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アクション最前線

2024/04/30

障害児保育のヘレン・アニーから15名が卒園 ~こどもの”生きる力”に伴走するフローレンス保育~

   


今年も、障害児保育園ヘレン(経堂/中村橋/荻窪)・障害児訪問保育アニーで卒園式が行われ、15名のお子さんたちが卒園を迎えました。

2014年に障害児保育園ヘレンが開園し、今年で10周年になります。
当時、医療的ケア児を長時間預かる施設がほとんどなく、保護者が24時間ケアし疲弊している・働きたくても働く選択肢がない状況でした。フローレンスはそういった環境をなんとかしたいと、日本で初めて障害児を専門に長時間保育する「障害児保育園ヘレン」を立ち上げました。
その翌年には、施設があっても感染によって重篤化する懸念があるなどの理由で通うことのできないお子さんをご自宅でお預かりする「障害児訪問保育アニー」をスタート。

2023年度までにヘレン・アニーでお預かりしてきたお子さんは延べ238名です。

ヘレン・アニーは専門性の高い保育・看護スタッフが連携しながら、卒園後もお子さんたちが地域で力強く育っていけるよう、一人一人のお子さんの特性に合わせた丁寧な保育を行っています。

お子さんたちはそういった安心できる環境の中で、お友達からも刺激を受けながら、それぞれの個性あふれる成長を見せてくれました。
今回は、今年の卒園式の様子とともに、ヘレン・アニーで育ったお子さんたちの成長の様子をお届けします!

入園時は一人遊びが好きだったIちゃん。集団で過ごす中で友達に興味を持つように


(先生の一人が描いた在園児と卒園児の似顔絵。先生たちもお子さんたちもお気に入りの絵です)

今年、障害児保育園ヘレン経堂から卒園するのは、3名のお子さんです。
普段の保育中に過ごすお部屋は、クラス全員分の似顔絵や紙で製作したお花など先生たちが心を込めて飾りつけをして、とても華やかでした。

卒園式では、先生たちと手話をしながら「にじ」を歌い、証書や手作りの色紙を受け取って、ご家族みんなでスライドショーを見ながら園で過ごした日々を振り返りました。


(親御さんが見守る中、先生と「にじ」を歌います。いつもは一緒に手話をやるのですが、当日は緊張して先生の顔をじっと見ていました)

卒園式後も名残惜しい雰囲気で、先生はお子さんたちとおしゃべり。この大切な一日をめいいっぱい楽しんでいる様子でした。

卒園児の一人のIちゃんは、入園した頃は周囲の人への興味がそれほどなく、手のひらサイズのボールや丸みのあるキャラクターのおもちゃを見つけては一人遊びをしていることが多いお子さんでした。

担任のみき先生はそんなIちゃんの個性を大事にしながら、「安心して関われるスタッフを作ることから始め、その後、集団での活動や、『やりたいことや欲しいものをみんなに伝えても良いんだよ』と周りに自分の気持ちを伝えることに徐々につなげていった」と言います。

「色んな活動を一緒にやっていくうちに、Iちゃんがボール以外のものに興味を示し始めたんです。表にははっきり出てないのですが、『頭の中になにかのメロディーが流れているんじゃないかな…?』と思わせるような素振りを見せることがありました。一緒に音楽を聞いて歌ったり踊ったりしているうちに、少しずつ曲に合わせて体を動かし始め、気管切開を卒業して声が出ることに気づくと歌声を聞かせてくれるように。友達への関心にもつながって、みんなの名前を呼んだり、『この先生とやりたい』など自ら教えてくれたりするようになりました」


(クラスのお友達の似顔絵を先生と見ながら、みんなの名前を呼ぶIちゃん)

スタッフとの信頼関係が積み重なってくると、食事にも変化が見られるようになりました。
「色んな味を経験してほしい」と、ヘレンでも入園時から少しずつトライしていたものの口周りの敏感さから、最初はなかなか進まず、胃ろうでの食事が中心でした。
変化が訪れたのは年長さんになった頃です。

「信頼できるスタッフに声をかけられると、『この人が言ってることならやってみよう』とIちゃんが思ってくれるようになったと感じています。『食べてから遊ぼうね』など先生とお話しながら、少しずつごはんを食べるようになり、最終的には自分から進んで食べるようになりました」
と、Iちゃんと過ごした日々を懐かしみながらみき先生が話してくれました。


(インクルーシブひろば ベルへ卒園児で遠足に行きました。お弁当、おいしかったね)

自身がもともと持っていた力と、先生たちのお子さんの個性に合わせた関わりがあいまって、素敵な成長を見せてくれたIちゃん。ご卒園おめでとうございます!

▼担任のみき先生のメッセージ

いつもボールを持ち歩いて一人で遊んでいたIちゃんが、お友達や先生と関わり、一緒に踊ったり、人の遊びに興味を持ったりするようになりとても大きくなったなぁと思います。

医療的ケアがあるお子さんの中には発達に合わせたコミュニケーションの必要なお子さんがいます。一緒に踊ったり、ふれあったり楽しい時間を共有しながらさまざまなコミュニケーション方法を用いて、過ごしてきました。
ヘレンで経験したことやできるようになったことが大切な糧となり、小学校に行っても力強く歩んでくれるのではないかと思います。

 ▼親御さんのメッセージ

このたび、無事に娘の卒園を迎えられたことを大変うれしく思います。 娘は先天性の疾患をいくつも抱えた状態で生まれ、たくさんの手術を乗り越えながら、約1年を病院で過ごしました。
入園当初の娘は医療的ケアがある上に、手足や口の過敏が強く、発達もゆっくり。特に食べることが苦手で、スプーンを近づけるだけで払いのけられる日々でした。そんな娘にもヘレンの先生たちはいつも優しく向き合ってくださいました。
スヌーズレンや移動水族館などの室内遊びをはじめ、公園遊びや時には電車に乗って買い物に行くことも。家ではなかなかできないことをたくさん経験することで徐々に過敏も減り、今ではお弁当を完食することができるようになりました。
身支度やトイレも少しずつできるようになっていて、娘の成長には日々驚かされています。

普段、仕事と日常を回すことで手一杯なわたしたちですが、ヘレンだからこそ医療的ケアのある娘を安心して預けて仕事をすることができました。今後も病気や障害があるこどもの親が、働くことを諦めずに輝ける環境が整っていくことを願っています。

お子さんの「伝えたい!」気持ちを大切に。聴覚障害のお子さんと先生の日々


(普段なかなか会えないお友達と大集合!普段はオンライン交流会を行い、歌や楽器を一緒に楽しんできました。卒園式の歌も一緒に練習しました)

アニーの今年の卒園児の人数は8名。神保町オフィスの6階で開催され、例年よりも多い人数で賑やかな式になりました。
普段はそれぞれ自宅で担任の先生と過ごすので、お友達と会えるのはとても貴重な機会です。


(担任の先生に抱っこされながら、手話で一緒に曲を表現します)

アニーの卒園式は毎年みんなで遊びながら楽しむ時間がたくさんあります。
今年は先生たちと「せかいがひとつになるまで」を手話を交えながら歌ったり、「どんな色が好き」の曲に合わせて、名前を読んで拍手しながらお子さんたちが好きなものを紹介したりしました。

また、卒園児がきょうだいと一緒にパラバルーンに入り、音楽に合わせて遊ぶ時間も。保護者からは「安心して楽しめる空間だった」「こどもたち皆が大事にされているのが伝わった」という感想をいただきました。

温かい笑顔と涙に包まれて楽しい雰囲気の中、こどもたちが保護者と退場し、卒園式は幕を閉じました。


(元気よくお母さんと一緒に退場するHくん)

卒園児の一人、Hくんは2019年からアニーを4年間利用しました。生まれた時から呼吸障害があり、就寝時や訪問看護師が来る際には呼吸器のBIPAPを使っていました。


(呼吸器をつけながら先生と一緒におはしの練習をするHくん。色んな活動にとても熱心なお子さんです)


Hくんは聴覚障害があり補聴器を使用しているのですが、もともと誰かと一緒に過ごすことが大好きで、自分の希望を相手に伝えることに意欲的なお子さんでした。

Hくんが持っているコミュニケーション力と意欲を大切にしてあげたいと思いました」と担任のつや先生。

自分の気持ちが伝わらないと思い、伝えることをイヤになってしまうととてももったいない。困ったり心配しているときには、手話で『分かっているよ』と伝え、何か要求してきてくれたら丁寧に受け止めました。Hくんはがんばり屋さんなので、『難しいよ』と断ったときも粘るんです。でもそれも大事なことで、そこから交渉が始まります。もちろんとても時間はかかるんですけどね(笑)」

そういった日々の積み重ねがHくんの力となり、世界がより広がり始めたのが年長さんの頃。
年長さんになって手話でのコミュニケーションがぐんと得意になると、コロナ後に再開した週1回の地域の保育園との交流保育では、積極的にお友達に声を掛けるようになりました。
お友達も手話を覚えてくれたり、一緒に参加している担任の先生を通して会話したりしながら、友達と一緒に過ごし、順番を守ることなど集団で過ごすときのお約束も身につけていきました。


(交流保育で地域の保育園でおもちつきに参加するHくん)

卒園前の最後の1ヶ月は、交流保育で友達と一緒にお昼を食べる経験も!
先生と二人のときは食べさせてほしいなど甘えたり途中で遊び始めたりすることもありましたが、お友達と一緒のときは一人でしっかり食べるそう。友達とのお昼ごはんは、Hくんの大好きな時間でした。

アニーで過ごす中で経験した「伝えてみた」、「伝わった!」、そして「楽しかった!」という日々が、Hくんの卒業後の生活の力になることを願っています。

▼担任のつや先生のメッセージ

あっという間に卒園式の日を迎え、Hくんの小さかった頃の姿を思い出すにつれ、大きく成長されたことを我がことのように誇らしく感じております。

体調を崩してお休みされ、保育ができる日が早く来て欲しいと願ったこともありました。それでも、呼吸器をつけながら運筆やひも通しなどの手先遊びを楽しむ姿を見て、こどもの持つ力はなんと強くたくましいのだろうと驚かされる日々でした。

保護者と一緒に、お子さんの生きる力が発揮されていくのを間近で見ることができ、心から感謝しています。

▼親御さんのメッセージ

息子は1歳6ヶ月頃からアニーにお世話になりました。
当初は、食事はミルクを胃管から注入・血中の酸素飽和度を測るサチュレーションモニターを常時装着と、緊張感のある中、保育がスタートしました。

でも、担任の先生は毎日笑顔で「Hちゃん おはよう!」と訪問して下さり、息子はニコニコ嬉しそうに先生を迎え、出掛けに泣くことも無かったので、何の心配もなく預けて仕事へ出かけることができました。保育中は、アニーの訪問看護師さんも来て体調管理してくださり安心でした。

天気の良い日は散歩へ出かけて、公園では特に好きなすべり台で何度も滑ったり、ブランコも一人で座れるようになり、砂場遊びの苦手も克服しました。少しずつ体力も付いてきて、1時間の散歩も先生と歩いた日も!

交流保育が再開し、近所の保育園へ週1回行けるようになり、同年齢の子供との遊び方・関わり方・集団の中での過ごし方が身について、とても成長したように思います。手話を使いながら、自分の気持ちが伝えられるようになりました。先生が保育中、手話を積極的に使ってくださったおかげです!

帰宅したときは「おかえりなさーい!」と先生の声が聞こえ、ホッとしていました。何よりも、先生方の愛情たっぷりな保育に尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。


つや先生や みき先生のお子さんとの関わり方に共通していたのは、「お子さんのもともと持っている力や個性をよく観察し、お子さんに合う丁寧な関わりを継続すること」です。

障害のあるお子さんは意思の表出が少なかったり、発達も個々のペースで進んだりとお子さんによって異なるため、見極める力がスタッフに求められるのですが、適切な関わりを続けていくと、お子さんたちは安心感の中で、その子なりのペースで色んなことにチャレンジし始めます。

幼少期にそのような「受け止めてもらいながら成長した」実感と経験を重ねていくことは、障害のあるお子さんたちが学校や社会といった新しい環境で一歩踏み出すための大事な力になります。

ヘレン・アニーで過ごした日々が糧となり、お子さんたちが元気よく社会に飛び出し、たくさんの方と手を取り合いながら豊かな日々を過ごせますように。
これからもフローレンスの障害児保育・家庭支援事業は、お子さんとご家庭に寄り添いながら、それぞれが希望する選択のできる未来の実現に向けて取り組んでいきます。

▼ヘレン・アニーの利用を希望される方はこちらから




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