」も昨年に引き続き盛り込まれています。
しかしながら、こどもを取り巻く環境は依然厳しいものがあります。
相対的貧困状態にあるこどもは約9人に1人、児童相談所の虐待相談対応件数は約2万2千件と過去最高を記録し、赤ちゃんの遺棄事件、学習塾や習い事の場での児童盗撮事件といったセンセーショナルなニュースも流れてきました。
これらの社会課題の一つひとつに向き合い、真に「こどもまんなか」の社会を実現するために、フローレンスを応援してくださる企業さんや寄付者さんとともに、2023年にフローレンスが取り組んできた活動をご紹介します。
<2023年活動INDEX>
1.孤育て家庭を社会で支える「無園児家庭に『みんなの保育園』を!」
2.こどもたちを性犯罪にあわせない社会を「制度」でつくる!「日本版DBS」をより実効力のある制度へ
3.#赤ちゃん遺棄をゼロに 制度の狭間にいる妊婦に支援を届ける、「フローレンスの無料産院」事業
4.困窮する子育て家庭に必要な支援を届ける、フローレンスの取り組み
5.すべてのこどもたちに、かけがえのない思い出を届けたい #夏休み格差をなくそう
6.医療的ケア児とその家族が、行きたい場所に、あたりまえに行ける社会へ
7.思い出が作れない全国のこどもたちに体験を届けたい!「こどもの体験格差解消プラットフォーム」構想始動
1.孤育て家庭を社会で支える「無園児家庭に『みんなの保育園』を!
1歳と2歳の娘、5歳の息子がいます。夫は平日深夜まで仕事です。去年は就労していなかったので保育園に入れられず、一日中3人をひとりで見ておりましたが、気が狂いそうで、窓から飛び降りたい日が何日もありました。
フローレンスが運営する一時保育室を利用している皆さんに、保育園に入園できなかった経緯やその後の育児の様子について伺った際に寄せられた声です。
フローレンスは、保育園にも幼稚園にも通っていない“無園児”(未就園児)が孤立するリスクをなくすため、親の就労の有無などによって定められる“保育の必要性”認定がなくても、希望するすべての親子が利用できる「みんなの保育園構想」を政府に提言してきました。
この提言の後押しもあり、「こども誰でも通園制度」が「骨太の方針2023」に盛り込まれ、2023年6月に制度化に先駆けてモデル事業が全国31自治体で開始され、中野区と仙台市ではこの実施事業者としてフローレンスが採択されました。
この制度では、保育所や幼稚園に通っていない、いわゆる「無園児」の0~5歳の子どもを、定員に空きのある保育所で週1~2回程度受け入れます。
「孤独な子育て」に追い込まれ、不安や孤独を誰にも相談できずにいる無園児家庭に保育を提供することで、虐待のリスクを減らせるだけでなく、保育園で幼少期からたくさんのこどもや大人と関わることで、こどもの心身の発達にも大きな良い効果をもたらすことが期待できます。
フローレンスは、東京都中野区、仙台市での実践を積み重ねて、その重要性や課題点、制度の活用方法について積極的に発信し、より良い制度につながるよう、保育現場での実践と政策提言を続けてまいります。
2.こどもたちを性犯罪にあわせない社会を「制度」でつくる!「日本版DBS」をより実効力のある制度へ
2023年8月、大手学習塾の講師による児童への性被害が大きく報道され、「日本版DBS」導入の機運が一気に高まりました。
「日本版DBS」は、こどもと関わる職業に就く人の性犯罪歴を照会できる制度で、フローレンスが保育事業当事者として2017年より導入を訴えてきた制度です。
「こどもたちを卑劣な性被害から守りたい。」
何年にも渡る提言が実り、ついに令和5年度(2023年度)こども家庭庁の予算概算要求に「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組み(日本版DBS)の導入に向けた検討【新規】」が加わりました。
しかしながら、国がその対象施設を保育園・学校に限定しようとしているという報道がなされたことから、2023年8月、フローレンスは国に対し、塾や習い事、無償ボランティアも含めた「こどもと関わる仕事すべて」において、性犯罪歴がある人を立ち入らせないよう求め、小児科医や産婦人科医の方々と共同で全国緊急署名活動を開始。8万筆を超える署名を集め、要望書とともにこども家庭庁の小倉こども政策担当大臣(当時)へお渡ししました。
「日本版DBS」は、2023年秋の臨時国会での法案提出が期待されましたが、残念ながら2024年以降に先送りとなりました。
法案成立がこれ以上先延ばしにならないよう要望を続けるとともに、小児性被害防止に向けて、データベースの整備だけでなく、こどもたちの心と体を守る意識を高めるための「セーフガーディング研修」の義務化など、さらなる提言も進めていきます。
3.#赤ちゃん遺棄をゼロに 制度の狭間にいる妊婦に支援を届ける、「フローレンスの無料産院」事業
2022年に虐待で命を落としたこどもは50人(心中以外)で、そのうち約半数の24人が、0歳児の赤ちゃん。主たる加害者は「実母」が40%を占めています。(*)
*こども家庭庁「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)(令和5年9月)」
「生まれたばかりの赤ちゃんが遺棄される悲しい事件をなくしたい。」
そんな強い思いから、フローレンスは2022年に「#ふるさと納税でこどもを助ける」を合言葉にクラウドファンディングを実施し、いただいたご寄付を原資に、2023年6月、健診費用や出産費用を妊婦に代わって提携先の病院に支払い、妊婦が安心して出産できるようサポートする、日本初の「無料産院」事業を立ち上げました。事業開始から半年で提携病院は3院に増え、2023年11月までに5人の妊婦の出産に伴走しています。
今後は、寄付者の皆さんのお力を借りながら、フローレンスの「無料産院」の提携病院を全国に広めていくことで、経済的に困難な状況にある妊婦が、全国のどこからでも相談できて、その先の支援に結びつくことができるようにしたいと考えています。さらに、フローレンスの「無料産院」事業を通じて、各地域での困りごとを抱えた妊婦の事例を集め、適切な制度を政策提言し、誰でも安心して出産の日を迎えられる社会の創造を目指します。
4.困窮する子育て家庭に必要な支援を届ける、フローレンスの取り組み
こども家庭庁が創設され、こどもに関する取り組みや、子育て家庭への支援の充実が期待されましたが、残念ながら、この1年でこどもや子育て家庭を取り巻く環境が大きく改善されたとは言えません。
それどころか、長引く経済の停滞や物価高騰のあおりを受けて、ひとり親家庭などは一層厳しい状況に追い込まれています。経済的に厳しい状況にある子育て家庭では、大人が食事を抜いて節約することもあるといいます。
フローレンスは、多くの企業さんや寄付者の皆さんのご支援を受けて、病児保育やこども宅食など、様々な形でひとり親家庭や経済的に厳しいご家庭に支援を届けています。2023年10月には、全国の子育て家庭に食支援を届ける 「こどもフードアライアンス」の第3回配送を実施し、食品メーカーおよび日用品卸の34社協賛のもと約2.5万世帯に食品約23.7万食、日用品約2.4万個、合計26.1万点の物品を届けました。
また、オンラインと対面の支援を組み合わせて子育て家庭に伴走する新しい支援モデル「ハイブリッドソーシャルワーク」を実践し、自治体との取り組みを広げています。
5.すべてのこどもたちに、かけがえのない思い出を届けたい #夏休み格差をなくそう
2023年7月、フローレンスは子育て家庭に支援を届けるなかで見えてきた課題を解消するために、新たなプロジェクトを始動しました。それが、「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」です。
経済的に困難な状況にあるご家庭では「食」を優先させるため、家族旅行や映画鑑賞、スポーツ観戦といった「体験」はどうしても後回しにせざるを得ません。
フローレンスは、こどもたちの教育・体験の格差が拡大しやすい夏休み期間において、ひとり親家庭や経済的に厳しい子育て家庭を対象に体験の機会を提供することで夏休み格差を埋める「#夏休み格差をなくそう プロジェクト」を実施し、複数の企業からの賛同と全国からの寄付を原資に、2ヶ月半で全国約3,000世帯のひとり親家庭や経済的に厳しい子育て家庭に様々な体験を届けました。
一度行ってみたいと言っていた回転寿司。こどもが目をキラキラさせて「来れて嬉しい!しあわせ!」というのを見て、思わずその場で泣いてしまいました。家に帰ってからも、お寿司の話ばかり。わたしとこどもの夏休みの最高の思い出になりました!
いただいたメッセージからは、このプロジェクトを通して届けた体験が、こどもたちや親御さんの心に残る思い出となり、明日を生きる力となったことを実感することができました。
一方で、プロジェクト開始後に当初の想定を大きく上回り、募集枠に対して約3倍ものご家庭から申し込みが殺到したことからも、体験機会を提供することへのニーズの高さが明らかになり、「夏休み」という一過性の体験提供ではなく、すべてのこどもたちがあたりまえに学びと体験の機会を得られるよう、さらなる取り組みが必要であることを改めて認識しました。
6.医療的ケア児とその家族が、行きたい場所に、あたりまえに行ける社会へ
経済的な困難を抱えるご家庭だけではなく、障害児・医療的ケア児や、その家族も「体験格差」の問題を抱える当事者です。2014年より障害児家庭支援に取り組んできたフローレンスは、これまでにも重度障害児・者のe-sports大会や、医療的ケア児のおやこ映画会などを企画し、障害のあるお子さんやそのきょうだい児も含めたご家族にも体験の機会を提供してきました。
2023年は、企業さんの協力を得て「医療的ケアシッター ナンシー」を利用中の3つのご家庭の『遠足プロジェクト』を実現しました。
また、8月にはフローレンスの支社のある仙台市で医療的ケア児家庭を包括的に支援する 「#医ケア児もいっしょに まざらいんキャンペーン」をスタート。医ケア児とその家族が、行きたい場所に、あたりまえに行ける社会への第一歩として、「医ケア児おやこ映画会」を8月に2回開催しました。
「医ケア児おやこ映画会」に参加した親子からは、「普段こどもを連れていくにはハードルの高い映画館に連れて行けて嬉しかったです。」「吸引器の音等も気にせず使用できて楽しめました。」「(医療的ケア児の)妹が、目を開いて集中して見ていました」といった感想が寄せられました。
7.思い出が作れない全国のこどもたちに体験を届けたい!「こどもの体験格差解消プラットフォーム」構想始動
2023年10月末、フローレンスは「こどもの体験格差」を解消するための「こどもの体験格差解消プラットフォーム」新規事業構想を発表しました。
この「こどもの体験格差解消プラットフォーム」は、ひとり親家庭、経済的に厳しい家庭、医療的ケア児家庭などの「体験貧困家庭」へ体験を届けるものです。こどもの体験格差という社会課題の解決に向けた活動に共感する企業から、レジャー施設や外食、体験教室などの機会を提供いただき、ご家庭の状況や住んでいる場所など、属性に合わせて情報を提供します。
また、体験提供をきっかけに、支援を必要としているご家庭へアウトリーチし、こどもの体験や適切な支援につながる情報提供や、ご家庭への相談支援なども行います。
本事業は、2024年夏のサービス開始を目指し、ご寄付を原資に立ち上げを行う予定です。
「こども体験格差解消プラットフォーム」が、「体験したい」というこどもたちの気持ちを後押しして、あらゆることに挑戦できる未来をつくり、社会全体でこどもたちの成長を見守ることのできる、優しい社会になることを願っています。
フローレンスを応援してくださる皆さんとともに、すべてのこどもたちが希望を持てる未来へ
2023年はコロナが収束に向かい、数年ぶりにかつての日常が戻ってきた一年となりました。その一方で、世界各地で争いが起き、日本国内でも停滞する経済と物価高騰の影響がますます深刻になり、日々の暮らしに暗い影を落とし続けていました。
このような時代にあっても、フローレンスが活動を継続し、さらに新たなプロジェクトを始動させることができたのは、こどもたちの未来のためにフローレンスとともに歩んでくださる皆さんの応援やご支援があったからこそです。
2024年もフローレンスは「こどもたちのために、日本を変える」をスローガンに、活動に邁進してまいります。すべてのこどもたちが希望を持てる未来の実現に向けて、これからもフローレンスのご支援・応援をよろしくお願いします。
フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
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