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アクション最前線

2024/03/27

~安心して赤ちゃんを産める場所を作る~ 「無料産院」提携病院3院で事例共有会を実施

 


「無料産院」スタートから8か月 10組の妊婦と赤ちゃんを支援

「生まれたばかりの赤ちゃんが遺棄される悲しい事件をなくしたい」

フローレンスは、2023年6月に「予期せぬ妊娠によって経済的・社会的に孤立に陥ってしまっている妊婦が、安心・安全に赤ちゃんを産めるよう、健診・出産費用を代わりに支払う」日本初の「無料産院」事業を立ち上げました。

事業開始から今年2月で8か月。「無料産院」の提携病院の 第二足立病院(京都)、まつしま病院(東京)、いとうレディースケアクリニック(岐阜)の3院では、これまでに10組の妊婦とお腹の赤ちゃんをリスクの高い孤立出産から守ることができました。

今回、この3院の「無料産院」事業の担当がオンラインで集まり、それぞれの病院で「無料産院」の対象となった妊婦の受け入れケースを共有。「無料産院」事業を進める中で共通する課題についての意見交換や、今後の展望について話し合いました。

「誰にも相談できなかった」
相談者によって、事情や背景は複雑でさまざま

予期せぬ妊娠をし、フローレンスや提携病院に相談に来てくれた人が、必ず口にするのは「誰にも相談出来なかった」という言葉。

「パートナーが突然いなくなった」「性被害」「風俗関係など夜の仕事」そもそも「妊娠・出産に対しての知識がない」など、予期せぬ妊娠には、それぞれの事情や抱えている複雑な背景があります。

それに加え、誰にも相談できず、社会的にも経済的にも追い詰められることで、相談者が「孤立状態」に陥り、事態は深刻化していくケースが多いのです。頼れるところを失った結果、孤立出産、心中、赤ちゃんの遺棄にまで至ってしまうこともあります。

「無料産院」提携病院では相談受け付けから出産までを支援

現在「フローレンスの無料産院」の提携病院では、妊娠後期の方を対象に「にんしん相談」を受け付けており、フローレンスが妊婦健診・出産費用を代わりに支払うことで「無料で」出産することができます(※支援決定のための審査あり)。提携病院は現在、第二足立病院(京都)、まつしま病院(東京)、いとうレディースケアクリニック(岐阜)の3院と、2024年2月から、岐阜県岐阜市にある操レディスホスピタルが加わり、合計4院で事業を行っています。

無料産院提携病院はこちらから

それぞれの病院で、経済的にお困りの方の妊娠出産に関する相談を受け付けています。また「フローレンスのにんしん相談」へ来た相談も、各病院と連携し対応しています。まずは地域の状況を把握している病院が、行政と連携し、適切な支援につなぐ。さらに妊婦と赤ちゃんに対しては、フローレンス・病院・行政などと協力して出産までの金銭支援と出産後の生活支援を行っています。

「無料産院」は「お金がなくても赤ちゃんを安全・安心に産める場所」として、各地域に広がり、相談者がどこに住んでいても必要な支援が受けられる場所を作ることを目指しています。

 

提携病院が初めて顔合わせ 「事例共有会」開催

今回の事例共有会では、第二足立病院・まつしま病院・いとうレディースケアクリニックの3院の担当者が、オンライン上で初めて顔を合わせました。

まずフローレンスの事業担当から、事業全体の報告を行いました。

「無料産院」事業で出産まで支援 今年2月までの8か月で10例

支援した方からの声も共有しました。

各病院から報告されたさまざまな受け入れ事例

続いてそれぞれの病院から、受け入れ事例を発表。その一部を紹介します。

1院目の病院は、「行政からの紹介」事例が多かったことを報告。
国や行政から受けられる特定妊婦支援などがある場合でも、住民票がない、無保険状態、今は収入が途絶えているが去年度は収入があり支援対象から外れてしまうなど、「制度の狭間」にいる相談者が、自治体の支援制度の対象から外れてしまうケースがあることが報告されました。

行政の窓口に相談しても現状の制度では経済的支援が難しく、行政側から病院に「無料産院」事業で支援ができないか、と妊婦を紹介され、実際に支援を複数件行い、無事に出産した後は、母子生活支援施設への入所など、行政支援につながっています。
「現場の行政の担当者から、『無料産院があったから救えた』という言葉をいただいた」という事例も報告されました。

2院目の病院からは、「無料産院」を報じたニュースを見て、遠方から相談者が来院されたケースが報告されました。

この相談者は、隣の県に住んでいて通院が難しい距離だったため、はじめは「初回受診料支援」のみを行いました。しかし、出産費用を工面することが難しいとの相談もあり、協議を重ね支援を決定。出産までサポートすることになりました。通院から入院の間も、相談者の住む地域の行政とやり取りを重ね、産後は地元で支援を受けられるようにつなげることができたとのことでした。

3院目は、この共有会直前に対応した事例を発表しました。

相談者は、パートナーと別れたあとに妊娠が発覚しましたが、パートナーと一切連絡が付かず、また自身の家族に妊娠を打ち明けることができないまま、どんどんお腹が大きくなってきて困っていました。そのときにインターネット検索で地元の「無料産院」を見つけたそうです。

初回受診の後、別の病院に通うとのことで一度連絡が途絶えましたが、やはりこの病院にお世話になりたい、と再度連絡があり、無事に出産しました。

今も対応は継続していますが、他の病院担当者からは「一つの命を救いましたね」と、お互い難しい現場対応を知っているからこその労いの言葉がかけられました。

行政との連携や支援者への対応について 意見交換

話し合いの中で、一番にあがったのは行政との連携の難しさでした。
「無料産院」の支援対象になった妊婦さんについて、「どのような状態の人」か、行政側が把握していたとしても、病院へは「個人情報の壁」があり、詳細は連携されないことが3院ともに共通する悩みとしてあげられました。

例えば支援する妊婦が、第一子も含めて「要支援家庭」として行政支援を受けている場合、病院は行政から「要支援家庭」であることの情報すら受けることが難しいのが現状だと言います。

経済的にも社会的にも孤立している妊婦に対しての支援は、安心・安全な出産のサポートと、赤ちゃんを迎えた後、健やかに育んでいくためにも、その「家族」の様子を把握した上で、必要なサポートをしていくことが重要です。行政からあらかじめ「家族」に関する情報共有があれば、お母さん側へのケアなど、病院だからこそできることもある、と病院側は考えますが、「個人情報の壁」に阻まれてしまうことによって支援の困難さが生じてしまうのです。

行政と病院が連携をより深め、適切に情報共有を行っていき、その親子にとって本当に必要な制度につなげていき、産後の生活を見通した上での支援を行っていくことが、「無料産院」事業が目指していくべき姿なのでは、という意見も出ました。

次に、「メールでの問い合わせ対応にしているが、他院はどうしているか。相談者との連絡が途切れてしまうことがあり心配しているが、他院の対応を聞きたい」との問いかけがありました。

「問い合わせはフォームからのみとし、連絡先欄を必須項目にしている」
「メールではなくあえて電話のみの受付をしている」
など、各病院が試行錯誤しながら、相談者との連絡を途切れさせず、確実につながり続けるコミュニケーションのアイディアが共有されました。

また、「つながり続ける難しさ」については、別の話もあがりました。

「無料産院」は、お腹が大きくなってきた妊娠後期の方が支援対象ですが、「相談者が最初から全てお話してくれるとも限らず、ポツポツとやりとりを続けているうちに、中絶できない週数になる場合もある」と、どこまで相談を受けて行くべきか悩んでいる、とのことでした。

誰にも相談出来ずに悩んでいた人が、勇気をふり絞って連絡し、やり取りを重ねていく中でやっと動くことができたという人も少なくありません。関係性を構築して、信頼してもらうには時間も必要になります。

「妊娠したかもしれない」「中絶するかどうか悩んでいる」といった、まだ妊娠後期ではない方からの相談でも、可能な範囲で必要な対応として受けていくのが良いのでは、という意見が出ました。

「無料産院」がこれからできること

他にも、各病院から率直な意見も出されました。

「実はもっと問い合わせが来るかと思った」
「『無料で妊娠相談』や『中絶の相談ができる』という誤解もあるようだ」

「無料産院」が、予期せぬ妊娠をした際の相談先として知ってもらうことはできていても、一般的な妊娠相談ができる先もまだまだ不足している、という現状があるということも改めてわかってきました。これについては、各病院からも積極的に発信して行く必要があるという意見も出ました。

また「本当の課題は何なのかが、なかなか行政にまで届いていないのが現状。何からの問題を抱えながら、勇気を出して相談にきてくれた妊婦の声を集め、国に今後の支援への課題提起をしていくべきだ。」という意見もあがりました。

それについて、フローレンスの事業担当からは、
「経済的・社会的に困窮する妊婦が、何にどの段階で困っているのか、その声を丁寧に集めて、ナレッジをため、よりよい制度を作ってもらえるよう国や自治体に提言していきたい。そのためにも、まず本当に困っている人に「無料産院」があることを知ってもらうこと、悩み苦しんでいる人を一人でも多く支援していき、ナレッジをためていきたい。各病院との連携を強化しながら、一丸となって取り組んでいければ」と話しました。

赤ちゃん遺棄ゼロを目指し、スタートした「無料産院」事業。
今、現状の国や行政の「制度の狭間」に陥ってしまった人に手を差し伸べているのがフローレンスと「無料産院」の病院です。

今回の事例共有会では、参加者全員が「赤ちゃん遺棄をゼロに」という同じ思いを持って事業を進めていることを改めて確認しました。今後も定期的に情報を共有し、「みらいの赤ちゃん」を守るために、力を合わせていきます。

「赤ちゃん遺棄」をなくしたい、とそれぞれの地域で取り組まれていたり、「無料産院」事業について詳しく知りたいとお考えの医療機関がありましたら、是非お問い合わせください。

医療機関からのお問い合わせはこちら

「無料産院」事業を、共有と寄付で応援してください

フローレンスの「にんしん相談」そして、「無料産院」事業は、寄付者の皆さんのご支援なくしては成り立たない事業です。皆さんのあたたかいご支援によって私たちが活動でき、それによって助けられている人がいます。

「無料産院」事業を全国に展開し、ひとりでも多くの人を救うためには、まずは赤ちゃん遺棄の背景にある課題を多くの人に知っていただくことも必要です。ぜひ、周りの人に広めることで、社会を変える一助になっていただければと思います。




フローレンスでは、社会問題や働き方など、これからもさまざまなコンテンツを発信していきます。
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