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アクション最前線

2023/10/19

こども誰でも通園制度(仮称)に関する全国アンケート調査を実施。保育現場の声を国に届ける

     


2024年度から、親の就労の有無にかかわらず保育園へこどもを預けられる「こども誰でも通園制度」の本格実施を見据えた試行的事業が実施される予定です。現在そのモデル事業が全国で展開され、制度内容については国と有識者で検討が進められています。

しかし、保育現場からは実施への不安や課題などの声があがっており、現場や利用者にとって適切な制度内容になるのか注目が集まっています。

フローレンスでは、「こども誰でも通園制度」が良い制度として全国で広まるよう、担い手である保育現場の声を政策へ反映してもらいという思いから、保育事業者を対象に「課題」と「ニーズ」に関する全国アンケート調査を行いました。(調査期間:2023年9月22日~10月6日、回答数:405人)

※レポート詳細はこちら:https://florence.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/10/press_231011-1.pdf

<アンケート概要>

調査方法:インターネット上での回答 
調査期間:2023年9月22日(金) ~10月6日(金) 
調査対象:全国の保育事業者(経営者、園長、事務局スタッフ等)
回答数:405人
調査協力:一般社団法人こどもDX推進協会


希望する誰もが保育園に通える日本へ。私たちの取り組み

フローレンスは、2022年度から運営する仙台の保育園で、独自に定員の空き枠を活用した無園児(未就園児)の定期預かりに取り組んできました。利用家庭の声や、昨年フローレンスが実施した無園児家庭に関する全国調査から、保育園等に通っていない無園児家庭は社会とのつながりが希薄になりやすく、特に、専業主婦家庭では母親に育児分担が偏っており、精神的な負担や子育てについての悩み、不安を感じる割合も高いと分かりました。

この調査結果と預かりの実績を元に、国へ定員の空き枠を活用し希望する誰もが保育園を利用できるよう訴えてきました。

「無園児家庭の孤独感と定期保育ニーズに関する全国調査」結果発表。働く親のための保育園から、全ての子どものための保育園へ!
コロナ禍でますます深刻化する孤独・孤立の問題。子育て環境についても例外ではありません。 普段、保育園や幼稚園に通っていない未就園児(無園児)家庭は社会的とのつながりが希薄になりや...

調査結果サマリ

<トピックス>
1.保育事業者の約9割が「自由利用」よりも「定期利用」での受け入れを支持
2.こどもの育ちを第一に考えた場合の預かり頻度・時間は「週3日以上」6割、「1日3時間以上」9割
3.「こども誰でも通園制度」へ期待する点は、在宅子育て家庭との接点創出
4.「こども誰でも通園制度」で不安に感じる点は、「業務負荷」「事務負担増加」に加え、「要支援・要保護家庭の受け入れ」など

◆1.保育事業者の約9割が「自由利用」よりも「定期利用」での受け入れを支持
「こども誰でも通園制度」の制度設計の大きな論点のひとつである利用形態について、保育事業所へ定期的にこどもが通園する「定期利用」と、一時預かりのように様々な利用頻度で通園する「自由利用」、どちらをより積極的に受け入れたいかを尋ねたところ、「定期利用」が43.2%、「どちらかというと定期利用」が45.4%と、「定期利用」の受け入れを望む声は合わせて約9割という結果となりました。

◆2.こどもの育ちを第一に考えた場合の預かり頻度・時間は「週3日以上」6割、「1日3時間以上」9割
「定期利用の場合、こどもの育ちを第一に考えた際に、1人につき望ましい利用頻度・利用時間」を尋ねたところ、利用頻度については「週4日以上」26.7%、「週3日」32.8%と「週3日以上」が合わせて59.5%にのぼりました。また、1日あたりの利用時間については、「3~4時間」45.2%、「5~6時間」36.8%、「7~8時間」10.6%など、「3時間以上」の回答が9割を超えました。

◆3.「こども誰でも通園制度」へ期待する点は、在宅子育て家庭との接点創出
「こども誰でも通園制度に期待すること」を尋ねたところ、「在宅子育て家庭への支援ができる」59.0%、「より多くのこどもに支援が届けられる」38.3%と在宅子育て家庭と接点創出という福祉的な視点での期待が寄せられています。本制度の趣旨である「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する」ことに対して、前向きに捉えている保育事業者が多いことが伺えます。

◆4.「こども誰でも通園制度」で不安に感じる点は、「業務負荷」「事務負担増加」に加え、「要支援・要保護家庭の受け入れ」など
「こども誰でも通園制度に不安に感じていること」については、「保育士の業務負荷が増しそう」が84.4%と最多となり、次いで「事務負担が増えそう」66.7%、「こども誰でも通園児が園に慣れるのに時間がかかりそう」59.0%などが続きました。「要支援や要保護家庭等のリスクの高い家庭の受入れ依頼が行政から来そう・数が増えそう」は54.3%でした。

保育現場からの声

アンケートに寄せられた回答者からの声を一部ご紹介します。

「企業主導型保育所なので通常、お子さんを預かるためには親御さんが仕事をしている必要がありますが、定員に空きが出てきているため所轄が許せば保護者の就労の有無に関わらず、多くの園児を受け入れたいと考えています。」

(期待することは)就労の有無や複雑な条件によらずこどもを預けられること。誰でも安価で利用できること(収入が多いからといって過剰な負担をさせる仕組みにはしない)。預かる側にも金銭的メリットが生じるようにすること。保育者の配置基準を見直すこと。子育て支援と少子化対策の予算を増やすように政治に働きかけること。

まだまだ情報不足で、言葉が独り歩きしている感が否めないです。当園も定員割れを起こしており、本制度への期待も大きい。一時預かりとの違いがよくわからない。

私たちの提言


2023年10月12日(木)開催のこども家庭庁「子ども・子育て支援等分科会(第2回)」や、同月16日(月)開催の「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会(第2回)」に弊会会長・駒崎が有識者として参加し、本制度の制度設計についてアンケートを活用しデータとエビデンスに基づく提言を行いました。

▼「子ども・子育て支援等分科会(第2回)」の様子はこちら(動画)

https://www.youtube.com/watch?v=KdjpRfJjaPE

▼「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会(第2回)」の様子はこちら(動画)

https://youtube.com/live/O_3a_HnIJGU

1)「定期利用」や「自由利用」などの利用形態について、保育事業者が選択できる仕組みにしてください

アンケート結果で定期利用の受け入れを望む声が9割あることを踏まえ、実際に運営する保育事業者が保育しやすい形態での受け入れができるよう、保育事業者が選択できる仕組みにしてほしいと提言しました。

フローレンスでは、2022年度に仙台で独自に実施した定員の空き枠を活用した一時保育や、今回のモデル事業を通して、定期性は重要だと考えています。どもが定期的に保育園に通うことで、こどもの育ちや孤独な子育てをする親への伴走(サポート)ができるほか、虐待の兆候に気づくなどセーフティーネットとしての役割を果たすこともできます。

※こども家庭庁「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方について」より

2)月の利用時間は、自治体単位で加算できる仕組みにしてください

現時点でこども家庭庁で検討されている案では、利用時間は「月10時間」が上限とされています。

こども誰でも通園制度のモデル事業は、待機児童問題の解消と少子化から、定員に余裕のある園を対象に空き枠を活用した保育の受け入れを実施しています。しかし、実態としては保育士の確保の課題や待機児童数などの地域差が著しく、全国で一斉に実施するにあたっては、「月10時間」とするのが現実的な数字と考えられています。

アンケートから、利用頻度は「週3日以上」約6割、1日あたりの利用時間については、「3時間以上」の回答が9割を超えました。週3回×3時間/1日で利用した場合、月の利用時間は36時間となり、「月10時間」を大幅に超える結果となりました。

そこで、地域によって待機児童数や受け入れ体制が異なる状況も踏まえ、「月10時間」を基準とした上で、基礎自治体単位で利用時間を加算できる仕組みを提言しました。

3)要支援・要保護家庭のこどもの預かりを促進できる仕組みも導入してください

現行の制度は、保護者の就労など保育の必要性が認められた家庭が入園できるシステムになっています。しかし保育の必要性認定がない家庭の中には、様々な家庭の事情でこどもが社会と繋がれず、危険にさらされている家庭もあります。

フローレンスでは、本制度の実施により虐待のリスクがある、あるいは経済的に厳しいなどの「高リスク家庭」が、保育園と接点をもてることも期待しています。保育のプロが継続的に関わることでこどもの育ちに寄り添い、保護者の育児不安の相談にのることもできます。また、保育園に通うことで、定期的に栄養のある給食がとれるというメリットもあります。
こども基本法に照らして、こどもが「安心安全に成長」でき、「こどもの最善の利益」が実現される制度となることを求めます。

高リスク家庭の受け入れが促進される制度の提言を行うとともに、事業者が安心して保育ができるよう体制を整えてほしいと訴えました。

自治体・民間企業に本アンケート結果を提供します。

参考資料

【報告書】こども誰でも通園制度(仮称)に関する全国アンケート調査

報告書をダウンロードする

※ご使用の際には、下記2点をお願いしております。 
・引用元として「認定NPO法人フローレンス」と出典の明記をお願いいたします。 
・弊会の取材申込フォームに使用用途を記載の上お知らせください。
 <取材申込みフォーム>https://florence.or.jp/publicform

ソーシャルアクション・政策提言は皆さんのご支援で運営しています

フローレンスは、支援現場を自分たちの手で運営しながら、そこから日々得られる親子の生の声や、事業ノウハウを社会に広げ、国や地域の制度に具体的施策を提言をすることで、日本のこどもを取り巻く環境、綱渡りを強いられているハードな子育て環境を、アップデートしていきます。

今回、おこなった全国調査、提言活動についても全て皆さんからの寄付により実現しています。いつも応援してくださる寄付者の皆さん、参加・協働してくださっている多くの皆さんに心から御礼申し上げます。

日本中のすべての親子の笑顔のために、フローレンスはこれからも皆さんと共に「新しいあたりまえ」を形にしていきます。




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